悪化するコロンビアの人権状況

2002年9月16日
ギャリー・M・リーチ
コロンビア・ジャーナル原文

2002年9月9日月曜日、米国国務省は、コロンビア政府が、米国議会が求めた人権状況に関する条件を満足させていると認定し、コロンビアに対する4160万ドルの軍事支援を行うための仕上げとした。議会の条件には、コロンビア軍が、重大な人権侵害に関与した士官を停職にすること、文民検察当局と協力すること、右派準軍組織との関係を断絶することが含まれる。人権団体は、コロンビア軍はこれら三つの要件のいずれも満足していないとして、国務省の認定を批判している。国務省が認定を発した2週間少し前の8月22日、私ギャリー・リーチは、コロンビア法律家協会という人権団体の弁護士であるカタリーナ・ディアスにインタビューし、和平交渉の崩壊以降のコロンビア人権状況、米国が対麻薬から対ゲリラへと関与を拡大している切迫した状況、そして、アレヴァロ・ウリベ大統領の就任について話を聞いた。


Q:コロンビア法律家協会(CCJ)でのあなたの役割はどのようなものですか?

A:公共政策を巡るディベート部門の法律家で、憲法裁判所、議会、大統領との関係で働いています。平和関係の領域の仕事をしています。それだけが専門というわけではないのですが、中心となるものです。人権と国家の義務、ゲリラや準軍組織の義務、武装対立における戦闘に従事するすべてのものの義務の分野で仕事をしています。

Q:CCJではどのくらい働いていますか?

A:8か月になります。その前は、憲法裁判所で仕事をしており、そのさらに前には、別の人権団体である社会基金というところで働いていました。

Q:どんな武装グループがどのような人権侵害に関与しているのでしょうか?

A:私たちは、コロンビアにおける人権侵害のすべての側面をカバーしたブックレットを発売しています。そこには、人権侵害の統計も掲載されています。犠牲者の死を伴う人権侵害の8割以上が準軍組織により犯されていることは明らかです。準軍組織は、多くの場合、武器と情報、通信の媒介、路上、ヘリ、空港を使った移動などに関して、直接的に国の支援を受けています。政府機関は、準軍組織を支持したり黙認しています。準軍組織が、軍の検問所から500メートルから1キロしか離れていない場所で活動し、軍がそれを知りながら何もしていないということは、このことを示すはっきりした例です。これが政府の政策なのか軍司令部の政策なのかはわかりません。けれども、多くの部隊において、下級兵士と準軍組織の共謀があるだけでなく、上級将校レベルでも関係があります。多くの地域にわたって、多くの異なる部隊の士官が準軍組織と直接・間接に協力しているのは明らかです。

身柄を拘束されない権利に関して言うと、誘拐を最も多く行っているのはゲリラです。けれども、準軍組織による誘拐も増大しています。私は、誘拐事件を専門に扱うパイス・リブレ(自由な国)といった組織から、準軍組織が、政府職員やゲリラ協力者、ジャーナリストや判事を誘拐するといった、政治目的の誘拐だけでなく、お金目当てで誘拐を行っていると聞いています。これが現在の傾向です。殺害と誘拐とが現在の人権問題の二つの主なものです。けれども、経済的、社会的、文化的権利についての問題もあります。今正確な数字を持っていませんが、絶対貧困層の比率は50%近くなっています。昨日、私は、世界銀行の代表が、コロンビアは、持続可能な開発との関わりで、社会経済的権利を保障するという領域で、過去10年間に後退していると話しているのを聞きました。現在ほどコロンビアに貧しい人々が多かったことはないということを知り、驚きショックを受けました。

Q:ウリベ大統領は、100万人以上の一般市民を通報者として利用する提案をしましたが、これは人権状況にどのような影響を与えるでしょうか?

A:色々な危険があると思います。一つは、一般市民が内戦に巻き込まれることです。現在、政府は、市民は銃は携行せず携帯ラジオを身につけるだけだと言っています[注:このインタビューが行われたまさにその日に、防衛大臣マルタ・ルシア・ラミレスは、100万人の通報者に加えて、15000人の農民を武装する計画があると発表した]。これらの人々は軍諜報部で、どのように情報を扱うかの訓練を受ける予定となっています。これにより通報者となる市民の命が危険にさらされます。というのも、ゲリラと準軍組織が通報者を軍事標的とするからです。このような方法が、治安を守るための良い代替案であるとは思いません。市民を巻き込むことで問題は解決されません。疑わしい人を告発するのは人々の権利であり、人権を守るための義務があることを否定しません。けれども、政府が通報を強制すべきではありません。政府が行いたがっている方法が正しい政策だとは思いません。

Q:コロンビア政府が最近宣言したコンモシオン・インテリオル(不安定事態宣言)が人権に及ぼす影響はどうでしょう?

