軍用輸送機C2のアラブ首長国連邦(UAE)への輸出断念を求める要請書(2020年10月8日) |
川崎重工業株式会社
代表取締役社長執行役員 橋本康彦様
私たちは、愛知を中心に平和や人権に関する活動をしている、不戦へのネットワークという市民団体です。貴社が製造した軍用輸送機C2をアラブ首長国連邦(UAE)に輸出しないよう、要請するものです。
報道によれば、10月に航空自衛隊岐阜基地において、軍用輸送機C2のアラブ首長国連邦(UAE)への輸出に向けて、未舗装地での離着陸試験を行うとのことです。C2の開発段階では、「不整地離着陸機能」機能を有していなかったものを、「軍事作戦で柔軟に前線への輸送ができるように」という、UAE側の要請で行われるものとのことです。
言うまでもなく、アラブ首長国連邦は、サウジアラビアが主導するイエメン内戦への軍事介入に派兵してきました。5年以上にわたっての内戦とサウジアラビア軍の無差別空爆によって、10万人以上が犠牲になっています。戦闘による犠牲ばかりではなく、医療や保健など社会基盤が悪化し、コレラなどの深刻な感染症被害に見舞われています。国連によると、25万人が飢餓状態にあり、8割にあたる約2410万人が人道的支援を必要としており、「世界最大の人道危機」と警告する事態になっています。軍用輸送機C2の輸出は、紛争に加担するもので、この危機をさらに増長させることになります。紛争当事国への武器輸出を決して認めるわけにはいきません。
日本国憲法9条1項は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とあり、武力による国際紛争の解決を放棄することを明確にしています。この憲法のもとで、海外での紛争に直接的に武力介入をせず、国内で製造される武器輸出をしてきませんでした。しかし、2014年安倍政権により「武器輸出三原則」が撤廃され、新たに「防衛装備移転三原則」に変わった以後、日本製武器の海外輸出の計画が相次いでいます。
アラブ首長国連邦に、軍用輸送機C2の輸出が認められれば、最新装備として初めての輸出となります。平和主義を掲げる、日本国憲法下で公然と、紛争に介入するために武器輸出は明らかに憲法の平和主義に反します。
御社のHPには、カワサキグループミッションとして「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する"Global
Kawasaki"」と書かれています。軍用輸送機を「世界最大の人道危機」にある、紛争当事国に輸出することは、貴社のミッションに反することではないでしょうか。社会的に責任ある企業として、企業利益のみを追求し「死の商人」と言われる企業になるのではなく、世界の人々が平和で豊かに暮らせることを追求する企業活動を行ってください。憲法に反し、紛争を助長する軍用輸送機C2の輸出を断念し、豊かで平和な社会をつくる企業活動を進めるよう、強く要望します。
2020年10月8日
不戦へのネットワーク