4月末から、コロンビア北西部チョコ州の町ボハヤで、右派準軍組織と左派コロンビア革命軍(FARC)との戦闘がおき、5月2日、一般市民数百名が避難していた教会に対しFARCが爆弾を投げ込みました。105名が怪我をし、120名近くが死亡(そのうち45名は子供)、また80名が行方不明と言われています。準軍組織は「人間の盾」として市民を利用し、FARCは市民もろともを虐殺する爆弾を投げ込んだということになります。また、コロンビア当局は、これを止めるためにこれまで同様何もせず、軍は準軍組織と陰に陽に共謀していました。
ボハヤでの教会爆破で、再びコロンビアの暴力的対立の中に置かれた罪のない一般市民が犠牲になった。それだけではなく、犠牲者は今、コロンビア政府と米国政府により、シニカルな宣伝における政治的な駒として使われている。ボハヤで119名が殺害されたのち、アンドレス・パストラナ大統領は国連に虐殺の調査を要請した。米国の駐コロンビア大使アン・パターソンはすぐさま、パストラナが出した国際調査要請を支持した。けれども、既に実行者が犯行声明と罪を認めている犯罪に対しての調査を要求するのではなく、パストラナと米国オフィシャルは、戦闘に火をつけたコロンビア軍と右派準軍組織の共謀について考えるべきである。
イスラエル軍による西岸ジェニン難民キャンプに対して調査団を国連が送ろうとしていることを引用し、パストラナ大統領はボハヤの悲劇に対して同様の調査団を送るよう求めた。けれども、ジェニンで何百名ものパレスチナ人が殺害されたという主張をイスラエル軍は否定しているのとは逆に、FARC(コロンビア革命軍)は直ちに、手製のロケットで100名以上の無実の一般市民を殺害したことを認めた。FARCは、これは、犠牲者が避難していた教会の近くにいた準軍組織戦士をねらったもので、事故だったと述べた。
昨年、メディアと政府の注目は繰り返しそして正当に、FARCによる料理用ガス缶から作られたロケットのでたらめな利用に注がれた。これは、FARCゲリラが地方のまちの、多くの場合警察署を標的とする攻撃に繰り返し使った手段である。けれども、弾道は何度も標的をそれ、多くの一般市民を殺害した。自分たちは市民を意図的な標的としているのではないというゲリラの主張は、こうした武器によりどれだけたくさんの市民が殺害されたかを考えると受け入れることはできない。
一般市民に死を引き起こすと知りながら繰り返しその戦略を用いたため、多くのコロンビア人がゲリラに反対することとなった。ただし、実際には、標的を逸れたFARCのロケットと、アフガニスタンとイラクで罪のない人々を殺害した米国のスマート爆弾誤爆との相違はほとんどない。けれども、ワシントンの政治宣伝屋たちは、FARCがやった場合には「テロリズム」と予備、一方、米軍の攻撃が市民の犠牲を出した場合には、「遺憾な過ち」とか「付随的被害」と述べる。
パストラナはボハヤにおけるFARCの攻撃をテロリズムと呼んだだけではなく、「ジェノサイド」という馬鹿げた言葉をも使った。パストラナは国連調査団を要請したとき、国連人権調査使節アンドルス・コンパス率いるコロンビアへの調査団がはっきりとFARCを批判することを予測していた。けれども、ボハヤから戻ったコンパスが、コロンビア軍と準軍組織の継続的協力関係を批判したため、パストラナの宣伝方略は失敗した。
国連使節団は、コロンビア軍がボハヤ地域を安全にしたと宣言したのちも、準軍組織が残っていると報告した。コンパスは、「治安部隊が駐在していると同時に」、準軍組織がいることは、「市民を混乱に陥れている」と報告している。パストラナ大統領は、国連の報告に怒りを表明し、政府治安部隊が準軍組織と共謀していることはないと主張した。彼は、共謀していると述べるものは前に出よとすら述べたが、まさにそれこそが、彼自身が要請した国連調査団がしたことなのである。
FARCがボハヤでの119名の罪のない市民の殺害に何よりも責任があることは明らかであるが、国連調査使節団が調査を行うまでは、コロンビア軍と準軍組織がこの悲劇においてなした役割はほとんど注目されていなかった。2000年3月、政府は、FARCがボハヤの警察派出所を襲撃したのち、この地域のすべての治安部隊を撤退させ、ボハヤの人々を見捨てた。同時に、ゲリラは地域の準軍組織を破り、このチョコ州のジャングル地帯奥深くを制圧した。けれども、先月(2002年4月)、地元住民と人権活動家は、準軍組織がコロンビア軍の支援を受けて、この地域に戻ってきていることを確認したのである。
