有事法制反対ピースアクション 不戦へのネットワーク

申し入れ書(2008年11月22日)

航空自衛隊小牧基地司令 石野次男 様   隊員のみなさまへ

 新聞報道によりますと、防衛省は航空自衛隊の年内イラク撤収にむけ、撤収業務隊をすでに派遣し、クリスマス前にも輸送部隊が帰ってくるとされています。私たちもこの5年間にわたり、この基地前で申し入れを行い、「殺すな、殺されるな、戻れ」と皆さんに訴えてきました。私たちは当初より、私たちと自衛隊の方たちとは「立場や考えかた」が異なっていることは自覚しています。しかし、命を大切に思うという一点では、私たちとみなさんとは、それほどへだたっているとは思えません。わかっていただけると固く信じてきました。その想いがなければこの基地の前に立つことはありません。今日もその想いは変わりません。申し入れをつづけてきた私たちにとっても、航空自衛隊のイラク撤収には万感の想いがあるのです。

 私たちは自衛隊員の皆さんの無事を心より願ってきました。皆さんのご苦労は重々わかっているつもりです。しかし、非礼な言い方かも知れませんが、私たちは、みなさんに、「ご苦労様」と心から言うことはとてもできません。不法・不当に開始された戦争で、あまりに多くのイラクの人たちがむごたらしく殺害されています。多くのアメリカの若者が死にました。日本人青年が殺害されました。人質事件もありました。ブッシュ大統領は金融サミットでの演説の終わりで「グッバイ」と言いました。他人事のように、政治の表舞台から去ろうとするかのようです。怒りをおぼえます。「戦争責任」が追及されなければなりません。イラク戦争はたんなる「失敗」などではありません。ウソから始めた「犯罪」ではないですか? なぜこれほど大勢の人が殺されなければならなかったのでしょうか?

 ブッシュ大統領を支持した小泉、安倍、福田、麻生の政権も「同罪」です。そして、航空自衛隊は4・17名古屋高裁判決が言うように、米軍と一体化しており、言い方を変えれば、「殺す側」に立っていたのです。それを、まちがっても「成功」とか「りっぱな仕事」とは呼ぶことはできません。このことの自覚は、隊員のみなさんは十分お持ちのことと思います。また持っていただかなければ困るのです。みなさんは戦場におられたのわけです。大きな声では他人には言えないようなことも、見聞きされたかも知れません。心に傷を負われた方もおられるかも知れません。私たちは、とても、のんきに「お帰りなさい」とは言えないのです。皆さんのなされた「経験」を、安易に、「誇り」や「キャリア」といった言葉とひきかえにしないでください。それはとても重く、責任をともなった「経験」のはずです。みなさんは、自衛隊のなかで、そして日本社会のなかで、命の尊さ、平和の大切さを、今一番実感されている人たちのはずです。その意味では、田母神俊雄前航空幕僚長に代表されるような、空虚な戦争観への批判は、イラクから帰還されたばかりの皆さん御自身が率先して行っていただきたいと思っています。

 航空自衛隊のイラク派遣は、日本社会にも暗い影をおとしています。イラク派遣は日本をアメリカの戦争へと結びつけてしまいました。米軍再編、アフガニスタンの自衛隊派兵、派兵恒久法制定の動きなどは以前ほど声高に言われないにしても、確実に進展しています。11月17日、この小牧基地のC130が、緊急時を想定した訓練を実施中に、滑走路からはずれるという事故をおこしました。小牧基地は住民を危険にさらしながら、戦争に直結した訓練、非常時訓練を住宅地の真ん中でおこなっているということです。いったいみなさんはどちらの方を見て、日々の訓練をなされているのでしょうか? 住民の安全でしょうか? それともアメリカや政府の「要請」でしょうか? この事件は、今、日本社会がおかれている現状を象徴していると思われます。

 自衛隊、私たち、そしてこの日本、イラク戦争に参加したことで、大きく変わろうとしているように思われます。私たちが皆さんに、心よりご苦労様と言えるのは、皆さんがイラクでの戦争の経験の真実を語られ、それを平和のために活かされようと努力をはじめられたときだと思っています。きびしい言い方になりましたが、これは私たち自身にむけた決意でもあります。
航空自衛隊の隊員の皆さんの、イラクでの経験が、真に活かされるよう努力してください。1日もはやく撤収業務隊をふくめた全隊員がイラクから引き上げてください。以上申し入れをします。

2008年11月22日        有事法制反対ピースアクション


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