ソルデパス=パチャクティ
2003年2月10日
コロンビア・ジャーナル原文
52歳のウィルソン・アルフォンソ・ボルハ・ディアスは長いことコロンビアの労働運動の活動家として活躍し、2002年の選挙では、左派の社会政治戦線の党員としてコロンビア議会の議員に選出された。ボルハはコロンビアでもっとも勢力の大きい労働組合(フェナルトラセ)の組合員であり、組合の強力な支持を得ている。彼は、コロンビア内戦に対する対話交渉による解決を声高に主張しており、同時に、新自由主義的な経済「改革」と政治的汚職に強硬に反対している。2003年1月に行われたこのインタビューで、ボルハは、自分に対する暗殺計画、ウリベ大統領の住民投票計画、社会政治戦線、ウーゴ・チャベスとベネスエラなどについて語った。
事前に日程を調整しまた必要な書類を完全に準備したことにより、われわれは、ボルハの事務所を警備する軍事警察による封鎖を通り抜けることができた。彼の事務所は2人の人が座ると一杯になってしまうほど小さかった。テーブルの向こう側には3歳になるボルハの娘ルイサ・フェルナンダが座って、父親の書類をいじりながら行ったり来たりしていた。ウィルソンは鞄を抱えて部屋の角に座っていた。
質問:どのようにしてここまでたどり着いたのでしょうか。
回答:[元「民主連盟」(Democratic Pole)の]ルチョ・ガルソン(ルイス・エデュアルド・ガルソン)がまだ共産党に所属して戦闘的だった頃、私たちはすでに議員候補者リストを提出することを話し合っていました。そして、その考えが熟成し、社会政治戦線を結成するに至ったのです。
質問:あなたは公務員組合の委員長でしたね。
回答:そうです。フェナルトラセの。フェナルトラセはコロンビア公務員の組合すべてを集めたものです。
質問:あなたに対する暗殺の企てが始まったのは、そのときからでしょうか。
回答:2000年12月15日、私は3発の銃弾を受け、治療を受けなくてはなりませんでした。回復のために、キューバで9カ月間の治療も受けました。私にとっては長い時間でした。けれども、キューバに行っていなければ、私は脚を失っていたでしょう。そのときに、私たちはすでに戦線の結成を決めていました。議員候補者リストを提出する予定でした。ボゴタには強力な支持基盤があり、組合関係からも強力な支持を得ていました。
上院議員一人と下院議員二人が私たちに合流しました。戦線はのちに「愛国連盟」(Patriotic Pole)を結成し、議会の10パーセントを占めることとなりました。
質問:その同盟によって、あなたは意思決定に影響力を行使できるようになりましたか。
回答:議会の決定は強圧的になされます。左派にはほとんど機会はないのです。議会と通して議論し、批判し、情報を求め、閣僚と何らかの接触を保つことはできますが、そのくらいです。いくつかの法についてわずかな修正を加えることもできます。
質問:ある準軍組織の指導者は、議員の35パーセントは準軍組織を支持していると言いました。どう思われますか。
回答:「愛国連盟」(Patoriotic Pole)を除いて、準軍組織をめぐる基準を共有している議員はほとんどいないというのが実際のところです。上院議員・下院議員の多数は大規模畜牧経営者か大土地所有者です。コロンビアの後進性をもっとも典型的に代表する階級なのです。
質問:あなたに対する襲撃事件の裁判はどうなっていますか。
回答:審理は2年にわたって続いています。16名の容疑者 −襲撃を実行した人々です− のうち3名は有罪となりました。けれども、上層部つまり将軍たちから命令が来ていたか、あるいは少なくとも将軍たちは事前に暗殺準備について情報を得ていたというところのようです。実行犯のうち2人は死亡しました。一人は準軍組織のメンバーで、私の護衛により怪我をした人です。彼は、証言台に立たないよう、準軍組織によって殺されました。被告は全員が現役の軍人で、そのうち一人は少佐なのです。
質問:この訴訟におけるスペインの役割は?
