コロンビアは言葉を絶するほど美しい自然に恵まれた国である。北東部の雄大なシエラネバダ山地。ロス・イャノスと呼ばれるはっと息をのむような東部のサバンナ。大西洋と太平洋のすばらしい海岸。大規模な処女密林を今も擁する南東部の暗い謎めいたアマゾン地帯。そしてコロンビアの中央、アンデス山脈のコルディイェラ・オリエンタルの高所に位置する権力の所在地、国の宝石、ボゴタ。このボゴタはまた、コロンビアにおける暴力の本質的性格を覆い隠す輝ける嘘の発信地でもある。
フランスとスペイン、ポルトガルを併せた程度の面積を持つこの美しい国には、4200万人の多様な人々が暮らしている。中南米のほとんどの国と同様、コロンビアは社会的エリート層が国を支配している。一方、近隣諸国と異なり、寡頭体制の外から大統領が選出されることが極めて稀である。コロンビアの支配エリートたちは、大新聞や雑誌、ほとんどのテレビ、有線、ラジオ局を含む経済中枢を所有するかその利害統制を保持している。
歴史的に見て、支配エリートたちは経済の慎重な運営を心がけたため、近隣諸国のように、海外債務支払いを滞らせたことはなかった。その結果、コロンビアは信頼できる貿易パートナーであり、世界の産業国家の強力な見方であると見なされてきた。この地球上で最も美しい風景、そしてきらめく地平線を持ち、五大都市には洗練されたショッピング・モールを擁していながら、ラテンアメリカにある同規模のどの国と比べても、コロンビアの外国人住民の数は少ないのである。さらに、かつては活気に満ちていた観光も灯が消えつつある。
暴力が問題の中心にあるものである。コロンビアは地上でもっとも虐殺と誘拐が多いという悲劇により名を知られている。米国でも現代社会のほとんどにおいても、それが何故なのかは知られていない。麻薬というのが反射的に思い浮かべられる理由である。けれども、事実ははるかに複雑で、幾重にも重なった歴史の層の中に隠されている。そして、コロンビアのエリートたちに理由を聞くならば、輝かしい嘘を教えてくれるであろう。国家の弱点ではなく、「暴力への寛容」や「規則破り」の国といった話を聞かされるであろう。実際には寡頭支配層が何十年にもわたり貧困層に対す汚い戦争を続けており、それが、コロンビアが暴力にあふれた国である理由なのだ。
これに疑問を持つ人々は、米国国務省のコロンビア人権報告書、ヒューマンライツ・ウォッチ/アメリカのコロンビアに関する報告書、アムネスティ・インターナショナルが出したコロンビアにおける準軍組織の人権侵害に関する資料に目を通すとよい。さらに、コロンビア人ジャーナリストであるマリア・ヒメナ・デュサンは、コロンビア史上決定的に重要な時期について信頼でき感嘆すべき考察を行った著書『死のビート』の中で、コカイン・カルテルが準軍組織死の部隊を生み出した経緯、そして彼女の姉がどのようにして準軍組織に処刑されたかを書いている。デュサンの本について、ある批評家は、「それを読むには鎧甲が必要だ」と述べた。『ニューズウィーク』誌2002年2月18日号で、スティーブン・アンブラスはコロンビアの準軍組織によるテロ行為についてのぞっとするような考察を行い、「パラ(準軍組織)が影響力を広げているあいだ、政府はそれを止めようとできなかったか、あるいはしようと欲しなかった」と結論している。
こうした結果、輝かしい嘘の背後にある真実を秘密にしておくことはもはやできなくなった。コロンビア軍は準軍組織の悪党と関係を持っている。軍は準軍組織にチェックポイントを通過させ、情報や資源を提供して共通の敵であるゲリラと戦わせているのである。これがコロンビアの癌の根元である。そして今や名を知られた準軍組織死の部隊の残忍な指導者が中心に踊り出、コロンビアの長引く内戦にさらなる血にまみれた時代をもたらすことを約束したのである。ちょうど先週、サルバトレ・マンクソは、10年前は850人にすぎなかった自分の部隊は今や14000人の殺人者を擁するようになったと誇らしげに述べた。さらに、これから部隊を倍に増やす計画があるとも。アメリカ人たちは、死の部隊の意図を誤解すべきではない。彼らは殺人マシンなのである。
