先週、米国議会は289億ドルからなる対テロ予算案を可決した。それには、3500万ドルのコロンビアに対する資金も含まれている。この援助は、米国国務省の外国テロリスト組織リストに記載されているコロンビアの3つの武装組織すべてと闘うためのものであるはずだが、米国政府筋は、はっきりと、FARC(コロンビア革命軍)を、「西半球に拠点を置く最も危険な国際テロリスト組織」と名指している。法案が成立すれば、対テロ法によって、現在米国がコロンビアに対して対麻薬プログラムの一環として与えている麻薬援助を制限する条件も撤廃され、それによって、プラン・コロンビアによる13億ドルの支援とアンデス地域イニシアチブの6億2500万ドルの支援の70%以上を占める軍事援助を対ゲリラ作戦に使うことができるようになる。さらに、米国政府は最近、ゲリラ指導者の首に500万ドルの賞金をかけ、また、指導者たちの名前と写真を、食料包装やマッチ箱に印刷する手だてを実行しようと意図している。また、コロンビアの左派ゲリラに対して米国率いる多国籍軍が軍事介入する可能性があるという報道も表面化した。
2000年、クリントン政権が13億ドル相当のプラン・コロンビアに関する議会公聴会で、米国政府筋は、繰り返し、この大規模な援助パッケージは、麻薬戦争を越えてコロンビアに米国が軍事介入することを意味するものではないと主張したが、批判者が警告したこの使命のすり替えが今まさに起きたのである。現実には、コロンビアに対する対テロ支援は、新たな対テロ法による3500万ドルをはるかに越えている。今やコロンビアの不法武装グループに対して利用できるようになったプラン・コロンビアの13億ドルと6億2500万ドルのアンデス地域イニシアチブを勘定に入れると、コロンビアに対する対テロ支援の総額は、3年間で、20億ドルを越えることになる。それに加えて、2003会計年度の米国連邦予算には、コロンビア軍エリート部隊一大隊に対する訓練と武装のために用いられる9800万ドルの援助予算が含まれている。この大隊の主要な使命は、ゲリラにより繰り返し爆破されてきた、ロサンゼルスに本社を置くオクシデンタル石油の490マイルに及ぶカニョ・リモン石油パイプラインを守ることになる。
援助は、米国国務省の外国テロリスト組織にリストされている3つの不法武装グループ−FARC、規模がより小さい民族解放軍(ELN)、そして、コロンビア自衛軍連合(AUC)と呼ばれる右派準軍組織−すべてに対して用いられるという名目であるが、米国政府筋のレトリックは、コロンビアにおける米国政府の主要な敵として、明らかにFARCに焦点をあてている。
20億ドルからなる対テロ支援のうち70%近くは、ワシントン自身がテロリスト組織と見なしているAUCと緊密な関係を持つコロンビア軍に提供される。(ちなみに、各地の準軍組織からなるこの連合体の指導者たちは、AUCを解散し、新しい全国的な準軍組織を作ることを検討していると最近発表した)。この右派準軍組織部隊は1万人の戦闘員を擁し、コロンビアにおける人権侵害の75%を行っている。これには、コロンビアにおける虐殺の大多数が含まれる。コロンビア軍と準軍組織とのこの緊密な関係が、コロンビアにおける米国の政治経済的利益と密接に結びついた、コロンビアの腐敗した社会・政治・経済体制を存命させる助けとなっているのである。
AUCが基本的に親米のスタンスをとっているのとは対照的に、FARCは、米国が支配する経済グローバル化プロセスを批判し、また、米国企業が用いる石油パイプラインを爆破することにより、とりわけ米国の経済利益を標的としている。FARCが米国政府のテロリスト標的リストの中で主要な標的とされるのは、このためである。
新たな対テロ支援における3500万ドルは、すべて、FARCとELNに対して、あるいは、これらのゲリラが標的とする社会セクタを守るために用いられる。援助のうち2500万ドルは、左派ゲリラが自分たちの軍事行動資金を得るために利用する誘拐の防止に使われる。4百万ドルは、ゲリラ襲撃に耐えうるよう警察署を強化するために、残りの6百万ドルは、オクシデンタル石油のカニョ・リモン・パイプラインを直接防衛するために使われる。
