お話/都 裕史さん(米軍基地反対運動を通して沖縄と韓国民衆の連帯を目指す会)
1998年11月21日愛知県中小企業センターにて
私は、日本生まれの韓国人です。韓国と沖縄で米軍基地に反対する運動をしている人々との交流の窓口となってきました。
韓国と米軍と日本は、実質的に一体となって機能することは間違いないと思います。ガイドラインも周辺事態法もすでに日米の枠をとっくに超えています。韓国と日本、韓国とアメリカの関係を抜きにしては語れない内容を含んでいます。
私は今年41歳ですが、民族運動を始めたのは1976年です。当時ガイドラインとか日米の作戦机上演習ということがクローズアップされていて、先輩から「今、日本では騒いでいるが下火になっていく。どんどんぬるま湯につけられていって気がついたときにはどうしようもなくなっている」と言われましたが、その通りになっています。
昨年「新ガイドライン」が出たときは「戦争マニュアル」と訳した方がいいという声もありましたが従来の安保の枠組みをはっきりと超えています。
自衛隊のハードウェアにしても今では『おおすみ』や『ぶんご』やイージス艦など、日本の大陸棚をちょっと防衛するというような規模ではない。ホバークラフトを配備した『おおすみ』は、自衛隊ではものを運ぶ輸送船になっていますが、世界の常識では完全な強襲揚陸艦です。ミニ空母です。『ぶんご』は従来の掃海艇よりも遠距離作業を想定した掃海母艦です。専守防衛といったものではない。新ガイドラインが発表される前に、日本政府はすでにこれらを作っている。
昨年、小樽港にインディペンデンスが入りました。海上保安庁にファックス一つではいる。札幌のススキノで米軍を遊ばせるとき、空母につながる電話線をNTTに引かせる。出てくるゴミや糞尿の始末を市の職員や民間業者にやらせる。130トンの水を汲んだそうです。総額1700万円、これは日本国民の税金です。
このときの司令官が「朝鮮半島有事の際は、インディペンデンスとキティホークの二つの空母が真っ先に派遣されることになっている」と答えています。自衛隊ははっきりと朝鮮半島に向いています。世界最大、最強の米軍と共同行動をとるということを明文化する必要がある。さらに北朝鮮は大変「やばい」国であると日本国民をマインドコントロールしなければなりません。
アジアから見れば、日本の持つプルトニウムや世界第3位の軍事費、軍備だけで充分脅威です。あるかないかわからなかった一発の核爆弾の件でもっとも被害にあったのはチマチョゴリを着た女性でした。197件起きて犯人逮捕は2件程度。蔑視は続いていますが。、今はもう「敵視」です。「テポドン」についても、ミサイルや人工衛星の専門家が見ればわかると言うことですから専門家が出てきてきちんと説明してほしい。インターネットなどで「北朝鮮、かかってこい。海の藻屑にしてやる」とか「武士道をなめとんなよ」などという猛烈な差別発言が飛び交っています。国家政策としての朝鮮蔑視は変わっていません。
韓米安保には、韓国駐留の目的が乗っていません。1950年の朝鮮戦争は7月に休戦して、今でも交戦状態です。米軍は沖縄と同様に土地を勝手に基地にしていきました。96カ所ある米軍施設の約半分が旧日本軍の施設で、日本軍の武装解除と同時に米軍が基地にしてしまった。
韓国軍の作戦司令権は米軍が持っています。平時指揮権だけ韓国に戻りましたが、戦争が始まったら韓国軍を動かすのに米軍の指令がいります。これは当時の李承晩大統領が大田協定を結んで米軍に譲ったのです。地位協定は日本より遅れた。米国はベトナム戦争に韓国兵を送ることと戦後補償を何もやっていなかった日本と日韓条約を結べという条件を出して地位協定を結んだのです。アメリカの恫喝で日本の植民地精算は有償無償たった8億ドル。
韓国では行政協定と呼んでいる地位協定ですが、米軍が必要やと言えば土地は取り上げられて無期限無償の供与地となります。この供与地がどこにどれだけあるのか、韓国国防省でもはっきりとつかめていない。
米軍犯罪ですが、この写真は92年に起きたものです。女性の性器にコーラのビン、肛門に傘の柄を差し込まれて米軍に殺されました。直視できないです。毎年一人ぐらいずつ女性が殺され、今年も1月に一人殺されました。韓国では、たとえ起訴されても拘束も捜査もできませんし裁判にもっていくまでが困難です。泣き寝入りです。日本の思いやり予算も問題ですが韓国では防衛分担特別協定を今まで3回結ばされています。91年、ベルリンの壁が崩れて冷戦が終わった年に、米軍の駐屯維持費を増額せよと言ってきた。条約上は駐屯国が出すようになっているのを、運用上変えていく。
