申し入れ書(2021年1月23日) |
小牧基地司令 佐藤網夫様
自衛隊員の皆様
新型コロナの感染拡大が止まっていません。昨年12月には海上自衛隊のトップの海上幕僚長らが会食をして新型コロナウイルスに感染したほか、自衛隊員の皆さんの中でも感染が報告されています。ウイルスは職業や性別、思想信条なども選ばず、国境も越えて感染します。今、日本ももちろんですが、世界中がこの新型コロナの脅威に翻弄されています。経済は停滞し、人々の移動の自由も制限され、生活の破たんと死の恐怖に怯えています。人類は過去何度も、未知のウイルスにより大きな被害を受けてきましたが、医療や科学技術が発達した今でも、ウイルスを克服するということはできていないということです。
このような状況の中、菅内閣が成立して初めての通常国会が始まりました。昨年12月21日に2021年度の予算案が閣議決定をされました。防衛予算は5兆3422億円で、前年比0.5%増、7年連続過去最高を更新しています。また、アメリカからオスプレイやグローバルホークなど高額の兵器を爆買いしたことから第3次補正予算として3867億円も計上されています。
予算の内容の主なものは、航空自衛隊のF2戦闘機の後継で35年の配備をめざす次期戦闘機の開発費が576億円計上され、また、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策として、イージス・システム搭載艦建造に向けた調査費17億円が盛り込まれました。また、陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾(SSM)の射程を将来的に1500キロに延伸のするための開発費に335億円を盛り込み、敵の攻撃の圏外から対処できるスタンド・オフ・ミサイルとするとしています。すでに、政府は2017年にF35戦闘機に搭載するノルウェー製の「JSM」(射程500キロ)と、F15戦闘機に搭載するアメリカ製の「JASSM」「LRASM」(ともに射程900キロ)の取得や、射程が2000キロにも及ぶ新対艦誘導弾の開発にも着手しています。これらの武器や予算を見れば、実質的な「敵基地能力」の保有につながっていることは明らかです。菅政権は、12月18日の「ミサイル阻止に関する新たな方針」についての閣議決定で、敵基地攻撃能力の保有は明記しませんでしたが、武器は持つという私たち市民の目をごまかす姑息なことをやっていると言わざるを得ません。
ミサイル防衛システムを中心とする軍備拡大がアメリカの対中包囲網の政策の一環として行われているということです。そのことは、新たに発足したバイデン政権にも引き継がれています。新政権で国務長官に指名されたブリンケン氏は、トランプ前政権の中国に対する厳しい対応は「正しく、支持する」と語り、対中強硬政策を維持する考えを表明しています。辺野古の新基地建設の推進、自衛隊の南西諸島への自衛隊配備やミサイル防衛システムなど、日米軍事一体化がさらに進むことは確実です。
憲法がありながら、日米同盟を最優先し、「安全保障環境の変化」を呪文のように繰り返し、軍備の拡大や果ては先制攻撃もできる「敵基地能力の保有」まで進んできました。しかし、世界最強の軍事力を保持するアメリカでさえ、ひとたび新型インフルエンザのようなウイルスの前では、第2次世界大戦で失われた命と同じほどの死者が出るのです。
防衛費が増大される中で、社会保障費や医療などには十分な予算が使われてこなかったことが、医療崩壊や失業や自殺者の増加につながっていると言えます。軍備の拡大は、当然のことながら自衛隊員の皆さんの任務の拡大や、戦争への道の可能性も高まってきます。
戦争の危機をもたらす、軍備の拡大、軍事予算の増額ではなく、新型コロナの影響で、日々暮らしに困っている多くの人々に対して保証や、医療に対しての援助などをもっと積極的にやるべきです。
コロナ禍の中で、自衛隊員の皆さんも一市民として声をあげていただくよう、申し入れをいたします。
2021年1月23日
不戦へのネットワーク