対テロ支援は、準軍組織に対して、あるいは、その犠牲者を守るためには使われない。色々な人権団体によると、次のような残虐行為の大多数を実行しているのが準軍組織AUCである。200万人以上のコロンビア人の、家や故郷からの強制追放、過去数年間で何千人もの農民の命を奪った虐殺(2000年だけで400もの虐殺が行われた)、過去15年間にわたる3800人以上の労働組合指導者の暗殺(誰一人として容疑者は有罪となっていない)。これらの人権侵害における主要な実行者は準軍組織であるが、これらの多くにおいて、米国が後押しするコロンビア軍が協力したり、場合によっては直接関与している。
米国の資金を、準軍組織の指導者を標的とする特別治安部隊創生に使う計画もあるが、アムネスティ・インターナショナルによると、これは、「皮肉な窓飾り」以外の何物でもない。アムネスティによると、コロンビア軍は既に、どこに準軍組織がいるか知っている。「多くの場合、治安部隊は準軍組織の基地の場所を知っており、しばしばそれは、軍の基地のすぐ隣にある」のであり、また、「軍の部隊は、準軍組織と協力して作戦を実行し続けている」のである。
右翼テロリストの犠牲となっている何万人もの貧しいコロンビア人を守るかわりに、ブッシュ政権は、誘拐の犠牲となりそうな人々(ほとんどが裕福で現状の政治経済体制を支持しているためゲリラの標的となる上中流の市民)、ゲリラの標的となる地方都市の警察官(多くの国とは異なり、コロンビア国家警察は軍事的で、防衛省の管轄下にある)、そして、カニョ・リモン石油パイプライン防衛による米国企業の危険な海外投資の防衛に焦点をあてている。
米国政府のコロンビアに対する関与が政治的に偏向していることを示すさらなる証拠として、RCNとCaracolというコロンビアの2つのTVネットワークは、先週、米国が、世界規模の対テロ戦略の一環として、FARCとELN指導者たちの首に500万ドルの賞金をかけたことを暴露した。さらに、ブッシュ政権は、コロンビアで、ゲリラ指導者たちの名前と写真とをポスターや食料包装、マッチ箱に印刷する計画を目論んでいる。けれども、米国国務省のテロリスト・リストでは同じ立場にあるにもかかわらず、カルロス・カスタニョやサルバトレ・マンクソといった悪名高いAUC民兵のボスたちに賞金をかけたり、食料包装にこれらの人々の写真を掲載したりということについての言及はない。
同様に、先週、ブラジルの新聞が、コロンビアのゲリラと闘うために、米国主導の多国籍軍を組織する計画をあばいた。このジョルナル・ド・ブラジル紙は、ブラジル国防省と、チリ軍大佐のコメントを引用して、チリの戦争学校が、1月以来、国連の公認のもとで、コロンビア内戦に介入する、米国、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドル、ペルーから2600名が参加する部隊を検討していると述べている。ピサロ大佐によると、この介入は、新たに大統領となるアルヴァロ・ウリベの軍事攻勢により、コロンビアの左派ゲリラを防衛的な立場に追い込んだ後、2004年1月から開始される可能性がある。
エクアドルとチリ、ウルグアイは、そうした計画の存在を否定したが、その計画は、以前米国政府が提案した計画と似ており、実際にありそうである。この数年、米国は米州機構(OAS)に対し、成功しなかったが、民主主義が脅威にさらされている場所に対して、OASが多国籍軍を結成する要件を確立するよう求めてきた。けれども、多くのラテン・アメリカ諸国の指導者たちは、米国の提案に後ろ向きだった。コロンビア内戦への直接的軍事介入を正当化する手段としてワシントンがOASを利用することを恐れたためである。
ブッシュ政権の対テロ戦略が、コロンビア内戦に関与する武装グループのうちたった一つのグループだけを主要な標的としていることは明らかである。さらに、あまりにしばしば露呈される米国海外政策の偽善が、コロンビアの一つのテロ組織であるFARCを標的とするために、それよりいっそう残虐なテロリスト組織であるAUCを支援するような戦略を適用するという最近の決定ほど明らかに示されたことはない。米国政府がテロリストとしたコロンビアのグループは、いずれも、アルカイーダのように国際的な計画や行動圏を持っていない。また、米国とその市民に対する直接的な脅威となるという証拠も全くない。実際には、その逆に、コロンビアで最も残虐なテロリスト部隊は、コロンビアにおける米国の政治経済的利益に貢献している。
米国議会予算委員会は、インドネシアにおける最も残虐なテロリストであるインドネシア軍に対して、「対テロ戦争」の名のもとで、最近、軍事支援再開を決めました。テロリスト独占状態を創り出そうとしているようです。