ニューヨークタイムズ紙でさえ、1月21日の社説で、準軍組織死の部隊がコロンビアにおける暴力の8割を行っていると報告した。コロンビアの恐怖は、いまや、それにより1時間に平均39名が国を逃げ出すまでになっている。コロンビア人権追放相談局(Colombia's Human Rights and Displacement Consultancy:CODHES)によると、2001年に341925名のコロンビア人が家を追われた。さらに13527人のコロンビア人が昨2001年、隣接するエクアドル、ベネスエラ、パナマに越境した。ここ数年で、200万もの人々が暴力にあふれた地方部を逃れ、大都市の貧困地帯に逃げてきた。暴力が激化する中で、こうした人々の数はさらに増えることが予想される。
これだけでも十分ではないかのように、右翼反ゲリラ大統領候補のアルバロ・ウリベ・ベレスが5月に予定されている大統領選挙の3ヶ月前である現在有利とされており、1991年の憲法改定以来の投票の第一ラウンドで勝利する最初の候補となるかも知れないのである。ウリベ・ベレスは、雄弁で、ゲリラが降伏しないならば、コロンビアの大規模な陸・海・空軍と国家警察をゲリラ撲滅に投入すると国民に約束している。
こうしたさなかに、ブッシュ政権はコロンビア内戦への米国の軍事関与を増大させる提案を行った。ホワイトハウスは、対麻薬から対ゲリラ戦略を想定した政策に決定的に切り替えている。
2月14日付セント・ペテルスブルグ・タイムズ紙は、「米国政府は議会に対し、来年の予算として、ヘリコプター、通信機器及びカニョ・リモン(石油)パイプラインを守るコロンビア部隊の訓練のために9800万ドルを要求した。500マイルに及ぶ(カニョ・リモン)パイプラインは、コロンビア国営石油会社と米国の石油大手オクシデンタル石油が共同で運営している。米国がそのような使命で兵士を訓練することは、ゲリラたちに、我々がコロンビアにいるのは資源を搾取するためだということについて視覚的な理解の支援を与えるようなものである。ワシントンは、特に対立が軍事的に激化し泥沼化している中では特に、こうした見方を広めるべきではない」と述べている。同記事はまた、功利的に、「コロンビア治安部隊との関係を強化することは準軍組織を強化することになる」とも述べている。
ワシントン・タイムズ紙が、最近の米国の諜報報告を暴露したときに、おそらくは、ブッシュ政権の真の意図をも明らかにしていたと考えられる。報告は、「コロンビア最大のゲリラ指導者たちは先月のサミットで、コロンビアの民主的に選出された政府を攻撃的に転覆することで合意した」と述べているのである。この記事は、何故、政府の誰一人として、西半球最悪の人権危機を終わらせるために何かするようコロンビア政府に要求しないのかの説明となっているかもしれない。コロンビア政府の人権状況を批判している唯一の人間は、ボゴタの米国大使アン・W・パターソンである。
2002年4月12日、ベネスエラのクーデターを支援してきたのはブッシュ政権でした。数日で政権の座に再び戻ったウーゴ・チャベスは、不法に選出されたブッシュと違い、正当に民主的に選出された大統領でしたが・・・
コロンビアの人権状況は最悪の事態になりつつある。コロンビア政府は、既に米国の納税者から13億ドルを受け取っており、コリン・パウェルがボゴタが人権侵害を阻止できなかったとして今月末までに支援停止を決定しない限り、さらに6億250万ドルを受け取るのである。
それゆえ、ブッシュ政権は、コロンビアにおける準軍組織のテロキャンペーンを激化させることも阻止することもできるという地位にいることになる。ブッシュ政権がコロンビア軍を綺麗にするためにボゴタに圧力をかけない決断をするならば、ホワイトハウスは公式に、コロンビアの嘘に砂糖をまぶすことになる。さらに、西半球最悪の人権侵害をそうして否定することは、ジョージ・W・ブッシュ大統領がコロンビアに対する議会の条件を無視して、コロンビアの残忍な準軍組織死の部隊の虐殺場に米国納税者の税金を不法につぎ込むことを意味する。
そして、こうした事態で、FARCがパストラナ政府に準軍組織を解体させるよう要求し、私有化を止め、米国アドバイザ全員をコロンビアから追い出すよう要求している中で、コロンビアは頭から地獄に飛び込みつつあり、そして輝ける嘘がさらに広まる可能性が高い。
バート・ルイスはコロンビアン=アメリカン協会の議長で、Colombian Civil Warの著者。彼は米国海兵隊でベトナムに二度兵役についた。