2002年2月20日、コロンビア大統領アンドレス・パストラナは、コロンビア軍に、コロンビア革命軍(FARC)に譲った非軍事化地帯を奪回するよう命じた。ゲリラの安全地帯に対して加えられた爆撃と部隊侵攻は、ついで、周辺の州へと拡大された。これは、「作戦シアター」となるべく計画されていたものである。現地の人道状況に対する信頼できるデータはほとんどない。というのも、軍は、作戦の対象となる地域へのアクセスを制限しているからである。軍事攻勢が始まる以前から当該地域に滞在していた宗教組織が、「作戦シアター」の対象地域内から報告を発するほとんど唯一の情報源である。こうした組織の報告は、一般市民が、爆撃や虐殺、強制移送、水と基本食料の不足といった状況にさらされていると述べている。
カトリック海外開発機構(Catholic Agency for Overseas Development: CAFOD)のフランシス・マクドナーが、サン・ビンセント・デル・カグアン周辺の治安状況について述べる。
何とかサン・ビンセントに入ったあるプロテスタントの牧師は、軍の信頼をなくすような話をしたために暗殺された。私はこれを、二つの異なる情報源から耳にした。この牧師は、カルテヘナ・デル・チャイラでの大規模な戦闘について報告していた。同地を離れることは誰にとってもほとんど不可能だった。牧師はサン・ビンセントに行って、軍が人道的支援がカルテヘナに入るのを妨害しているために一般市民が死んでいると述べたのである。人々は医薬品供給の不足により困難に面しており、それは軍の取り締まりによりさらに悪化している。
また別の教会筋は、マクドナーに対して、爆撃の犠牲者について次のように述べた。
爆撃のために犠牲となった農民たちの遺体が畑の周辺にあった。フィスカリア・ヘネラル(検事総長局:検察庁)は、サン・ビンセンテから外に出ることができなかった。そこに押しとどめられていたのである。これは、検察庁が来る前に「掃除」していること、つまり、何か隠さなくてはならないことがあることを示しているのは明らかである。軍は、安全ではないから、検察の身の安全を心配しているから、と言うであろうが。
マクドナーは、人道支援分野でのCAFODのパートナーによる、国際社会そして国際人権モニターへのアピールを繰り返し、次のように述べる:
我々は、英国政府に対して、機密報告により、コロンビアの危機的状況について警告した。
教会連合行動(Action by Church Together: ACT)の報道官リナー・ラングによると:
2月21日以前に、チャケタのコミュニティは既に移送の被害を受けていた。昨年からの暴力が継続して悪化してきたため、既に過去3ヶ月で、移送された人々の数は急激に増加した。これは主に準軍組織による暴力のためである。そして今や、さらに、FARCとの闘いが新たなレベルに達しているのだ!
2月28日、カトリック救援サービスの米国調整官カルロス・サンチェスは、次のような報告を、プツマヨの神父から受け取った。この神父は、安全のため匿名を希望した。サンチェスによると:
その神父は、コミュニティと密接に協力して資源の配分と配布を行っていた。というのも、元非軍事化地帯の南にあるプツマヨは、ますます、国の他の地域から孤立しているからである。コミュニティは食料不足の困難な状況に置かれている。
神父のグループは小さな委員会を組織した。昨日、彼ら/彼女らは市長と同地域の教区司祭に会い、代替案を検討した。彼ら/彼女らは、食料割り当て制と、水の消費を減らし食料供給を最大限活用するための教育のためのキャンペーンを行おうと試みている。
この神父の街はお金が不足している。彼ら/彼女らは、食料の供給を得るために、200米ドルを借りたが、既にこれは使い果たしてしまった。このお金でひとびとは少量の食料を手に入れ、それは緊急に、ある家族が責任を持って配布した。食料を入手することができる最も近い街に行くためには、1日がかりの旅をしなくてはならないのである。状況が悪化するなら、徒歩でそこに行くというオプションがある。山を越えれば、数時間でそこに行けるのである。
3月22日、サンチェスはプツマヨの神父から別の報告を受け取った。
神父は、2月20日に政府とFARCの交渉が決裂してから状況がいかに悪くなったか繰り返した。3月6日以来、プツマヨ全体で、状況が非常に危険になったと述べている。2週間前に行われた議会選挙の期間、FARCは同地方のすべての道と川を封鎖した。住民が投票するのを阻止するためである。FARCは選挙の3日後に統制を緩め、同地の交易は再び活発になった。けれども、食料の価格は30%上昇し、燃料は50%上昇した。コミュニティは、5月の大統領選挙のときに、FARCが再び交通を封鎖するのではないかと考えている。
3月半ば、政府軍と国家警察、そして準軍組織が武力をもってプツマヨに侵攻したとき、FARCは同地域の街と人々を見捨てた。それ以来、この地域で30名の農民が失踪し殺害された。教区に非常に近いところの3名が先週殺害された。
小さな渡し船と売店の番をしていたある老人は、準軍組織に拷問を受け殺害された。準軍組織は遺体を引きずりバラバラにした。準軍組織は、この老人がFARCを支援していたと主張し、これは、FARCを支持するものへの警告であると述べた。コミュニティは、この老人がFARCに自分の昼食を提供したことがあるのを認めたが、けれども、彼に選択肢はなかったのである。FARCに望むものを与えなければやはり殺されていたかも知れない。それゆえ、この老人は結局自分の死を導く結果となった行動をせざるを得なかったのである。
神父は、コミュニティの元メンバーたちが準軍組織に属しているという。また、準軍組織に参加した元FARCのメンバーたちが、住民「浄化」のガイド役を務めているという。コミュニティは、夜、移送される危険を減らすための手だてを講じた。家の外で寝たり、また、都市の当局や教区からの支援関係を強化したりといったことである。
キム・アルファンダリーはフリーランス・ジャーナリスト