ボハヤ市長と人権活動家たちは、準軍組織がボハヤに入ってきたことで不法武装組織間の戦闘に挟まれて市民が犠牲になることを知っていたため、繰り返し、ボゴタに軍による保護を求めた。教会爆破を報道したニュースの多くは、この要請が無視されたと報道しているが、実際には、単に見て見ぬふりをしただけではなく、コロンビア軍は、ボハヤの事件に積極的に関与していた。
4月半ば、重武装した450名のコロンビア自衛軍連合(AUC)が11台の船でアトラト川を下った。この大規模な部隊は、アトラト川沿いに設置されたいくつかの軍の監視所を問題なく通過してきた。
準軍組織が引き起こした虐殺につぐ虐殺において、コロンビア軍は、この右派死の部隊に諜報や輸送手段、武器を提供したり、あるいは準軍組織が標的となった村に侵入したりそこから撤退したりするときに妨害をしないで行き来させることにより、準軍組織を支援してきた。4月のアトラト川においても同じ事態が起きていたのは明らかである。軍は、準軍組織がゲリラと衝突するであろうことを十分知りながら、また、コロンビアの内戦でいつも起こるように一般市民が殺されるであろうことを知りながら、準軍組織がこの地域に侵入することを防がなかったのである。
この軍と準軍組織の共謀により、コロンビアの人権侵害の70%が引き起こされているのであり、ワシントンとボゴタはこれに関心を持つべきである。けれども、ブッシュ政権は、この野蛮な軍と準軍組織の連合関係を見て見ぬふりをし、対麻薬作戦という名目での現在及び将来にわたるすべての軍事援助に対しすべての制約を取り除くよう議会を説得しようとしているのである。ブッシュ政権は、コロンビア軍とその同盟者AUC準軍組織による対ゲリラ作戦を支援することにより、コロンビアへの軍事介入を拡大しようとしている。AUCは、FARCと異なり、米国国務省だけでなく、欧州連合(EU)のテロ組織リストにも名を連ねている。
実行者を含む誰の目にも事実が明白な悲劇に対する国連の調査を呼びかけるかわりに、パストラナ大統領とアン・パターソン駐コロンビア米国大使は、コロンビアにおける軍と準軍組織の関係及び米国の援助がこの殺人同盟にどう貢献しているかに関する国際調査を呼びかけるべきである。コロンビアにおける人権侵害、特に市民に対する虐殺の非常に多くの部分は、コロンビア軍の準軍組織死の部隊との協力関係が根本にあるものである。最近準軍組織が軍の支援を受けて行ったチェンゲ、ブガ、エル・サラドでの虐殺に対して、なぜパストラナは国際調査を要請しないのだろうか。
FARCに関しては、地方の町で繰り返し繰り返し市民を殺害してきた自家製ロケットの使用をやめよという呼びかけに答えるべきである。この武器の精度の低さにより、ゲリラは、自らそのために闘っていると称する人々に対して、無差別殺人者となっている。ボハヤで100名以上の一般市民を殺害したのはFARCが自家製ロケットをでたらめに使ったからであるが、その一方で、コロンビア軍と準軍組織の連盟関係が、この悲劇を引き起こす重要な要因だった。
訳者は、政治的レベルでは、このレポートの趣旨に同意します。ちょうど1年前ナヤ川地域で準軍組織が行った虐殺はなぜほとんど報じられなかったのか。国際調査が呼びかけられなかったのは何故か。米国が自らアフガニスタンやイラク、セルビアで行った一般市民の殺害を「付随的被害」と平然と呼んでいる一方で、FARCの誤爆が「ジェノサイド」と呼ばれるのはなぜか。米国の「秩序」がごり押しさせる今、当たり前に指摘しなくてはならない点だと思います。一方、「・・・である限り、・・・だって・・・である」という言葉遣いとは別に、戻ってくることのない犠牲者のことについてなかなか頭から離れません。それについて、カナダ−コロンビア連帯キャンペーンが出した声明「ボハヤへ」がある程度その気持ちに近いことを表現しているので、添付します。
ボハヤへ
カナダ=コロンビア連帯キャンペーン
2002年5月8日コロンビアでまた一つ虐殺が行われた。これまでの推定では、80名が行方不明、105名が怪我をし、116名が死亡した。殺された116名のうち112名は、FARCが教会に投げ込んだ爆弾により殺されたのである。そのうち45名は、子供であったという。FARCは自らについて、何を言ったか?「私たちには、コミュニティに犠牲を出す意図は全くなかったのだ」。FARCの声明は、準軍組織が、外にいた人々を殺害することにより、教会に人々を追い込んだと言う。「地域全土にわたり準軍組織が不処罰のまま活動することを許容していた軍の、第17旅団に、責任がある。準軍組織のヘリや飛行機がコロンビア中を飛び回りながらそれを阻止しようとは全くしない、ヴェラスコ将軍指揮下のコロンビア軍に責任がある。準軍組織をつかった戦略により、人々に対しての汚い戦争を始めた国家に責任がある。」
