【不戦ネット会報47号/2007年9月27日発行】
空中給油機導入3度目の延期 でたらめなボーイングと防衛相対応

 防衛省は七月三十日、空中給油輸送機の納入が来年三月にずれ込むという見通しを発表した。当初予定の二月末から三度目の納入延期になった。給油機なんか配備できないのはいいことだが、通常では考えられないようなでたらめな契約をそのままでいいのだろうか。本来なら、契約取り消すべきではないだろうか。違約金が取扱商社の伊藤忠から支払われているがそれですむ問題ではない。防衛省は伊藤忠には文書、ボーイングには口頭で注意したとするが、実際にはできるだけ早い納入を要請したにすぎない。

 昨年十二月に初飛行に成功し、二月までに納入とボーイングはホームページに発表した。しかし、納入延期については一切沈黙したままだ。(八月三十日、テスト飛行再開を発表)

 納入延期の実態は少しずつ明らかになってきた。最初はボーイングの作業遅れが理由だった。塗装工事の遅れと最も重要な給油ブームの新システムの安定性のための地上実験の遅れだ。(一方でボーイングは給油ブームの開発完了と空中給油実験の成功を発表していた。実際には終了していなかったのだ。
ボーイングと防衛省は嘘をついていたことになる)

 しかしそれだけではなかった。機体の安全性にかかわる実験に合格できず、アメリカ連邦航空局の型式証明がとれなかったのだ。主なものは以下の三点だったらしい。@廃油類が排気口に入り込まないことの確認実験に不合格。A運行情報をやり取りするシステムの表示がフリーズする。B照明など夜間給油能力が未実証というものである。本当にこれだけなのか疑問はあるが、明らかに今回のKC‐767という空中給油機の新開発のプロジェクトはまだ中途であるということだ。イタリアと日本向けのプロジェクトをつかって実験をしているという見方はほぼ正しいだろう。

《ボーイングの本当の狙いーアメリカ空軍での大量採用》

 四月三十日、ボーイングはアメリカ空軍へ次期給油機としてKC‐767の採用を正式に提案した。(日本向けの納入の目途がまったくたっていないときにだ!)同時に大々的なキャンペーンをはじめた。ボーイングの軍事部門の工場などがある州でどれだけの経済的利益があがるかというものである。あきらかに各州の政財界を動員して連邦政府への採用圧力をかけるものである。

 アメリカ空軍が採用すればイタリアや日本などと桁違いの数百機のビジネスである。ならば多少(われわれの感覚では巨額)の違約金を払っても、イタリアや日本を利用して実戦的な開発と実証をしたほうがいいということなのか。アメリカの産軍複合体の利害のためには「同盟国」を利用することなどたいした問題ではないのだろう。

 こんなでたらめをゆるしてまで、給油機はいらない。防衛省は契約を破棄すべきだ。一切の非は納入の目途を明らかにできないボーイングにあるのは明らかだ。それとも破棄できないような契約なのだろうか。防衛省幹部と業者の癒着をいわれているが、政府自民党も含めた、軍事利権の網の目があるのだろうか。

 防衛省―政府は契約内容の詳細や実態の情報を全面的に公表しなければならない。

【付録―独自開発の次期輸送機(CX)哨戒機(PX)に欠陥】

 九月初飛行を予定していた次期輸送機。哨戒機の荷重負担で一部が変形する欠陥が判明。水平尾翼や胴体などが変形するというもの。とくにCXは大幅な改修はさけられずに早くても十二月までは飛行できないというもの。

 この両機は日本が独自に同時開発していたもので、共用部分がある。水平尾翼はその一部。実験機の完成もアメリカから輸入したリベットの強度不足が組み立て終了後に発覚し大幅に遅れていた。

 空中輸送機もCX―PXも無理を重ねて導入しなければならないのだろうか。日米産軍複合体の利害の保持と、日本の海外派兵の軍事力増強は必要ないはずだ。小牧基地の基地機能に直接関係するこれらの動向は私たちの生活に密着した問題だ。

(早見)


不戦へのネットワーク 有事法制反対ピースアクション