コロンビア:準軍組織「解散」は戦略的計画

2002年7月19日
カナダ・コロンビア連帯キャンペーン
原文
概要:
 コロンビアのゲリラに共感を持つと見なされた一般市民に対する虐殺を好むことで悪名高い、 準軍組織コロンビア自衛軍連合(AUC)は、創設指導者たちにより、2002年7月18日、 解散された。けれども、この解散は、8月7日に発足した新政権との政治的交渉のために、 組織イメージを刷新するための戦略的決断である可能性が高い。

コロンビアの準軍組織、コロンビア自衛軍連合(AUC)は、2002年7月8日、 同組織のウェブページに公開した、 創設時からの指導者カルロス・カスタニョとサルバトレ・マンクソの署名入りの短い声明により、 解散を表明した。声明は、AUCが解散するのは、その構成グループの中に、 麻薬商人が「深く入り込んでいる」グループがあり、 「そのアイデンティティと原則を失った」からであるとしている。

けれども、AUCを解散するという指導者カスタニョとマンクソの動きは、 コロンビアのゲリラとそれを支持する市民に対する攻撃を軽減することにはならないだろう。 そうではなく、解散は、コロンビア準軍組織のいくつか −たとえばカスタニョ自身が率いるコルドバ農民自衛軍のような組織−が、 準軍組織の悪いイメージを刷新し、 8月7日に政権につく新大統領アレヴァロ・ウリベ・ベレスとの政治交渉を促すための、 戦略的行動である。

AUCの解散の1週間前には、カスタニョが、 2年前にベネスエラで武装した非正規部隊に拉致され誘拐されたベネスエラのビジネスマン、 リチャード・ブールトンが、 広く信じられていたようにコロンビア革命軍(FARC)によってではなく、 AUCの属する準軍組織の一つによりメタ地方で拘束されていることが発表されていた。

実際、カスタニョは、1996年に彼が、コロンビア各地の地域的準軍組織を集め、 戦略的・政治的同盟として結成したAUC解散を、 AUCのならず者メンバーとカスタニョが呼ぶものによるブールトン誘拐に結びつけている。 けれども、この1年、カスタニョは、 麻薬貿易をはじめとする犯罪行為に関与していることが法的に暴かれたAUCの同僚たちから、 距離を取ろうと試みていた。ブールトンが準軍組織により拘束されているという暴露は、 カスタニョの決定を早めたのである。

カスタニョもマンクソも、 自分たちの活動にAUCの名前を使い続ける組織があるかも知れないと警告している。 彼らは、別の名前で新たな全国的準軍組織を結成すると約束している。この新組織は、 集権化された指令系統をもち、「正直なコロンビア人たちが代表され守られていると感じる」 よう「はっきりとした原則」をもつとされる。彼らはまた、この新たな準軍組織は、 麻薬貿易や誘拐をはじめとする犯罪行為には関与しないと示唆している。

AUCの公式解散は、少なくとも3つの重要な帰結をもたらす可能性がある。 第一は、コロンビアの暴力が今よりもいっそう激化する可能性が高いということである。 というのも、中央からの指令がなくなった地域的準軍組織の中には、 今まで以上に頻繁にさらに残虐な人権侵害を行うものが出てくるかも知れないからである。

また、新たに結成されるという準軍組織は、ウリベと何らかの調整をとり、政治的正当性を得て、 FARCおよび民族解放軍(ELN)との今後の戦争において、 もっと組織化され調整された役割を担うかも知れない。 ウリベは、特に政府が永続的プレゼンスを持たず、コロンビア軍の力が弱い地域で、 地元の自衛軍を組織したいと示唆していた。

最後に、この新たな準軍組織は、これまでAUCのパートナーであった地方の他の準軍組織、 たとえばヘルナン・ヒラルド・セルナが率いるシエラ・ネバダ・デ・サンタ・マリア地方の組織などに対し、 攻撃を仕掛ける可能性がある。 エル・ティエンポ紙が7月19日に報道したところによると、ヒラルド・セルナは、 「何百キロものコカイン」を米国に輸出したとされることで、米国連邦政府により起訴されている。 大統領選挙の際、 1990年代半ばにアンティオキア州知事だったときに準軍組織と結びついていたという批判を受けていたウリベは、AUC解散の宣言に対し直接何らの反応も示していない。

ウリベに対する批判は証明されたわけではないが、カスタニョと他の準軍組織指導者たちは、 大統領選挙キャンペーン時に、ウリベを公式に支持し、いくつかの地域では、 有権者に対し、ウリベに投票しなければ死の報復があると脅迫しさえしていた。 2002年5月に、カスタニョをはじめとするAUCの指導者たちは、AUCが、 コロンビア全体で、 元ゲリラや軍人を含む11000人以上の高度に武装した兵士を擁していると主張していた。 AUCが解散されたとはいえ、準軍組織の兵士数は、 特にウリベがキャンペーン時に約束した地方文民民兵をコロンビア全土で創設するという約束を実行するならば、 近い将来、増え続けるものと考えられる。


  益岡賢 2002年8月24日

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