申し入れ書(2021年5月22日) |
小牧基地司令 佐藤網夫様
自衛隊員の皆様
愛知県のコロナ感染者数が大阪を上回る日々が続く中での申し入れ行動です。海外に向けた後方支援基地の基地司令や隊員の皆さまに唯一訴える場所として、一方通行ですが、私たちは重視しています。4月の日米共同声明以降、日本がどんどん変化していると強く感じます。トランプ政権、バイデン政権が推し進める「中国包囲網構築」に日本は主体的な参加を追及している、ここに原因があると理解しています。5月、フランス海軍の強襲揚陸艦「トネル」とフリゲート艦「シュルクーフ」が参加し、日本・フランス・オーストラリアが東中国海(東シナ海)で訓練を行い、陸上部隊は九州の霧島演習場での共同訓練を行いました。6月には、イギリスの空母が南中国海(東シナ海)に入り、アメリカ海軍の空母「ドナルドレーガン」を中心とした共同訓練が予定されています。イギリス海軍の空母は、F35Bを搭載し、修理のために名古屋空港に来る計画をしています。日本、アメリカ、ヨーロッパの多国籍部隊による中国包囲網作戦です。この大規模な中国に対する威嚇に対し中国が黙ってみているとは考えられません。
昨年10月、財務省が自衛隊に関する資料を出しました。「自己都合による自衛官の中途退職者は、10年間で約4割増加し、年間4千700人。これは毎年の新規採用者の約3分の1に相当する自衛官が中途退職していることになる」「まず、退職理由をよく分析し、組織文化を含め抜本的対策により、中途退職者の抑制を行うべきだ」と指摘しています。組織文化とは、組織内でのいじめやパワハラ・セクハラが横行し、退職者が増大していると考えられます。
5月19日、各新聞は小牧基地内で後輩隊員に暴力を振るった2等空曹が懲戒処分になったことを報道しました。佐藤網夫基地司令は「服務規律の維持と再発防止に努める」とコメントをしています。先ほど述べた、諸外国との共同訓練の強化・拡大は陸海空自衛隊を問わず一人一人の隊員、特に若い隊員には強いストレスを強制します。相手は実戦経験のある部隊だからです。フランス軍はアフリカで、アメリカ軍は中東やアフリカで今も対テロ作戦」を実行している部隊です。過酷な訓練をすれば若い隊員たちは鍛えられると防衛省や自衛隊幹部は考えています。訓練とは、敵を殺し、制圧する訓練です。それを海外でやることは、日本では禁止されてきたはずです。海外で戦争をしている国の兵士と、禁止されている国の自衛隊員が同格で共同訓練ができるとは考えられません。若い自衛隊員を人間的にダメにすることが共同訓練の目的か、言いたくなります。せめて基地内では隊員同士の助けあいと信頼、上官と部下の信頼がしっかり形成され、いじめやパワハラ・セクハラがないよう、基地司令や上官の皆さまには要請します。
最後に、パレスチナ・イスラエル紛争が続く中、中山泰秀防衛副大臣はツイッターで「私たちの心はイスラエルと共にあります」という軽率で許しがたい発言に強く抗議します。政府内で仕事をする人物の発言は、政府の行動方針と理解されます。日本政府の見解は「イスラエル・パレスチナ双方に最大限の自制を呼びかける」ということです。政府見解を全否定する発言になるという自覚をこの防衛副大臣はなかったと言わざるを得ません。パレスチナ駐日常駐代表は、「人種差別的であり、殺害されたパレスチナ人への敬意を欠いている」と非難しています。パレスチナの人から見ればこの発言の「私たちとは誰れか、日本はイスラエルに連帯をしているという意味か。」と受け止めます。それ以上に、この副大臣には、ジブチの基地で活動をしている陸海の自衛隊に対する想像力が全くありません。今、ジブチ共和国は、北はエリトリア、東はバベルマンデブ海峡の向こうのイエメンといずれの国も紛争をかかえ、イスラム教徒の多い地域であり、パレスチナに強い連帯感を持つ人々です。その真ん中で自衛隊は活動をしていることを深刻に考えれば、「私たちはイスラエルと共にあります」などとは言えるはずがありません。副大臣の発言が中東に拡散すれば、「日本はアメリカと共にイスラエル側につくシグナルか」と受け止められます。
私たちは、中山副大臣の罷免を求めます。基地司令もこの問題で上部に意見具申をしてくださることを強く申し入れます。
2021年5月22日
不戦へのネットワーク