大地を煙で満たせ

ロン・ジェイコブス
2002年9月23日
コロンビア・ジャーナル原文


2002年8月7日、コロンビアで新たな大統領が就任した。2001年に権力の座についた米国大統領と同様、コロンビアの新大統領、アレヴァロ・ウリベは、社会問題に対して軍事的解決を支持する右翼であり、さらに、ブッシュ米大統領と同様、有権者の30%以下の得票率で大統領に選出された人物である。ブッシュとのもう一つの類似点は、ウリベも民主主義とはかけ離れているという点である。実際、ウリベは、現在の議会二院制を廃止し、一院制にしようという計画を発表した。また、現在は議会の承認を要する政府の政策を、今後大統領令だけでよいようにしようとしている。ウリベは、これまでのやり方は政府を弱体化しているとして、自分の計画を正当化しようとしている。けれども、多くの人々が、背景にある意図は、軍と警察とにより多くの資金を自由に割り当てることにあると見ている。

ウリベは既に米国に対し、コロンビアへの軍事援助増額を要請した。ワシントンは2000年以来、そのほとんどが軍事的なものである20億ドル以上の援助をコロンビアに与えており、これにより、コロンビアは米国軍事援助第三の受け手となった。そして、この間、国家による弾圧と準軍組織の暴力は増大した。

コロンビアでの戦争は長年にわたって続けられている。この戦争は、本質的に、富裕層と富裕層が雇い入れたものたちの貧困層に対する戦争であり、その間に、相対的に多数の中流階級が置かれている。中流階級の一部は、脆弱な経済社会的状況における自分たちの既に貧しい地位を維持することができると考え、軍と富裕層とを支持している。中流階級の別の一部は、労働組合や教会団体、その他の社会活動組織を支持している。これは、すべての人が経済的安寧を得ることにより、コロンビアがよりよくより安定した場所になると考えるからである。

中程度の収入を得ているコロンビア人たちは、また、何かが起こったときに、自分たちは、裕福になるよりは貧しくなる可能性が大きいことを知っている。実際、(世銀とIMFの貸付条件を通した)米国企業の圧力により、電話会社や電力会社といった公共部門を私営化させられているため、中流階級に属する多くの人々が、自分たちの経済状況悪化を目にしている。公共部門のサービスが私営化されると、サービスはより効果になり、多くの場合、新たな私営企業は、その所有者と資金提供者に速やかな利益を示すため、何千人もの労働者が仕事を失うことになる。この新たな私企業所有者・資金元には、しばしば、シティグループやチェース・マンハッタンのような多国籍銀行が名を連ねている。

失業を避け、それに伴う貧困と絶望的な下降を避けるために、こうした企業の労働者たちは組織化し、コロンビアの諸都市で抗議行動を行ってきた。こうした抗議行動に対する政府の対応は、弾圧を強化するというものであった。抗議の指導者たちは、新大統領の選挙キャンペーンに資金を提供したと同じものたちから資金を得ている準軍組織により、誘拐され、射殺される。こうした準軍組織は、また、麻薬商売に深く関与し、コロンビア軍とも密接な関係を維持している。過去30年間の間に、コロンビアで起きた政治的殺害の70パーセント近くを、この右派死の部隊が実行してきた。

コロンビアの人々と米国議会とを騙すシニカルなプロパガンダとしか思えない意図で、準軍組織の指導者カルロス・カスタニョは、最近、全国的な準軍組織の統合組織である、コロンビア自衛軍連合(AUC)を解散すると述べた。理由は、地方の準軍組織の人権侵害や麻薬取引をカスタニョが統制できないというものである。

その間、殺害や誘拐を免れた市民活動の指導者たちや組織者たちは、平和的抗議行動と直接行動には効果がないと結論し、左派ゲリラ・グループに参加してきた。けれども、ゲリラもまた、麻薬取引への関与増大から来る問題を抱えている。こうした問題は、麻薬商売が犯罪と見なされていることからきている。似通った歴史的事例として、米国のブラック・パンサー党の運命が挙げられる。ブラック・パンサーは、指導者の一部がコカインを悪用し始め、地方部門が、政治にあまり関心がないけれどもプレステージとお金を求めてパンサー党に参加する、路上犯罪者たちをリクルートし始めてから、問題を抱えることとなったのである。

米国は、コロンビアに対する20億ドル近い軍事援助を行うにあたり、ゲリラが麻薬取引に関与しているということを口実に使っている。麻薬に対する戦争が、そこから利益を得る人々にとって以外は、これまで繰り返し繰り返し失敗しているにもかかわらず、米国に住む我々は、麻薬生産者に対する武力行動が、米国での麻薬消費を終わらせるという仮定で行動している。そんなことはあり得ないのに。

いずれにせよ、米国はこの戦いに深く関与している。それは何故か?米国政府がコロンビアの人々の権利に関心を持っているから?コロンビアの64%の人々が直面している貧困に憂慮しているから?コロンビアの人々が毎日身に受ける暴力に反対しているから?まったくそうではない。米国がコロンビア及び周辺地域に関与する第一の目的は、これまでも、まったく、民主主義と正義を守るといったことではなかった。実際には、非常にしばしば、米国政府は、直接あるいは間接に、コロンビア最大の暴力集団/人物を支援してきたのである。そして、今もそれは続いている。ウリベ大統領の政府を支援するという名目で。

米国がコロンビア内戦に介入する理由は一つである。ブッシュやクリントンのような政治家たちを政権の座に付けている人々や企業の利益を守るためである。ワシントンのこうした人々は、米国の石油企業がコロンビアにおける利権を守り拡張する手助けをしている。さらに、ワシントンの金融資本は、安価な労働力、安価な資源、そして、米国製品を売りつける新たな市場へのより大規模なアクセスを求めている。プラン・コロンビア−過去2年間この枠組みのもとで、米国政府は、13億ドルにわたる、そのほとんどが武器や弾薬からなる援助をコロンビアに提供してきたのだが−は、米州自由貿易地域(FTAA)自由貿易合意の拡大を促す目的をもっている。

新たな資金提供のサイクルが、対テロ戦争という口実のもとで進められている。この一環として、ロサンゼルスに本社を多くオクシデンタル石油が所有する、コロンビアのカニョ・リモン石油パイプラインを守るという使命だけに特化した、コロンビア特殊部隊の創生のために、9800万ドルの援助が提供される。米国政府が、この試みが成功したと考えるならば、コロンビアの他のパイプラインについても、同様のプログラムを実行することになるだろう。

これは民主主義の擁護なのか?多くの人が、いまだに、国に仕えることは名誉なことだと考えている。けれども、米国企業の石油パイプラインを防衛するために外国の軍隊に資金を提供することは別のことである。9800万ドルあれば、米国でもコロンビアでも、たくさんの学校を建て、たくさんの仕事を創生することができる。米国が真にコロンビアの人々のことを考えているというなら、戦闘用ヘリやパイプラインの防衛ではなく、そうしたプロジェクトに資金を費やしているはずである。


ロン・ジャイコブスは、米国バーモント州バーリントン在住、ベトナム以来反戦活動に従事している。著書に、The Way the Wind Blew: A History of the Weather Underground (Verso 1997)がある。
  益岡賢 2002年9月24日

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