コカコーラ労働者の声

2002年4月22日
パトリック・キーニー
コロンビア・ジャーナル

コロンビアの同志労働者に対する国際連帯を表明するため、4月17日、International Brotherhood of Teamstersのメンバーが何百人も、4月17日マンハッタンの道を歩いた。労働組合員がマディソン・スクエア・ガーデンの外に集まっていたとき、中ではコカコーラの経営陣と株主が年次総会を開いていた。Teamstersの活動意図の一つは、コロンビアで続いている政治暴力の一部として、コカコーラ社の子会社の工場で働く従業員を含む驚くほど多くの労働組合員が毎年暗殺されることをアピールすることであった。

「コカコーラ社は、従業員の殺害と虐待はマーケティングの問題としてしまえるものでは全くないことを認めるべきだ」とTermstersの代表ジェームズ・P・ホッファは株主総会のところで述べた。「この会社は従業員に対する責任をとり、労働組合との間で実行できる人権に関する合意を結ぶべく交渉すべきだ」。ホッファとともに、コロンビアの食料飲料関係産業の労組であるSINALTRAINAL(食料産業労働者全国組合)の代表ルイス・ハビエル・コレア・スアレスも参加していた。コレアはコロンビア労働者が直面する過酷な現実に対する意識を高めるためにTeamstersが組織した講演ツアーの一部として米国を旅行中であった。

マサチュセッツ州ケンブリッジのハーバード大学で学生と労働活動家に対して講演をしたコレアは、彼の国コロンビアから恐ろしいニュースをもたらした。1985年以来、コロンビアでは3800人の労働組合員と組合指導者が暗殺されている。労働者の権利を求めて闘う人々にとって、コロンビアは、この地球上で他をぬきんでて危険な場所なのである。

中央労働者連合(CUT)によると、2001年に、コロンビアの60万の組合員のうち、169人の活動家が暗殺され、30の暗殺計画があり、79名が「失踪」したり誘拐されたりし、400以上の脅迫と脅しが報告された。コロンビアで毎年殺される労働者の数は、コロンビア以外のすべてをあわせた数よりも多い。今週の時点で、2002年は2001年の恐るべきペースが続いていることがはっきり示されている。今年これまでに45名の労働組合員が殺害されているのである。

「コロンビアの労働運動が置かれている状況は非常に深刻だ」とコレアは言う。コカコーラ社に勤めてきた20年間の中で、今ほど労働者の見通しが悲惨であるときをみたことがないと彼は言う。右派準軍組織コロンビア自衛軍連合(AUC)により、コレアの組合員は、常にいやがらせと脅迫を受けているという。過去10年でSINALTRAINALの指導者14名が殺害された。コレアによると、このうち7名がコカコーラ社の従業員で、3名が団体交渉の時期に殺害されたという。「脅しは団体交渉のときに増大する」。「多くの労働組合幹部が銃撃を浴びせられた。我々の指導陣のうち60名以上が身を隠している」。

隠れている指導者の一人はウィリアム・メンドサである。コレアによると、彼は4月上旬、準軍組織の攻撃をすんでのところで逃れ、隠れているという。メンドサは、準軍組織が占領しているサンタンデル州のバランカベルメハ市のSINALTRAINAL組合員で、ハッキリと自分の意見を言う。今年上旬のインタビューで、メンドサは「労働組合指導者たちに対して死刑宣言が出されている」という。「雇用者と国家、準軍組織の間には全面的な共謀関係がある」。彼は、コカコーラのように低賃金から利益を得る企業は、殺害や労働組合潰しに目を瞑っていると述べる。

この主張は、バランカベルメハの窮屈な組合ホールから遠く離れた、米国フロリダ州マイアミの連邦地方裁判所でもなされた。2001年7月21日、国際労働者権利基金と米国鉄鋼労組がコロンビア労組のためにコカコーラ社に対し、イシドロ・セグンド・ヒルの死に関与していたとして訴訟を起こした。1996年12月5日、労組の執行部メンバーだったヒルは、カレパのコカコーラ瓶詰め工場入り口で準軍組織に射殺されたのである(コカコーラと「死の部隊」を参照)。

