浜松基地へのPAC3配備中止の申し入れ(2008年5月31日:不戦へのネットワーク) |
PAC3の配備が浜松基地ではじまりました。計画を前倒し本年中に中部地区への配備を行うとの防衛省の発表もありました。
浜松基地への配備は5月14日の管制装置などが搬入され、11月に完了予定とされています。
私たちは愛知県などで小牧基地などの自衛隊海外派兵拡大強化に反対の運動をしている市民団体です。今回のPAC3配備はこの地域の戦争体制のさらなる強化です。私たちは見過ごすことができません。今回の配備に強く抗議し、即時中止を求めます。
PAC3はミサイル迎撃のために配備されると説明しています。しかし、実際にミサイル攻撃に効果がないという事実は、このシステムを運用する皆さん自身が承知していることです。
わずか射程20キロで、一部拠点にしか配備されないPAC3で、日本全土を守りきれないのは自明のことです。自分たちが守りたい拠点のみの防衛システムなのです。
アメリカ軍は日本への配備第一号は嘉手納基地です。沖縄の戦略拠点防衛のためであり、日本の他地域のために移動、運用しないことなどわかりきったことではないでしょうか。
自衛隊のPAC3はいったいなにを守るのでしょうか。東京で新宿御苑への展開訓練がなされたことに示されるように、皇居や政府中枢のみの防衛でしかないのです。浜松をはじめとした中部エリアでの防衛対象は日本有数の航空宇宙分野を中心とした軍需産業の集積地帯と日本の基幹産業ともいえる自動車産業の防衛が第一の目的ではありませんか。さらに浜松基地のAWACS、小牧基地のC130、空中給油機など航空自衛隊の海外派兵拠点防衛が目的でしょう。
PAC3の問題は専守防衛の目的にはならない、むしろ戦争誘発システムです。PAC3は射程距離の短さからわかるように、配備基地においておくだけではやくにたちません。防御対象の直近に移動することが前提です。移動も日本への攻撃ミサイルが発射されたことが確認されてからでは遅すぎます。間に合いません。ミサイルが発射される可能性があると判断したときに移動配備することが必要なのです。その判断は恣意的なものです。したがってPAC3の移動配備がなされ迎撃体勢が取られると言うことは日本が敵と認定した対象国への宣戦布告にほかならないのです。対象国の意図の確認ができる前の実質的な宣戦布告−戦争準備は戦争誘発以外の何ものでもありません。
戦争誘発のシステムであるPAC3の導入は東アジアの軍事的緊張と軍拡競争の拡大になります。ミサイル防衛は北朝鮮のミサイルを口実にしています。政府と防衛省は機会あるごとに今すぐにでも北朝鮮のミサイルが日本に飛んでくるようなことを言っています。
しかし、紆余曲折はありながらも六カ国協議の進展に見られるように東アジアの軍事的緊張の緩和が進んでいます。日本の現状はこうした動きに逆行しています。
韓国や中国、ロシアも日本の軍事力強化には自国軍の強化で対抗します。世界的規模で軍縮がすすめられようとしているときに東アジアでは軍拡競争が拡大するのです。日本が軍拡の口火をきろうとしています。
先日の名古屋高裁の航空自衛隊イラク派遣違憲判決は、憲法9条の制約が現在も生きていることを示しました。PAC3導入などの軍事力強化、拡大の方向は憲法9条を踏みにじる違憲行為そのものです
さらにPAC3は未完成のシステムです。さらなる精度向上を口実にシステム更新を続けることが前提になっているのです。
PAC3の製造は三菱重工がライセンス生産しています。膨大なライセンス料がアメリカ産軍複合体に支払われ、三菱も無期限の利益が約束されているのです。日米をまたいだ産軍複合体の永久的な権益の獲得の手段にほかならないのです。
このような問題は配備、運用される皆さん自身が私たち以上に知っていることだと思います。一部政治家や官僚、自衛隊幹部と軍需産業の癒着と利権獲得の手段が、戦争誘発になるのがPAC3の導入なのです。
浜松基地は浜松市に対して配備完了まで対外発表しないよう申し入れました。防衛省−浜松基地自身が配備のやましさを持っていることの証です。
私たちは防衛省と基地がもっている全ての情報の市民への開示を行うことを求めます。PAC3配備は即時中止を強く求めます。
2008年5月31日 不戦へのネットワーク