回答:私たちはスペイン大使館と良好な関係にあり、ほかの国々の大使館とも良好な関係にありました。そのため、大使館は私たちに協力してくれたのです。私たちがキューバを選んだのは、同僚[元M−19ゲリラで現在上院議員のアントニオ・]ナバロの経験があったからです。彼も暗殺の標的となったのですが、キューバでは脚を治すことができる可能性があると思ったのです。そこで私たちは、[私の治療のために]キューバに行きました。一方、[スペイン首相]アスナルは言葉だけだということを知っていましたしそう感じてもいました。そして、コロンビアに対して偏見を持っているとも。
質問:あなたは長いこと議会に出席していませんね。
回答:昨2002年の7月20日以来出ていません。議会には合計166人の議員がいて、102名は上院議員です。私たちは農業改革法を提案しました。これはあらゆる農業組織とともに検討したもので、3月に議題にあがる予定です。私たちは政府の「改革」に反対するイニシアチブに賛成しており、ウリベ大統領の住民投票に反対しています。
質問:ボリバル・プラサの真ん中に自分たちの代表席を置こうという試みに対する反応はどうですか。
回答:この行動は時宜を得たものでした。というのも、古くからいる議員がもっとも良いオフィスを占めることで権力を濫用しているからです。これはまた、私たちが議会で代表しているのはまったく異なったものであることを示すためでもありました。副大統領補佐が議長をしていますが、大統領令が議会で大きな意味を持ちます。そして多様性が尊重されるためには多くの努力を要するのです。
質問:コロンビア政治における現在の中心的話題の一つはウリベ大統領が提案した住民投票[2003年5月に予定されている]です。これについてはどのような立場ですか。
注:昨2002年末、住民投票を行うという政府の提案が議会で承認された。コロンビア議会の透明性を高めるといった項目を一方で打ち出してコロンビアの人々の賛成を引き出しながら、公共支出を4年間据え置くという世銀/IMFの強制に従う部分や、これに伴い消費税対象項目を広げるといった、貧困層や労働者に大きな打撃となる政策が項目に含まれている。また、個人の麻薬消費を罰する、議会に対するリコールなどの項目も含まれている。
回答:この住民投票は、アレヴァロ・ウリベ・ベレス大統領に対する国民投票となってしまいました。私たちは、様々な政治的立場の人が、積極的かつ政治的に棄権すると考えています。つまり、投票が最低基準である650万人に到達せず、住民投票は無効になるだろうということです。
大統領が住民投票をかくも早く実施したい理由を理解するために、この住民投票の偽りの性格を見抜く必要があります。ウリベ大統領は、一日一日経つごとに、自分が行っている経済政策による負の影響を人々がますますはっきりと感じ取ることを知っているのです。失業率は上昇し、購買力は下降し、年金や給料、社会的諸権利は崩壊し、それにより、労働者にとっては極めて過酷な現実が訪れています。
この住民投票には沢山のトリックが仕込まれています。市長や州知事の任期を延長することにより、市長や州知事を巻き込もうとしたり、大規模麻薬商人は処罰せずにちょっとした麻薬利用を処罰したり、19項目すべてに回答を求めるのではなく全部を一度に投票させようとしたり(これは混乱と誤りを引き起こします)です。
住民投票は馬鹿げたものです。そこに挙げられたほとんどすべての事項は、すでに法的な資格が定まっているものです。そして、実際に決定しようとしているのは、給与引き下げや年金削減などの、労働者を苦しめる財政政策なのです。この提案では、議会における秘密投票も撤廃しようとしています。つまり、労働者にとって良い提案は、何一つとして無いのです。住民投票は、ウリベの人気を考慮して決められています。ですから、もしウリベがこれに失敗すれば、彼の恐ろしい政策すべてが崩壊するでしょう。
質問:愛国連盟(Patriotic Pole)は今週ベネスエラにいました。ベネスエラでは何をしたのですか。
回答:私たちはウーゴ・チャベス大統領に連帯を表明するためにベネスエラに行きました。4名の議員が200名以上の人々とともに、団結行進に参加しました。1月17日、チャベス大統領が年次報告を読み上げたときには、ベネスエラ国会に出席しました。多くの時間を使って色々な州を見て回りました。そこでわかったのは、実際にはストライキなどというものは無いと言うことです。基本的にはそれは嘘の塊なのです。また、大ビジネスとベネスエラ労働総同盟(CTV)を牛耳る盗賊たちの信じがたい共謀を目にしました。私たちはベネスエラ訪問にとても満足しています。チャベス自身が8月に国民投票を発案するまで[それは早期の選挙につながる可能性があります]、ボリバル派革命は先に進むでしょう。
CTVに関する法律を変えることは誤りだと思います。基盤を変えなくてはならないのです。そして、現在、統一本部が創立されつつあります。
質問:アメリカ大陸の地図を見ると、進歩的な指導者が望まれているようです。ベネスエラで、エクアドルで、ブラジルで・・・
回答:その通りです。けれども、コロンビアのメディアは、とりわけ、[エクアドル大統領]ルシオ・グティエレスとチャベスに対して敵意を持っています。コロンビアにはとても古くさいブルジョアがいます。ポパヤンに、サンタ・マリアに、カルタヘナに。もっとも後進的なスペイン人の末裔たちが政治とメディアに影響を与えており、こうした人々は、インディオやメスティソが選挙で勝つのに我慢がならないのです。これは、プラン・コロンビアの失敗を示しています。というのも、プラン・コロンビアは、周辺諸国にわたる計画の中心にコロンビアを置こうとしたものだからです。けれども、ブラジルとベネスエラとエクアドルは、プラン・コロンビアが戦争を主眼とした構成になっていることに反対しています。大量の金が単に浪費されるだけだからです。そしてプランは不測の結果を引き起こしました。人々は米州自由貿易地域(FTAA)とコロンビア内戦に反対する立場を明確にしたのです。ペルーでも問題が起きていますし、ボリビアでの人々の抵抗は極めて大きいものです。
ベネスエラで起きている問題は、米国が造りだしたものだと思います。イラクをめぐる状況が、米国が造りだした石油に関する戦争であるのと同様です。
けれども、これはコロンビアにとっては好都合です。というのも、ブラジル、ベネスエラ、エクアドルの少なくとも3国は、ウリベの戦争計画を支持しないでしょうから。そして、ウリベの戦争計画というのは、実際には米国の戦争計画なのですから。
ソルデパス・パチャクティは、人権や戦争防止、環境保護などの活動をしているNGO。ウェブページは/http://www.nodo50.org/pachakuti/。
本インタビューは、もともとスペイン語ででなされたものを、サイモン・ヘルウィグ・ラーセンが英語に翻訳したもの。