戦争が迫っている

オリバー・ヒューストン
2002年8月26日
コロンビア・ジャーナル原文


コロンビアで戦争が迫っている。過去50年間内戦状態にあった国に対し、こうした表現を使うことは奇妙かもしれない。けれども、世界の目が、イラクとイスラエルとインドに注がれている間に、タカ派の巣窟であるワシントンから石を投げれば届くほどの距離にある、南米コロンビアは爆発寸前にあり、すぐにも、アマゾン地域全体が「ベトナム化」するに至るかも知れない。クリントン政権が開始したプラン・コロンビアのもとで、米国は、コロンビアに対し、13億ドルの軍事支援をコロンビアに約束した。これにより、コロンビアは西半球最大の米国援助の受け手となったばかりか、世界的にも、イスラエルとエジプトに次ぐ第三位の受け手となった。ジョージ・W・ブッシュは、援助総額を20億ドルに増大させたがっており、援助の用途に関するあらゆる制約(制約があるということ自体)を撤廃することに成功した。

7月に英国首相トニー・ブレアを訪問したコロンビアの新大統領アルヴァロ・ウリベ・ベレスは、「最終解決」の切符をもって進んでいる。コロンビアの40%までを支配する農民の反抗を、軍の数を二倍にし、100万人の「市民」民兵を創生することにより打ち負かそうとしているのである。国連の人権専門家でアムネスティ・インターナショナルの法律顧問であるフェデリコ・アンドレウ・グスマンによると、ウリベが大統領に選出される以前から、国家防衛最高評議会の新設は「国家内でのクーデターを表していた。それは、コロンビアを、市民民主主義という形式の偽装のもとで、実質的軍事独裁体制に移行させることを、合法化するものであった。」

コロンビア軍と手を携えて活動しており、ヒューマンライツ・ウォッチが78%の人権侵害を行っていると述べ、(米国による「麻薬戦争」プロパガンダが左派ゲリラを「麻薬ゲリラ」と呼んでいるのと逆に)国連がコロンビア最大の麻薬商人と述べる、残忍な右派準軍組織統合組織AUC(コロンビア自衛軍連合)とウリベとの関係は、詳しく報告されている。

しかしながら、ウリベは今や存在しないメデジン・カルテルとの関係を隠している。ウリベは、有名な麻薬王パブロ・エスコバルとつながっていた。一般航空局の局長として、ウリベはメデジン・カルテルのパイロットにライセンスを与えた。上院議員として、ウリベは、麻薬商人の米国への身柄引き渡しに強硬に反対した。さらに、米国麻薬取締局(DEA)は、この何年かの間、ウリベの友人でキャンペーン担当の、ペドロ・ビジャに目を付けてきた。ビジャの会社GMP化学が、コカイン製造に使われる化学薬品を販売しているのである。

新大統領ウリベはまた、不人気な引き締め政策継続を確約している。公共支出を削減し、公共サービスを私営化し、1999年12月にIMFから借りた27億ドルのローン返済に宛てようというのである。コロンビア有権者2400万人のうち5月の大統領選挙で投票したのは46%に過ぎず、メディアの重鎮筋を仲間に引き入れたウリベは、有権者の4分の1に満たない、たった580万票で当選した。

中道左派の多くは「民主的参加」に懐疑的なままである。コロンビア内戦は、1950年の大統領選挙で、人気のあった自由党候補が暗殺されたことに端を発しており、また、1985年に、コロンビア革命軍(FARC)をはじめとするゲリラが武器を置き、愛国同盟を結成して選挙に参加したときには、大統領候補とその代理候補を含む、4500名の候補者とキャンペーン活動家が殺害されたのである(背景については、暴力の50年を参照)。

そのため、改革の道はほとんど残されていないようだったので、ゲリラへのリクルートは速度を上げた。たとえば、コロンビアの右派死の部隊は、毎年世界中で殺害される労働組合活動家の4人に3人を殺害しているのである。EUは2002年3月、この問題を国連人権委員会に提出し、そして、また、コロンビアの労働者は、米国の労働組合及び国際労働組合と協力して、 コカコーラと、大鉱山会社ドラムモンドを、これらの会社のコロンビア工場で、準軍組織に脅迫、拷問、殺害作戦を進めさせていることで、米国の法廷に提訴したそれでも殺害は続き、2002年に入ってからだけで、すでに100名以上の労働組合員が殺害されている。それだけではなく、数多くの人権活動家や土地改革提唱者、学者やジャーナリストも殺害されている。

米軍デルタ部隊の退役軍曹で、ジャングル作戦指導教官でありウェスト・ポイント軍科学教師であり、パナマやグレナダ、ハイチ、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ベネスエラ、コロンビア、ペルーで活動したスタン・ゴフは、「ゲリラが明日にでも膝をついたら、ゲリラの保護を一部受けている農民の命運は恐ろしいものとなろう。地方の人々が直面しているのは、暴力と平和のあいだの選択ではなく、自衛するか殲滅されるかの選択なのである」と述べている。

FARCは、「我々の声はコロンビアの人々の声であり、我々は、失業、教育や保健、住居、農民のための土地、政治改革、民主主義、国家主権の欠如に対する解決を求めて闘い、そして、国家再建と国民和解の政府を求めて闘っている」と言う。