沖縄の嘉手納基地は極東最大の基地と言われ、米国外では補修能力が最大らしいです。湾岸に出かけて故障した飛行機はすべて嘉手納で修理している。韓国の梅香里という爆撃演習基地では不発弾がごろごろしているところで子供が遊んでいます。F15が韓国で演習をやっています。米軍に国境は全然ない。
韓国と日本の意識のズレも大きい。韓国の反基地運動をしている人々が日本の平和運動をしている人たちと交流するのに異論があった。米軍がいなくなればきっと日本は自衛隊を増強してアジアに攻め込んでくる。こういう意識が厳然とあります。テポドンについても、韓国ではミサイルだ人工衛星だという両方で「たいしたことやる」と拍手した。軍事的対立より民族意識が勝っている。天皇の訪韓についても5割以上は反対です。韓日友好といっても韓日民衆レベルでは相当の意識のズレがあります。細川さんや村山さんが謝ったからええやないかという意見がある限り、絶対謝っていないとアジアの人はみます。昔のことを謝れないのは、今も昔と同じようなことを形を変えてやろうとしているからだという思いです。「慰安婦」問題でも、中国侵略でも首相がどれだけ謝っても、何か月後かには閣僚やらがひっくり返してしまう。日本の政府を信用できません。
日本全体が「自由主義史観」に代表されるようになっていくと終わりです。過去の話はもういい、それでもごちゃごちゃ言うのであれば新しい日本の力を見せたろか・・・こう流れていっているように思われます。
みなさんには失礼かもしれませんが、私は、北海道から鹿児島まで平和運動をしている人と百回会うより、沖縄の人と一回会ったほうがパワーになるかもしれないと言っています。そのくらい沖縄の立場と現状を日本の人はわかっていないと思います。沖縄は日本の中で分断され統治されていると思います。
韓国と沖縄の交流には二つの視点があります。一つは、アメリカの戦略下で同次元的に置かれていること。もう一つは自分のところの政府からも抑圧され差別され疎外されている構造が同じであること。
沖縄は県民所得が低く生活水準が悪くて失業率は本土の二倍。沖縄開発予算は土建ばかり。米軍基地を押しつける。これを日本政府がやっている。韓国もまた歴代の軍事政権によって軍事増強され、アメリカ戦略の犠牲となってきた。政府が民衆の敵になっています。
今年五月に普天馬基地での人間の鎖をした時、周辺事態法などで意見交換をしました。韓国の運動家たちは「日本でこんな危険な動向が進んでいるなんて知らなかった」とショックを受けていました。知った瞬間から韓国の人のほうが危機感が強いです。韓国は自衛隊に攻められる側です。砲弾を撃ち込まれる側ですから。周辺事態法は日本国民が法的にも米軍と共同行動をとって、強制的に動員されるという法律ですからアジアから見れば、また日本から鉄砲弾が飛んでくる、それ以外のなにものでもない。日本の人たちはこんな大変な問題なのにあまりにもおとなしい。マスコミも意図的に騒いでいない。
世界最強の軍隊相手に喧嘩しようとするわけですから、小さなところからでも確実に、被害を受けている側の交流と連帯と組織化が力になっていかないと、危険な動きには勝てないと思います。
韓米行政協定 | 米独協定 | 米日協定 | |
拘束捜査 | 不可能 | 可能 | 可能 |
検察の上訴権 | 制限 | 規定なし | 規定なし |
公務判断 | 米軍将校・高級指揮官 | −−− | 日本法院 |
専属裁判権放棄 | 重要な場合でない限り原則放棄 | 米軍の要請時好意的配慮 | 米軍の要請時好意的配慮 |
刑事裁判の協定適用家族範囲 | 配偶者、子女、父母及びその他の親戚 | 配偶者と子女に限る | その他の親戚除外 |
米軍官吏の参加なき尋問調書の証拠能力 | 不認 | 認定 | 認定 |
警察権行使 | 米軍施設内では、逮捕、押収、捜索などの強制権行使不可能 | 現行犯である場合、令状なしで逮捕、拘禁可能犯罪予防のために米軍の同意なく武器押収可能 | 軍属、米軍家族などの民間人は米軍が逮捕したり米軍施設内にいても日本当局に引き渡し |