組合はこのとき、契約交渉を行っており、その翌日、AUCが再び現れ、組合員に組合を脱退するよう要求した。準軍組織はまた、組合ホールを破壊した。ホールはその後再建され、準軍組織に占領されている。メンドサは、コロンビアの米国大使館及びコロンビアと米国のコカコーラ本社はこの事件について情報を受け取っていると言う。けれども、現在まで、この殺害について公式の告訴はなされていない。「残念ながら」とメンドサは説明する。「この国では100%が不処罰なのだ」。

コレアとメンドサは、コロンビアで労働組合を破壊するより大きな動きが存在していることを見て取っている。労働組合員を契約なしの一時雇用者で置き換えることにより企業の利益が増大する。確かにこのことが、組合員暗殺の背後にある。コレアとメンドサは、南アメリカでは労働組合が市民社会で中心的な役割を果たしているため、コロンビアをさらに「グローバル・エコノミー」に組み込むために組合員が標的とされるのだと述べる。ワシントンが好む新自由主義政策が南米大陸に強制されることで、大陸全体が巨大な輸出地域となる。「一般に、ラテンアメリカにおける米国の政策は、ラテンアメリカ諸国の資源を米国に流し込むことだ」とメンドサは言っていた。

労働組合はこうした政策に抵抗し、社会保障政策、土地と資源の平等な分配を主張し、富裕層と貧困層のギャップを狭めるためにコロンビアの労働者に公正な賃金を求めるため、押さえつけなくてはならないのである。「我々は、自決権を求めるし、持っているべきである。コロンビアの人々は労働組合を支持しているが、汚い戦争は非常に過酷だ」とメンドサは、準軍組織のテロ作戦をさして述べた。「それによりこの国の組合は弱体化させられた」。

メンドサもコレアも、プラン・コロンビアの名のもとになされる米国からの何億ドルもの軍事援助についてはっきりとした違憲を述べている。「プラン・コロンビアの背後にある意図は、米国がこれらの国々を最大限統制すること、そして人々が抵抗しようとしたときに自分たちの血の海の中に沈めることだ」とメンドサは言う。そのほとんどが軍事目的に割り当てられている13億ドルの援助パッケージであるプラン・コロンビアは、米国が米国企業の利益を追求するための手段であると組合指導者は知っている。それは、「麻薬戦争」の見せかけのもとで、そして2001年9月11日以後は「対テロ戦争」の見せかけのもとでなされているのである。

コカコーラの他にも、何十もの米国大企業がコロンビアで活動している。エクソンモービル、オクシデンタル石油、ドラモンド石炭会社、ドールなどである。ブッシュが2月に、オクシデンタル石油のパイプラインを守る部隊を訓練するために9800万ドルの予算を提案すると発表したことを考えると、コレアとメンドサの考えは正しいことが伺える。「彼らは我々の抵抗運動を標的としようとしており、同時に、対象地域に集中している資源を搾取しようとしている」と、ブッシュがプラン・コロンビアをアンデス地域イニシアチブに拡張して他の国も対象としようとしていることを指摘しながら、コレアは言う。「我々には、その意図は明らかだ。対象となる国々の市民に対する直接的な攻撃である」。

非常に不利な状況に置かれているようであるにも関わらず、コレアモメンドサも希望を抱き続けている。「我々が望むのは、よりよい状況の国に住みたいということだけだ」とメンドサは言う。「そしてそれが可能であることを知っている」。一方、コレアは、コロンビア市民が、右翼準軍組織と大きなコネクションを持つアルバロ・ウリベを大統領に選ぶかも知れないという。大統領選挙は今年夏の終わりに予定されており、今のところウリベがリードしている。コレアは「彼が全面戦争作戦を実行するだろう」と予測する。「彼が勝つなら、コロンビア共和国から議会を放逐するだろう。コロンビアが持っている民主的な未来への極めて限られたチャンスに手が届かなくなることになろう」。

メンドサもコレアも、コロンビアと米国の労働組合員の間の国際連帯が、彼らが面している暴力を終わらせるための鍵であるという強い信念を表明している。コレアはハーバードでの労働組合活動家に対する講演を、遅くなりすぎないうちに行動を起こす要請で締めくくった。「皆さん自身の政府に圧力をかけて欲しい。多くの死と莫大な悲惨を避けることができるだろう」。

  益岡賢 2002年4月26日

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