2001年2月、EU議会はプラン・コロンビアに反対する決議を採択し、6月には、英国の王立科学産業(ICI)が、プラン・コロンビアがコカ撲滅と称して行っている薬剤散布が「焦土作戦」に他ならないことに動揺して、支援を取りやめた。これは、化学兵器を使って食料農産物を破壊し、水を汚染し、動物と人間に害悪を与え、コロンビアの国内避難民危機を悪化させる政策である。

ジェシ・ヘルムス上院議員をはじめとするとどまるところを知らないタカ派議員は、ブッシュ政権の過激派メンバーと、今年ジェブ・ブッシュが再選を狙っているフロリダ州の強力なキューバ・ロビーの支援を得て、新たな「援助」パッケージを強力に推進している。

西半球問題委員会委員長で元国連ラテン・アメリカ経済委員会委員だったラリー・バーンズは、「米国国務省のラテン・アメリカ担当者たちは、最も極端で勝手なチームである」と述べる。その中心人物は、悪名高きオットー・ライヒで、この人物は、ラテン・アメリカに対する秘密介入の長い記録を持ち、ブッシュが、上院外交関係委員会の助言に反して1月に国務省に任命した人物である。そしてペンタゴンには、ロゲリオ・パルド=マウレルがいる。この人物は、民主的に選ばれたニカラグアのサンディニスタ政権に対し、米国がコントラのテロ戦争を支援していたときに、コントラ代表の補佐官だった人物である。

ギャリー・リーチは、新しい著書『平和の殺害』(Killing Peace)の中で、「過去50年間に」、米国は、「グアテマラとチリの民主的に選ばれた政権を転覆し、主権国家であるドミニカ共和国、グレナダそしてパナマを侵略し、キューバに対する失敗に終わった侵略を組織し資金を提供し、エルサルバドルとグアテマラ、アルゼンチンで、右翼死の部隊と同盟関係にある残忍な軍を支援し、ニカラグアで10年近くにわたる不法戦争を実行してきた」と述べている。ライヒとその仲間たちがそれを継続していることに驚いてはならない。

4月に、米国国務省副長官リチャード・アーミテージは、米国下院予算委員会外交活動小委員会で、アルカイ−ダとヒズボラーが、エクアドルとコロンビア、ペールの国境地帯で活動していると主張した。この地域は、大規模な石油埋蔵が最近発見された地域であり、また、ゲリラが統制している地域でもある。エクアドル政府は、この主張を「ナンセンス」と批判した。エクアドルは、すでに、エクアドル太平洋岸のマンタ航空基地(1999年に手渡された)を、プラン・コロンビア作戦に使わないという合意を米国が反故にしたことで怒りを抱いていた。

アーミテージは、2002年8月末に中国を訪問し、中国西部の分離独立運動を、「テロ組織」と認定した人物です。中国西部も大規模な石油資源があったはず。

ブッシュ政権はまた、ロサンジェルスを拠点とするオクシデンタル石油が所有する、コロンビアの石油パイプラインを保護するために、9800万ドルを要請している。テキサス選出の共和党議員で下院国際関係委員会委員でもあるロン・ポールは、「コロンビアでの戦争を、国際的な対テロ戦争と関連していると偽ることは、想像力を限界以上に拡張することである。それは賢明でないし、危険でもある。我々の国防とも治安ともまったく関係がないのである。コロンビアの戦争は、石油に関するものであり、我々はそれを知っている。

「対テロ戦争」と称したアフガニスタン爆撃と雇われ政府の設立も石油に関係していましたが。。。

世界第四位の石油輸出国であるベネスエラは、石油輸出禁止に反した1973年に、サウジ・アラビアを抜いて、米国に対する最大の石油輸出国となった。2002年4月、左派のベネスエラ大統領ウゴ・チャベスは、ブッシュに対し、ベネスエラはイラクとリビアが提案し、OPEC事務総長アリ・ロドリゲスによって告げられホワイトハウスを混乱させた石油ボイコットに参加しないとブッシュに通告して、米国支援のクーデターを避けようとした。けれども、チャベスに反対する派は、キューバに対する石油輸出を停止し、エクソンモービルをはじめとする海外石油企業に対するロイヤリティを二倍にする計画を取りやめると述べていたので、結局クーデターは実行に移されることになった。

米国のラムゼー・クラーク元司法長官は、新コロンビア通信社(ANNCOL)に対し、コロンビアへの米国の関与は「米国の歴史上、西半球における最大の介入である。この介入は、コロンビアだけでなく、エクアドルとペルー、ベネスエラも巻き込む。これらの国は政治的暴動や騒乱、反乱が広がることを恐れている。米国の政策に反対する政治的信念が拡大することを恐れている」と述べた。しかしながら、米国政府が軍事介入をエスカレートさせることほど効率的に、米国政策への反対を加速する政策はないであろう。

アンデスとアマゾン地域に必要なのは、平和と繁栄であり、米国による石油獲得のための戦争ではないのである。


オリバー・ヒューストンは、ロンドンのコロンビア平和協会で活動している。


  益岡賢 2002年9月2日

一つ上へ] [コロンビア・ページ] [トップ・ページ