航空自衛隊のイラクからの撤退に際しての申し入れ書(2008年12月20日) |
航空自衛隊小牧基地司令
石野次男様
5年にわたる、イラクでの活動を終えて航空自衛隊が撤兵します。私たち、有事法制反対ピースアクションは、この5年間、何度となくこの基地正門前に立ち、防衛大臣や基地司令、また隊員のみなさんに、イラク派兵の不当性を訴え、撤退要求をしてきました。
遅きに失したとはいえ、違憲の派兵をやめることを当然だと思い、今後、政府は不当な命令による派兵を行なわないよう、改めて申し入れます。
そもそも2003年3月に始まった、米英によるイラク攻撃は、「大量破壊兵器がある」「フセイン大統領とアルカイダと関係がある」などの理由で始められましたが、その理由まったくデタラメで不当なものであることをブッシュ大統領さえ認めているところです。不当な理由により、主権国家の政権を武力により転覆するのは明らか侵略行為です。
にもかかわらず、「日米同盟」を最優先し、自衛隊の派兵をもって、その攻撃を支持したのが日本政府です。戦禍が続くイラクを「非戦闘地域」などと規定し、戦後始めて「戦闘地域」へ重武装した陸上自衛隊を派兵し、また、航空自衛隊は、「後方支援活動」というアメリカ軍の物資や兵員を輸送する兵站活動を担いました。
武力による国際紛争の解決を禁止するという憲法9条があるにもかかわらず、日本は自衛隊を派兵し、アメリカの戦争に加担した、ということはまぎれもない事実です。今年4月、名古屋高裁で、航空自衛隊のイラクでの活動は憲法9条1項に違反するという明確な違憲判断を下しました。
この5年間で、イラクでは数十万人の人々が殺され、数百万人の人々が国内外に難民として非難せざるを得ない状況になりました。アメリカ軍の死者数も4200人を上回っています。アフガニスタンでもイラクでも治安はより悪化し、アメリカの強大な軍事力を背景にした、アフガニスタンから始まる、「テロとの戦い」が破綻していることは誰の目にも明らかです。巨額の軍事費の投入により、経済的にも危機に瀕しています。
石野基地司令は、まず、米英のイラク攻撃により、イラクの国内で何が行なわれ、どんな状況になったのか、また、攻撃に加わったアメリカ軍の兵士の多くがイラクで何をしたのかをきちって見てほしいと思います。
2003年に半年間イラク攻撃に従軍し、アメリカ軍がイラクの人々を虫けらのように殺したり傷つけたりするのを目の当たりにしたことにより、人間としての良心の呵責からカナダに亡命したアメリカ陸軍元上等兵ジョシュア・キーさんの言葉です。
「兵士にとって、軍に対する義務が全てに優先するという考えは誤りだ。兵士が最も優先すべき義務は、我々の心の奥底に横たわる人道に対する義務だ。誰だって善悪はわかる。そして、我々には、人の道から外れずに生きる義務がある。たとえ指導者たちが何と言おうとも」
航空自衛隊の活動が、間接的にではあれ、イラクの人たちを殺す側に加担したことは紛れもない事実です。そのことを改めて私たちは指摘し、このジョシュア・キーさんの言葉の重みを考えていただき、二度と再びこの基地から戦争に加担する派兵をしないことを申し入れます。
2008年12月20日
有事法制反対ピースアクション