コロンビア政府とゲリラは和平交渉を行ってきましたが、2002年2月20日、パストラナ大統領が一方的に和平交渉をうち切りました。コロンビア国軍は、21日から、コロンビア革命軍(FARC)拠点に対して空爆を続け、また、緊張緩和地帯(安全地帯)への侵入を開始。23日には、緊張緩和地帯内にある主要都市のいくつかに進駐しました。一方、FARCも全面戦争を宣言しています。本記事は、そうした文脈でのものです。新聞などには、武装組織から解放された市民らが歓迎とありますが、アフガニスタンにおける北部同盟のカーブル進駐時にブルカを脱いだ女性をことさらに強調して「解放」が訪れたかのような新聞の扱いと同じく(タリバンよりもFARCのほうが非抑圧的という点では相対的にはそれ以上に)一方的な報道です。私自身はFARCに別に共感をもってはいませんが、例えば女性団体MADRE(スペイン語で「母」を意味する)は、2月26日声明の中で、コロンビア軍が爆撃した緊張緩和地帯が1998年来、平和的だったこと、軍と密接な関係を持つ右派準軍組織の侵攻で、大規模な人権侵害が起こる可能性を危惧する人権活動家の声などを述べています(アフガニスタンについても、RAWAが、困難な状況の中で、米国の爆撃にも、タリバンにも、北部同盟にも反対するという明確な立場を取り、こうした報道の欺瞞を指摘していました)。
コロンビア政府が和平交渉を中止したため、米軍がコロンビアの対立−この対立は、裕福なものが貧乏人からの略奪を止めない限り本当には解決できないのだが−に直接介入する可能性が出てきた。最近になって事態がこのようになったのは、プラン・コロンビアにおいて米国が提供した資金と、そして米国政府の好戦的態度により、コロンビア軍の高官たちが再び自信をつけたことと密接に関わっている。何年にもわたり、コロンビア軍とその同盟者である順軍組織、そして米国国家安全保障関連機構の一部は、コロンビアの革命集団を破壊したがっていた。これらの人々は、今、そのときがきたと考えているのである。
コロンビア軍と寡頭有力者たちは、米国が内戦に直接介入することを正当化するために、対立の激化をはかっていた。現在、コロンビアでは、米軍はアドバイザとしての活動に制限されており、直接コロンビアの先頭に参加できるのは、コロンビア人と、CIA及び米国国務省と契約した傭兵たちである(Are They Civilians or Mercenaries?を参照)。軍事対立が統制不能なまでに激化するならば、コロンビアに非軍事的手段で社会的・経済的正義を実現しようとしている人々の活動の余地がなくなってしまう。多くの進歩的なコロンビア人にとっては落胆すべきことに、既に、非暴力の活動は武装活動の陰に隠れてしまっている。
何年間も、コロンビア政府は、大衆運動に対して、色々な準軍組織をつかって汚い戦争を実行させてきた。こうした準軍組織は、1980年代にエルサルバドルで活動していた右翼死の部隊や、米国が南ベトナムで戦争を行っていたときに何千人もの人々を殺害した「反テロ」チームと似たものである。こうした準軍組織は、米国とコロンビア政府の機関から秘密裡に資金を得ているが、公式に政府をスポンサーとする軍隊ではない。こうした中で、農民や労働運動の指導者、改革を求める人々に対する虐殺は準軍組織が行うので、コロンビア軍は比較的手を汚さずにすむ。
米国政府が、コロンビア軍と準軍組織には関係がないとするコロンビア政府と意図的に共謀しているために、その関係を否定することが可能になっている。実際には、軍と準軍組織の協調は、政府の戦争計画の一部なのである。けれども、政府は、ゲリラと同時に、準軍組織とも闘っているのではないだろうか?答えははっきりと否である。準軍組織の兵士たちの歴史をみると、多くが元兵士であることがわかる。実際には、多くの準軍組織のメンバーは、今もコロンビア軍兵士なのだ。米国のキュー・クラックス・クラン団員が、勤務外の警察官であったりするのと同様である。
地上での軍事行動がエスカレートするに従い、多くの非戦闘員が戦火に巻き込まれることになる。暴力の犠牲となっているのは、先住民のコミュニティ、労働組合員、人権活動家、社会活動家、そして、50%以上が貧困生活を送るコロンビアで、生活の糧を得ようとしている多くのコロンビア人である。地方に住む多くのコロンビア人は、「麻薬に対する戦争」の名目で行われる薬剤空中散布により、既に自分たちの作物が破壊され、体が毒され、土地が不毛にされるのを目撃してきた(空から降る死を参照)。
一方、FARCは、和平交渉中も軍事活動を続けていたので、繰り返し、戦争屋の集まりと見なされてきた。一方、米国の主流メディアが問題を無視してきたために米国市民に見えていないことは、ゲリラの安全地帯外にいるゲリラと市民に対して、コロンビア政府軍と準軍組織は攻撃と殺害を停止してこなかったことである。ゲリラの軍事行動を耳にしたとき、実際にはそれが、米国メディアが報告しなかった、米国が支援する軍や準軍組織による攻勢への報復だったりするのである。
私の友人は最近次のように述べた。米国のアフガニスタン攻撃以来、米国政府の同盟者は、「テロリズムに対する戦い」と言いさえすれば、戦争を開始するのに外交的考慮はいらなくなったと。さらに、民主主義を防衛しているのだと一言二言いうと、もっと楽である。米国大統領ジョージ・W・ブッシュは最近、(コロンビアにある)米国の(!)石油パイプラインを守るために、コロンビア軍訓練向けの9800万ドルを要求した。コロンビアにおける対麻薬、対テロ、そして対ゲリラ作戦をもはや区別しなくなった米国政府は、仮面をかなぐり捨て、コロンビアにおける真の意図を自ら晒したのである。
米国では、多くの人々が、麻薬と闘うとかゲリラと闘うとか石油パイプラインを守るといった名目に関わらず、米国のコロンビア介入に反対し、米軍、CIA、DEAがアンデス地域に介入することを止めるよう求めている。コロンビア内戦における米国の役割について人々の意識を高めようといくつかのグループが活動しており、2002年4月には、抗議の週やワシントンDCでのロビー活動が予定されている。コロンビアで和平交渉が中断され、全面戦争の危機に面している今、こうした真実を伝える活動が増加するのは確実である。
ロン・ジャコブスは米国バーモント州バーリントン在住、ベトナム戦争以来の反戦活動に従事している。著書に The Way the Wind Blew: A History of the Weather Underground (Verso, 1997)がある。