文書記録は米国が対ゲリラ戦争に深く関与していることを示している
2002年5月6日
マイケル・エバンズ
コロンビア・ジャーナル
過去15年間、米国議会は、主として人権に関する憂慮から、米国のコロンビアに対する安全保障援助を、長期にわたる内戦を戦うことに関してではなく、麻薬取引をめぐるものに絞るべきだと主張してきた。現在、ブッシュ政権はこうした制限を取り除き、現在・過去・将来にわたる支援すべてをゲリラ部隊に対する作戦に使うことを許可している。けれども、最近機密扱いを解かれた米国政府文書によると、法的制限とそして政府官僚から繰り返し公に確約があったにもかかわらず、米国の援助は対麻薬と対ゲリラ戦略との境界線を越え、既にして、米国はゲリラと直接対峙しており、また、このコロンビアの制御不能に見える内戦にさらに深く関与していこうとしている。
情報公開法(Freedom of Information Act: FOIA)に基づき入手され、国家安全保障アーカイブWebページのコロンビア文書プロジェクトで最近公表された新たな文書は、1988年から現在までをカバーしており、米国による安全保障援助提供から来る問題に特に焦点を当てている。
以下が、中でも主要なポイントである。
- ブッシュ(父親)政権の時代から、米国の「アンデス戦略」は、アンデス地域政府に対して対麻薬支援を与えながら、それを政府の主要な敵であるゲリラに対しても使うことを許容することを「取り引き」していた(第1巻
参照)。
- 繰り返し出された「麻薬ゲリラ」に関する公式声明とは反対に、ゲリラの麻薬取引関与に関する米国の諜報分析は全く種種様々であり、ゲリラが麻薬取引に深く関与しているとする文書もあれば、その関係はないと述べる文書もある。あるCIA報告は、「リマとボゴタの高官達は、対ゲリラ作戦目的で対麻薬支援を与えられるならば、麻薬取引をほとんど代償とせずに対ゲリラ作戦そのものに流用するだろう」と述べている(第2巻、特に 24、33、40を参照)。
- 1990年代半ばから後半にかけ、対麻薬作戦の危険性が増大し、ゲリラによるコロンビア治安部隊への攻撃がますます成功の度合いをますようになるにつれ、コロンビア軍の対麻薬作戦に再関与しようとする米国の動きはそうして支援を人権状況により制限しようという議会の動きと対立するようになった。米国国務省が、議会の課した制約に合致するコロンビア軍部隊を見つけるのに非常な困難に面していたことを証拠は示している。2000年9月に人権侵害のために米国援助を失ったコロンビアの2旅団は、米国の資金提供に合致する条件の部隊を作るという目的で創生された、対麻薬部隊を擁する共同攻撃部隊であった。文書の一つによると、この新たな部隊は、非合法な準軍組織に関与していると報じられている対ゲリラ部隊と「床をともに」していた(第3巻、特に 60、69、70
- 米国とコロンビアの間の最終使用目的合意−これは、対麻薬支援を麻薬生産地でのみ用い、また、対麻薬作戦でのみ用いることを保障することを意図したもの−は、実質的な意味を失うほど広義に解釈されるに至った。文書によると、米国は後に、援助を用いることができる地域を「コロンビアの国家領土全体」に定義しなおした(第3巻、特に66、68、を参照)。
- 最終使用目的合意をコロンビア国防省と交渉中に、共和党のデニス・ハスタート議員(イリノイ州)−現在下院議長で当時の下院国家安全保障小委員会委員長−を代表とする議会使節団が、密かに、米国援助における人権条件を無視するようコロンビア軍将校たちを奨励していた(文書52、54、55を参照)。
- 悪名高いコロンビア準軍組織に関する1990年代のCIAを初めとする諜報レポートは、コロンビア政府には準軍組織を追求する意図がないことを示している。1998年のCIA報告では、「軍と準軍組織の間の情報リンクと積極的協力の事例は今後も続く可能性がたかく、おそらくはさらに増大するであろう」と結論している(文書53、61、64を参照)。
ブッシュ政権が提案したコロンビアに対する2003会計年度の援助額は、軍事・警察支援だけで5億ドルにのぼるのである。
マイケル・L・エバンズは、The National Security Archive(国家安全保障アーカイブ)という、情報公開法(FOIA)に従って入手された機密解除された文書を収集し出版する独立非政府研究機関のコロンビア文書プロジェクトディレクタである。