自衛隊の撤退を求める申し入れ書(2007年6月23日) |
航空自衛隊小牧基地司令 浮須一郎様
隊員の皆様
2007年6月23日
6月20日、参議院本会議で、イラク特措法を2年間延長する法案が可決し、航空自衛隊のクウェート、イラク間の輸送任務は継続されることになりました。何度も基地前に足を運び、栄の街角で市民に訴え、防衛省へも行って久間防衛大臣への申し入れも行ったにも拘らず、延長されてしまいました。残念です。安倍首相は、19日に外交防衛委員会で強行採決をされてことについて、「選挙を前にした会期末はいつもそうなる。やむを得ないと思う」と述べました。イラクの現状を見ず、自衛隊の活動の実態も認識しない、まさに初めから「延長ありき」のこの言葉を皆さんはどのように受け止められるのでしょうか。私たちは、「自衛隊の派兵」という憲法違反を問われている事態に対して「時間切れ」などと誤魔化し、延長を強行した安倍首相を初め、政府与党に対し、強い憤りをおぼえます。
ブッシュ大統領は、イラク研究チームの勧告や議会での決議などを無視して、3万人以上の増派を行い「イラクの治安安定」のための「掃討作戦」を、バグダッドを中心に展開しています。その「成果」は一向に上がっていないどころか、5月の米兵死者は開戦後、3番目に多い127人、開戦以来3500人にもなりました。もちろん、マスコミに報道されない、イラクの人たちの「死」がこの何倍も上回っている事実を忘れるわけにはいきません。このような結果になるのは予想されたことです。この事態の真の原因は、2003年3月に始まった、違法・不当・不正なイラク攻撃開始とその後の、アメリカに有利になるような占領政策の結果が今日の事態を引き越している、ということを忘れてはなりません。そして、自衛隊を派兵したことも航空自衛隊の活動も、このアメリカの戦争と占領政策、そして「掃討作戦」を展開しイラク人を殺すことを支援するための活動だということを改めて認識する必要があります。
私たちは、航空自衛隊の皆さんが、アメリカの戦争に加担するのを望んではいません。私たちもまた、加担をしたくはありません。政府の間違った政策を質すのは私たち主権を持った市民の使命です。
ここで、先頃明らかになった陸上自衛隊情報保全隊による、イラク派遣などに反対する全国の市民団体や、ジャーナリスト、宗教団体などの動向を調査した「情報資料」と「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」調査に触れないわけにはいきません。戦前の憲兵隊の復活を髣髴させるものでした。久間防衛大臣や統幕幕僚長は「調査」の事実を「当然」として開き直り、久間大臣は「全国民が対象」とまで言っています。一体いつから自衛隊が全国民を調査・監視する法律ができたのでしょうか。今日のこの行動も「監視」されているのでしょうか。このことが示すのは、軍事組織が社会の表面に出れば、民主主義は後退するということです。軍は命令のもと、どんな理不尽なことでも従わなければなりません。言論や表現の自由は必要ないどころか、かえって邪魔なものになります。そのような「軍の論理」が最高責任者の防衛大臣や首相から正当なこととして認知される、という恐ろしい時代を感じます。しかし、私たちはそうであっても怯むわけにはいきません。なぜなら、私たちはこの間この基地の前で何度も訴えてきたことは正しいからです。
今日、6月23日は沖縄戦が終結したとされる「慰霊の日」です。20万人余の人たちが、本土防衛の捨石として、国体護持のための時間稼ぎのための戦いとして、過酷な状況の中で命を奪われた沖縄戦の実相こそ、軍隊は住民を守らないどころか、住民を殺すこともある、ということを示しています。
浮須司令様、隊員の皆様、どうか歴史に学んでください。航空自衛隊の活動がイラクの人たちに対し、何をもたらしているのかという事実を直視してください。ベトナム戦争を終結させた一つの力が反戦兵士の活動にあったことを思い起こしてください。自衛隊のイラクでの活動の実態を身をもって体験している皆さんだからこそ、言える言葉があるはずです。どうか、航空自衛隊の即時撤退の意見具申をしてください。私たちも派兵反対の声を引き続き精一杯挙げていきます。
有事法制反対ピースアクション