ミサイル防衛と連動した危機対策を今後止めることの申し入れ(2009年4月6日/不戦へのネットワーク) |
愛知県知事 神田真秋様
愛知県知事は経済危機による失業者の増大や様々な防災に対する対処など県民の平和で安全な暮らしを守るために努力されていることに敬意を表します。
私たちはこの地域で戦争協力をしてはいけない、憲法の趣旨にそって平和を守ろうと活動している市民の集まりです。平和を願う私たちから見て、ここ数日の愛知県の対応に不安をおぼえましたので以下申し入れします。
昨日(2009年4月5日)、打ち上げられた北朝鮮の人工衛星に関して、愛知県は防災局内に危機対策チームを立ち上げ政府―防衛省の情報を県内自治体にも連絡しました。
今回の騒動について愛知県は飛行コースにもまったく関係ないにもかかわらず、あえて対策チームをつくり政府―防衛省のミサイル防衛騒ぎに加わったことは、まったく不必要な行為であるといいわざるをえません。
今回の事態は地震などの自然災害ではありません。戦争行為という政治の問題なのです。回避することが可能なものです。平和外交を積極的におこなえば回避できるものです。国際条約に基づく通知もなされているものをあくまでミサイルに見立てて敵意をむき出しにしたのは麻生総理と浜田防衛相です。
政府―防衛省は2月末に突然「迎撃」方針を表明し、自衛隊に迎撃命令をだし、イージス艦の派遣とPAC3ミサイルの移動展開を行いました。首都圏、浜松基地のPAC3部隊を大々的に移動させ、マスコミにも公開するということも行いました。2月配備されたばかりの岐阜基地からも機材の一部を移動させました。
大量の軍事車両が日本全国の高速道路や市街地を走り回る姿を見せることで軍事展開を慣れさせる目的が見えてきます。
政府―防衛省は「ミサイル」の日本への落下の危険性は非常に少ないといいながら、万が一に備える、発射失敗に備えると大々的に国民の不安を煽り立てました。関係自治体のみならず、全国の自治体にも危機情報の伝達システムの構築を求めました。
その結果、5日当日の発射時には防災放送や広報車で「空襲警報」発令のような「ミサイル発射」の広報が行われました。まさに「国民保護法」の発動と同じことがおこなわれたのです。
「国民保護法」は「武力攻撃事態」を想定したものですが、なんら「攻撃」も想定されない今回の実質的発動は法に基づかない違法行為であるといえます。
愛知県の対応はこのような戦争体制構築の一環なのです。政府の戦争体制づくりー国民総動員を積極的に支えるものなのです。
今回のミサイル防衛発動はアメリカ以外に唯一ミサイル防衛システムを導入した日本とアメリカの共同実戦訓練と世界に向けたアピールだったのです。
ミサイル防衛発動は訓練にとどまらないものでした。北朝鮮の発射する「ミサイル」を直接標的にしたものであり、迎撃を行えば宣戦布告と同じことであり、戦争状態に突入するといったきわめて危険な行為、軍事行動に日本政府と自衛隊が踏み切ったのです。
実際に北朝鮮は報復の可能性を表明し、極東地域は一触即発の軍事的緊張がたかまったのです。4日の二回の自衛隊「誤報」は戦争突入への極めて高い緊張のなかで生み出されたものなのです。
国民の不安を駆り立てながら、ミサイル防衛の更なる拡大―軍拡路線に政府―防衛省は踏み込もうとしています。東北地方選出自民党国会議員は防衛事務次官にPAC3の東北配備を要請し、次官は配備の方向性を示しました。自民党からは偵察衛星打ち上げが言われ、防衛省は赤外線センサーの研究、開発にはいることを明らかにしました。
今回の事態で生み出されたものは自衛隊の軍拡へのゴーサインと北朝鮮への更なる排外主義的な恐怖感を国民に植え付けるということであり、戦争体制に国民を動員する体制をつくったことです。
空前の経済危機によって三月末から非正規労働者の一層の解雇と正社員も含めた失業問題の拡大による不安の拡大、ロンドンでの金融サミットというこの時期に対外的恐怖をあおっての戦争体制作りと軍拡は60数年前の日本の姿を見るかのようです。
国民の支持がほとんどないに等しい麻生政権によるこのような危険な行為に加担するような今回の愛知県の対応は県民の安全な暮らしを守る立場いって認められるものではありません。
戦争につながるような政策や行為は拒否すべきです。戦争が起こったときの対処をどうこうするのではなく、戦争を日本が起こさないように、平和外交を積極的に推進するよう政府に働きかけるのが県民の安全を第一に考える愛知県の取るべき対応ではないでしょうか。
「国民保護法」の愛知県の実施計画策定を撤回し、今後今回のような政府―防衛省の戦争騒ぎに参加しないことを強く求めます。
戦争準備の軍拡をしないことを政府に求めることを要請します。
以上の内容にあわせて愛知県がすすめる航空宇宙産業推進についても平和を進める観点からの見直しを求めます。
日本の航空宇宙産業売り上げの半分以上が自衛隊装備関係であることは県も承知しているでしょう。さらに北朝鮮の人工衛星打ち上げがミサイル開発と同じというのと同様に日本のロケット産業も世界的常識からみれば大陸間弾道弾開発と実用段階にあるということです。ロケット産業も含めると軍事関連は航空宇宙産業の大半を占めます。かってない経済危機で民間航空関連の成長の展望を見込めないのは明らかです。軍需関連その比率が高まるのは間違いありません。輸出三原則の解除を求める声が防衛産業界から強くおこっているのはそのためです。
ミサイル防衛関連でも配備拡大で潤うのはPAC3生産の三菱重工です。衛星開発では三菱電機も大きな役割をはたします。
愛知県の航空宇宙産業育成方針は民間ジェット機開発を名目としても実際には軍需産業の育成拡大につながるものであり、愛知県をはじめとした東海地方が日本有数の軍需産業地帯になることになります。
平和で安全な暮らしを求める私たちは、戦争に直結する軍需産業の拡大にも反対です。
愛知県は平和で安全な市民生活を保障する自治体として、戦争に関連するような法律や計画の整備に参加しないでください。
憲法9条にそった行政を常におこなうことを強く求めます。
2009年4月6日 不戦へのネットワーク