不戦へのネットワーク


南スーダン派遣中止を求める申し入れ書(2015年11月14日)

陸上自衛隊 第10師団長 山本頼人様

■ 南スーダン派遣中止を求める申し入れ書

 10年前私たちは、「有事法制反対 ヒピースアクション」として当時の廣瀬清一師団長に,繰返しイラク派遣中止を求める申しれを行いました。
 2005年2月5日 第5次イラク派遣部隊として若い隊員の皆様は、この正門から出発をされました。私たちは、2週間にわたりこの正門前で座り込み行動を行い、当日も「イラクへ行くな。」と申し入れ行動を行いました。今も鮮明に覚えています。
 そして、今月11月5日の中日新聞により守山の10師団が南スーダンへ派遣されることを知りました。
 「なんで守山なんだ。」という思いを禁じ得ませんでした、
 武力行使が前提となる新PKO法の成立、新安保法が施行される来年の3月、現地の南スーダン情勢が危ういなか日本政府は、又も、行ってはいけない所へ10師団の若い隊員たちを送り込むのか。
 そんな事は許されないとの思いで本日申し入れに参りました。

 私たちは次のように考えます。
 11月5日の中日新聞は、隊員の皆様のコメントを記しております。
 「与えられた任務をこなすだけ。」「隊員の考えは関係ない。命令が嫌なら自衛隊に入っていない。」「師団内部の雰囲気は変っていない。」等。
 10年前と同じようなコメントが記されていました。然し、今新安保法制が成立している中、私たちは、この法制が海外で武器の使用ができる、武力行使が出来る法制として戦争法制と言っていますが、10年前と全く違う法体制になってしまったと理解しています。
 しかも内戦下にある南スーダンです。憲法9条に違反しPKO5原則にも違反する命令だと確信しています。隊員の皆様と同じように私たちも10年前と変りません。変ったのは、安倍政権であり、それを支持する勢力です。
 少し長くなりますが、2004年11月27日の第10師団長への申し入れの一部を読み上げます。私たちの基本的な考えです。

 「自衛官も制服を脱げば、私たちと同じ市民であり県民であること。その生命と人権は、私たちと同じように守られねばならないこと。自衛隊法によって『身をもって責務の完遂に努める』ことが求められるとしても、命を投げ出しても良いという法律は何処にもないこと。たとえ、日本が外交問題で急迫する事態になったとしても、それを外交努力によって解決するのが政治家や外交官の責務であり、自衛官の命を投げ出しても良いという発想は、日本国憲法にもどの法律にもないこと。またその発想から、発言や命令が、公務として出されるならば、それは公務員の安全配慮違反になってしまうこと。そして、何よりも大切なことは、制服組であろうとも、本人の命に関わることについては、最大限の自由が保障され、何らその発言により差別的処遇があってはならないこと。
『お国のためには自衛官の多少の犠牲はやむを得ない』と市民や県民が少しでも考えるならば、それが私たち県民、市民に多大な犠牲を伴って跳ね返ってくること。私たちは、日本国憲法下の常識として以上のように考えています。」

 以上が第10師団の第5次部隊としてイラクに出発する2ヶ月前の私たちの基本的考えであり、それは今も変っていません。
 今回の新安保体制に対する国会前や各地での反対の声を上げ続けた人々の基本的な考えであると理解しています。 師団長や隊員の皆様には、是非、基地の外にこのような考えのもとに声を上げ続けている人々が沢山居ることを忘れないでいただきたいです。日本は、憲法上で海外での交戦権は、これを認めていない国なのですから、まず専守防衛を守りきらねばならないと考えています。 
 この観点からも南スーダン派遣は認められません。派遣から派兵への移行期になります。「殺し殺される関係」への突入期となります。
 『これで良いのか。誰が責任取るのか。』と意見を具申していただきたいと切にお願いいたします。

南スーダン現地について

 中谷防衛大臣は。『準備不足のことは、実施できない。安全を保障出来る状態で派遣しなければならない。』と述べています。
 ならば、第8次隊を撤去させ、第9次以降を中止せねばなりません。PKO五原則は、まだ生きています。私たちの想像を超える危険な状態の中で第8次隊は踏ん張っているはずです。2013年末に始まった内戦下で、首都ジュバの治安維持の中心部隊であった隣国のウガンダ軍が11月までに撤退します。力の空白が首都ジュバに生まれます。そこに第9次隊は行くことになります。

 スーダンと自衛隊の関係は、『ダルフール問題』に対し自衛隊のPKO派遣についての調査団をスーダンに送ったことが出発点でした。2008年7月、北海道サミットで福田首相がスーダンへの経済支援とハルツームへの陸自派遣を表明。アメリカに対しアフガニスタンへの自衛隊派遣が出来ない替わりの提案だったと言われています。
 南スーダンが独立した2年後2013年末、今度は南スーダンで大統領派と副大統領派が内戦に入り、自衛隊施設部隊はPKO五原則を無視し撤退しませんでした。

 2013年末の内戦開始の激しさは、ジブチ空港から飛び立った米空軍のCV-22三機にジュバの近くで武装勢力の銃弾119発が命中し、機内の特殊部隊が負傷した事件で良くわかります。 
今エジプトでのロシア機の爆発が注目されていますが、私たちの関心から行けば、11月4日に南スーダンの首都ジュバ空港で離陸直後に墜落したロシア製の貨物機になります。少なくても36人が死亡したと伝えられています。携帯型ミサイルによる墜落説も出ています。 今こそ、中谷大臣に問わねばなりません。

「自衛隊の安全が今、南スーダンで保障されているのですか。」と。「安全を保証できる状態でなければ派遣は出来ない。」と言っている以上、事実上の戦死者が一人も出ていない今こそ、中谷大臣は、第8次隊の撤退命令と第9次隊の派遣中止命令を出さねばなりません。 現地の自衛隊員達は、その仕事ぶりから現地の住民たちの信頼を得ていると報道されています。然し、日本の自衛隊がアメリカ軍と同盟関係にあり、来年から武器の使用が出来る部隊になることが知れわたった瞬間、部隊員達の安全を保証できるなどとは誰にも言えなくなります。今がその分水嶺です。
 安倍首相が、繰返し世界に向かって日米同盟を宣伝している以上、南スーダンの武装勢力もそれを認知することになります。
 大勢の若い隊員達の命を守る事こそが、第10師団長としての責務だと考えます。

 申し入れの最後になりますが、10年前の廣瀬師団長へのお願いと同じお願いを致します。
 南スーダン派遣が中止されず派遣されるとしても部下に対し、政府に対し、国民に対し次の絶対安全宣言をして下さい。
 『部下の命を預かる第10師団長の責務として、第9次派遣隊からは、一人の犠牲者も出さない。全員が無事に帰って来ることを最優先の責務とし、身を以ってその責務に務める。』 
    以上です。

2015年11月14日 不戦へのネットワーク


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