コントラ・スキャンダルの再来?

2002年7月8日
ギャリー・M・リーチ
コロンビア・ジャーナル原文

1980年代、レーガン政権は、イラン=コントラ・スキャンダルの泥沼にはまった。ニカラグアのサンディニスタ政権を転覆させるために、ニカラグアのコントラへの武器と資金の提供を行うべく、イランへの不法な武器売却利益を秘密裡に用いたのである。昨年、イスラエルの武器業者がニカラグアの治安部隊から3000の狙撃中と弾薬を購入し、秘密裡に、コロンビアの反革命コントラであるコロンビア自衛軍連合(AUC)に売却した。ジョージ・W・ブッシュのラテン・アメリカ政策立案チームに、レーガン政権においてコントラ戦争を推進したオットー・ライヒ、エリオット・アブラムズ、ジョン・ネグロポンテが参加しているという事実は、米国国務省がテロリスト組織としてリストしている準軍組織AUCのための武器購入・売却・輸送にワシントン・コネクションが関与しているかも知れない可能性を示している。

レーガン政権は厚顔にも敵国イランへ武器を売却したが、コロンビアとの武器取引に参加しているキャストははるかありそうな面々である。取引の中心的ブローカーはガテマラに本拠地を置く、イスラエル政府の兵器産業を代理する企業GERSAで働くイスラエル人たちである。大部分がソ連時代のAK−47からなる武器は、イスラエルと同様米国の同盟国であるニカラグア政府から購入されたものである。

武器は2001年11月10日にコロンビアに運ばれ、米国がスポンサーとなっているコロンビア軍と密接な同盟関係にある右翼準軍組織に手渡された。米国国務省によると、米国の駐ニカラグア大使オリバー・P・ガルザは事前に武器売却について知らされていたが、それがコロンビアへ向けたものであることを知らなかったと述べた。

米国政府は過去2年に、13億ドル以上の大部分が軍事援助からなる援助をコロンビアに提供している。これにより、コロンビアは、イスラエルとエジプトに次いで、米国の軍事援助受けての3番手となっている。米国は、コロンビア軍に武器やヘリコプタ、訓練を提供している。このコロンビア軍は、特に市民に対する虐殺をはじめとする人権侵害の7割を実行している右翼準軍組織と密接な同盟関係にあるのである。

米国の軍事援助を批判する人々は、より強い人権条件を課すことを求めてきた。コロンビア治安部隊と準軍組織の協力関係を解消することなどである。クリントンとブッシュの両政権はこうした要求を無視してきた。クリントン元大統領は、コロンビアが米国議会が課した人権7要件のうち6要件を満たしていないという国務省の報告を否定し、「国家安全保証」例外措置を発動して13億ドルの援助を提供したのである。

ブッシュ大統領はクリントンによるコロンビア人権侵害のあからさまな無視を引き継ぎ、オットー・ライヒとエリオット・アブラムズをラテン・アメリカ政策立案チームのメンバーに指名した。現在ラテン・アメリカ問題の米国最高責任者であるライヒは、レーガン政権のプロパガンダ局たる米国国務省公共宣伝局(OPD)に1983年から1986年まで局長として勤めていた(コロンビアのコントラ参照)。彼は米国市民に対してニカラグアのサンディニスタ政権に対する恐怖を引き起こし、犯罪者たち及び追放されたニカラグアの独裁者アナスタシオ・ソモサに忠誠を誓う兵士たちから構成され米国の支援を受けた反革命集団コントラの宣伝を担当した。

エリオット・アブラムズもレーガン政権における不法なコントラ戦争に関与した。コントラ戦争により、1980年代に4万人ものニカラグア人が殺害されたのである。アブラムズはイラン=コントラ証言における偽証罪で有罪判決を受けたが、ブッシュ父政権により恩赦された人物である。

ブッシュ・ジュニアは、第三のコントラ活動家であるジョン・ネグロポンテを米国の国連大使に任命した。ネグロポンテは、コントラがニカラグアへの攻撃を開始する基地として用いていたホンジュラスの大使として、コントラ戦争で重要な役割を果たしていた。

ブッシュ政権に3名の重要な元コントラ活動家たちが参加していることから、コロンビアへの武器売却がイラン=コントラ事件の再来ではないかという疑問が頭をもたげる。今回の武器取引に対するワシントンの役割についてはいまだにわかっていないことが多いが、コロンビアにおける米国の政治経済的目標と目標を同じにするテロリスト集団への武器提供取引に、米国の緊密な同盟者が関与していることは明白である。

この取引に関与した色々なグループが色々な発言をしている。GERSAの社長は、パナマにいる別のイスラエル武器商人シモン・イェレニクがGERSAに、武器はパナマ向けであると告げたと述べた。ニカラグア軍当局筋もまた、武器はパナマ警察に売却されたものと述べた。けれども、パナマはそれについては何も知らないと発表している。パナマ政府の発言の信憑性は、あるニカラグア軍大佐が、攻撃ライフルは警察の任務には適さないと述べたことからも裏付けられる。一方、米国国務省報道官ウェス・カリングトンが最近述べたところによると、ガルザ大使は武器が米国の銃コレクターに輸出されるものと信じていたという。

今回のイスラエル武器商人とコロンビア準軍組織との取引は、両国の軍事関係において最初のものではない。過去に、AUCの兵士たちはイスラエルの傭兵から訓練を受けているのである(準軍組織:テロ・ネットワークの肖像を参照)。

控えめに言っても、米国政府は、レーガン政権の軍事的政策もあって、ニカラグアをはじめとする中米地域における武器の氾濫に対して責任を負っている。ニカラグアのコントラ、そしてエルサルバドルとグアテマラの軍隊に対して米国が軍事援助を提供したことにより、中米地域で大規模な武器の余剰が生じ、これがこうした国々における犯罪率の記録的増加を招いたとともに、武器の闇市場を活性化し、それはよりコロンビア内戦激化を招く手助けとなった。

最悪のシナリオは、ブッシュ政権がイスラエスの武器商人を使ってコロンビアとの武器取引を直接アレンジしているというものであろう。イランへの武器売却がイスラエルの仲介でなされたイラン=コントラ問題のときにはまさにこれが起きていたのであった。また別の可能性として考えられるのは、ガルザ大使を含む米国の政府関係者は武器取引のアレンジには直接関与していないが、武器がコロンビアの左翼ゲリラと闘う準軍組織死の部隊に対するものであることを発見したとき見て見ぬふりをしたというものである。

今回のコロンビア武器取引についてはまだわかっていないことが多い。さらに、決して明らかにならない部分もあるかもしれない。ブッシュ政権がこの問題に対する自らの役割を明かすことはありそうにないし、また、9月11日(2001年の米国ツイン・タワービル等への飛行機突入)以降の政治的状況で、議会がブッシュ政権にこの問題で対決する意思があるとも思えない。米国政府が自らに対する警察機能を発揮できないことは、イラン=コントラ公聴の茶番において明らかになった。このとき、レーガン政権があからさまに法を破り憲法違反を犯したことは明々白々であったのであるが。コロンビアとの武器取引に米国が関与していることがわかるならば、我々は、ブッシュ政権がレーガン政権と同じような不処罰を謳歌できないようにしなくてはならない。


  益岡賢 2002年7月9日

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