有事法制反対ピースアクション 不戦へのネットワーク

イラク撤退に際しての申し入れ書(2008年12月23日)

航空自衛隊小牧基地司令
石野次男様
隊員の皆様

 この正門前に、私たちは5年間通い続けました。その間、溝口司令、上田司令、浮須司令、そして石野司令へと申入れを続けてきました。続ける中で、隊員や家族のことを考えざるを得なくなりました。制服を脱げば指令も隊員の皆さんも私たちと同じ市民であり、国民であり、有権者であり、人権を主張できると考えました。たとえ政府の命令であっても、それが皆さんの人権を脅かすものであれば、日本国憲法違反の命令だと理解してきました。交戦権を認められていない自衛隊を戦地に送り続ける非常識が、5年もの長きにわたって続けられました。イラク撤退を切掛けとして、この非常識を常識として認識した日本政府が、同じ憲法違反を繰り返してはならないと考えます。

 司令や隊員の皆さんが、この非常識を自衛隊の常識と受け止め、またそのような教育がまかり通るのであれば、やがて今以上に皆さんの人権と命が脅かされると考えます。反戦・平和の市民運動の中から生まれた次の言葉「憲法9条が自衛官を守っている」という現状認識を共有する立場から本日も申入れを行います。

 明日の式典で、麻生首相は、皆さんを前にして、「日本のため、国際貢献のため、諸君は立派に任務を果たされた。諸君を誇りに思います。」と発言するでしょう。その任務が何であったのか、現地を経験された皆さんが一番よく知っていることでしょう。多国籍軍を統制するアメリカ中央軍の指揮下で、その都合のみの命令を受けてきたのだと思われます。この5年間の実戦経験を政府や防衛省は、何に使うのでしょうか。首相発言の最後は「この5年間の経験を生かし、更に国際平和のために活躍することを期待します。」となるでしょう。しかし、日本の対外政策に軍事的選択の余地などありません。それを明確にしたのが4・17名古屋高裁判決です。戦争をするアメリカ軍の指揮下に入るとは、日本の法律も自衛隊の都合も一切無視され、アメリカ軍の作戦計画の一つの駒にならざるを得ない、という命がけの体験だったと思います。この体験を生かす道は、「海外派兵は二度と行なわない」という選択以外はありません。

 日本政府の非常識な政策を簡単に常識として受け入れるのではなく、皆さんの選択の余地が、日本国憲法下ではまだあると言うことを忘れずにいてもらいたいと切望します。

 新年、1月20日、オバマ新政権が登場します。アフガニスタンを「対テロ戦争」の主戦場と決め、アメリカ兵2万人の増派、ヨーロッパ諸国への増派の要求、そして日本政府に対しても陸自と空自の輸送部隊の派兵をすでに外務省を通じて打診していると言われています。外務省や防衛省がそれに応じ、国会承認が得られれば、また小牧基地が派兵拠点になり、県営空港の滑走路が使われてしまいます。
 私たちは、とても容認できません。旧ソ連に10年間も苦しめられ、更にアメリカによって10年間も苦しめられているアフガニスタンに、アメリカ軍の支援のために自衛隊を派兵するなど容認できません。5年間の苦しかった経験を平和のために活用する道を選択してください。

 石野基地司令の指導方針は「自己責任の追及、改革意識の高揚、誇りを忘れるな」の三つと聞いています。指導に忠実な隊員ほど、海外派兵時に苦しまなければならないと思います。このような隊員を生み出さない選択を強く要望します。

2008年12月23日

有事法制反対ピースアクション


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