確かにその通りである。けれども、人々で一杯の教会に実際に爆弾を投げ込んだものにも、責任がある。それは、その不正確さで著名なガス爆弾の利用を止めると約束したFARCである。100名以上の人々が虐殺された今、誰に対しても非難は向けられる。
同じことは、1年前、2001年4月の同じような規模の虐殺にも言える。このときの虐殺は、ナヤ川地域で起きたもので、やはり、犠牲者のほとんどは、アフロ=コロンビア人だった。このときも、虐殺が行われることは事前にわかっていたが、当局はそれを阻止するための手だてを全く講じなかった。このときも、アフロ=コロンビア人農民たちは、国際資本と国内資本が収奪しようと目を付けた土地に住んでおり、虐殺のあと、その肥沃な土地から逃げ出したのである。この虐殺はほとんど報じられなかった。このときの殺害者は、国家がスポンサーとなっている準軍組織だった。
ボハヤの地域と町は、領土を巡る闘いの中に捉えられた地域の古典的な例である。この地はFARCの拠点であった。1996年に準軍組織がやってきた。2000年にFARCが戻ってきた。そして準軍組織は2001年に戻ってきた。このとき、地方当局は政府に対して、戦闘が差し迫っており、虐殺が起こりそうだと警告していた。
エデュアルド・シフエンテスは、コロンビアの人権オンブツマンである。彼は、今年4月24日に、もし当局が対応しなければ、大規模な虐殺が起きるだろうという手紙を送っていた。防衛相のグスタヴォ・ベルは、川はあまりに高く、状況は安全でなく不透明で、戦闘員は誰も人道法を守らないと述べた。つまり、防衛相は、コロンビア政府には人々を守ることはできないと述べているのである。そして今、コロンビア政府は、謝罪するかわりにヨーロッパ人を非難している。EUは、そのテロ組織リストにFARCを挙げておらず、パストラナ大統領は、これを、ヨーロッパ人からの「苦痛なメッセージ」と述べているのだ。あたかも、EUが交渉による内戦解決を支持していることのほうが、コロンビアのパストラナ政府自身が地方当局からの度重なる警告に対して何もしなかったことよりも、恥ずべきことだと言わんばかりに。
状況全体を覆う論理は、政府を利する。コロンビア軍が虐殺を阻止する役に立たなければ立たないほど、政府は、もっと軍事援助が必要であり、軍を「専門化」し「強化」する必要があると主張できるのである。虐殺が残忍で恐ろしいものであればあるほど、交渉による解決に反対する議論も強くなる。軍が、何もしなかったり実際に虐殺を助けたりして、虐殺に共謀したことは気にしなくてよい。軍事対立の激化が過去に起きたことをさらに生み出すことも気にしなくてよい。
まもなく軍がボハヤ地域を占領するだろう。そして、おそらく、FARCを追い出すことに成功するだろう。高地の川で、安全でなく、不透明な状況で、戦闘員は問題含みであるにもかかわらず。準軍組織はどこか別の場所で殺害を行うだろう。地域コミュニティは土地から追放され、そしてその土地は、大規模土地所有者の手に渡るだろう。そして、コロンビア大統領パストラナが求めたように、国連がボヤハに調査団を送るならば、そのとき、軍が虐殺の後では一体を統制できたが、虐殺の前にはできなかったのは何故かと調査団が尋ねることを期待しよう。そしてまた、誰が殺害を行っているかにかかわらず、どうして、殺害された人々の観点からは、これらの虐殺が全く同じように見えるのか尋ねることを期待しよう。侵入と警告からはじまって、当局への警告があり、虐殺がおこり、軍が地域を統制し、準軍組織は処罰を受けずに活動を続ける。また、調査団が、準軍組織と協調行動をとり、人々を守るという義務以外のすべてのことを行っている軍隊に対して米国が提供する軍事援助が、状況を改善する助けになるかどうか尋ねることを期待しよう。
同じような虐殺が繰り返し繰り返し起きるのを耳にするのは心が痛む。新しいことと言えば、また、新たな犠牲者が生み出されたということだけなのだ。コロンビアの人々には、同じものだけが利益を得、人々はいつもいろいろなものを失い死んでいくというだけの、これまで何度も繰り返された恐ろしいことを今後も繰り返すということとは別の、よりよい生活を送る資格がある。