A:コンモシオン・インテリオルはとても複雑な問題です。というのは、これは、国家安全保障法がそうしたような人権を制限する永続的手段のかわりに発せられたものだからです。数ヶ月前に、国家安全保障に関する法律がありましたが、それは憲法裁判所により、憲法違反であると判断されました。この法律には、軍が文民当局を越える権限を掌握する作戦シアターを、大統領が宣言できるという条項が含まれていました。軍が、警察、検察、裁判官などなどとして振る舞うことになるのです。憲法裁判所はこの法律を認めませんでした。この法律が国家権力という概念に大きく依拠し、秘密裡に大きすぎる力を大統領に与えるものだったからです。大統領とその臨時政府のみが決定を下せるというのは、民主主義の原則に反します。

コンモシオン・インテリオルは一時的なものですが、最大1年間続くことがあり得ます。この非常事態宣言は、人権の国際基準を受け入れる義務を負う憲法裁判所により制限されることが可能です。コンモシオン・インテリオルのもとでは、場合によって人権は制限されますが、人権が保留されることはありません。人権を制限する必要があるという点については、はっきりと正当な説明がなされるべきです。これまでのところ、政府は、コンモシオン・インテリオルを宣言しただけです。次のステップは、政府がどのような手段をとるかということにあります。現在のところ、政府は、軍を強化するための一回性の税金を課す決定をしました。また、通信を傍受することについても議論しています。これについての制令は発せられていませんが、それはこれから行われそうです。

私たちも状況は深刻だと考えています。FARCが市長や地方政府職員を攻撃しているのです。このようなことは、これまでありませんでした。ボゴタでさえ、地方部の市長たちは脅迫を受けています。憲法裁判所は、民主主義の根元が脅かされているとして、コンモシオン・インテリオルを認めるかも知れません。他にも、危機が非常に深刻で、通常の手段では解決できないと考えるならば、コンモシオン・インテリオルを認めるかも知れないのです。けれども、私たちは、こうした人権に悪影響を与えるような特別な手段が危機を解決することについては、大きな疑問を持っています。ですから、コンモシオン・インテリオルが憲法違反であるという議論は正当なものとすることができます。けれども、裁判所は、ゲームに従わないと消されてしまうため、これを合憲と判断するだろうと思っています。

コロンビア民主化のためには構造的手段が必要です。ボゴタでそれを行うのはわかりやすいと思います。透明で汚職のない公共投資、レクリエーションと仕事の新たな空間を創生することです。こうしたことこそが、問題を解決する方法だと思います。そして、むろん、戦争は交渉で解決されなくてはなりません。平和高等弁務官ルイス・カルロス・レストレポすら、これが唯一の方法だと考えています。けれども、政府は軍を使って武装集団を封じ込め、そして停戦がなされて対立が終了したときにのみ、つまり、ゲリラが武器を放棄したときにのみ、交渉をしようと考えています。けれどもゲリラ側はこれは馬鹿げていると考えています。

Q:和平交渉が崩壊してから人権状況の悪化はどんな状態でしょうか?

A:ゲリラの攻撃が増加し、ゲリラは市長や地方政府職員を狙ったキャンペーンを開始しました。誘拐も少し増加したように思います。準軍組織は大規模な残忍な虐殺と野蛮行為を停止し、あまりメディアの注目を浴びない選択的暗殺に切り替えています。和平交渉が終わってから、生命と自由の権利は悪化していると思います。

Q: Q:米国政府は軍事援助を、対麻薬から対ゲリラ作戦にまで拡大したがっています。このエスカレーションが、コロンビアの人権に及ぼす影響はどうでしょうか。

A:現在米国が戦争に関与しているというのは事実です。けれども、コロンビアはアフガニスタンではありません。私はまた、米国機関から、コロンビアには100名以上の米国兵士がいて、対麻薬部隊を訓練し支援していると聞かされています。ですから、コロンビアにおける米軍の存在は増大しており、人権侵害は止んでいません。すべての武装当事者の戦闘能力が増大することと、人権侵害が増大することとの間には因果関係があります。コロンビア軍が人権侵害に直接関与する事態は減っています。拘束と拷問は、以前ほど広くは見られません。軍や警察が関与している事件もありますが、それは広まってはおらず、大きく目に付くものでもありません。汚い戦争の活動は、準軍組織に任されたのです。前にも言いましたが、軍と準軍組織の協力関係を示す事例はたくさんあります。

軍事援助増大により軍の力が増し、それにより人権侵害が悪化すると思います。軍の意図は人権侵害を減少させることにはありません。これは、米国が爆撃したアフガニスタンでの結婚式の例を見てもわかります。コロンビアには、結婚式や闘牛、洗礼などで花火を使ってお祝いをします。コロンビアにおける最も重要な課題は、問題を戦争で解決するか政治的交渉で解決するかです。

Q:CCJは、米国が新たに訓練した対麻薬旅団とプツマヨの準軍組織との間に協力関係があることについて何か証拠を持っていますか?

A:はい。持っています。プツマヨで働いている人からの情報を得ており、彼女に、報告書を米国大使館に送るよう言いました。この対麻薬旅団が、準軍組織を黙認し受け入れていることは非常に明らかです。けれども、正確にプツマヨのどこにおいてかはわかっていません。


  益岡賢 2002年9月19日

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