有事法制反対ピースアクション 不戦へのネットワーク

自衛隊のイラクからの撤退を求める申し入れ書(2007年5月26日)

航空自衛隊小牧基地司令 浮須一郎様
航空自衛隊小牧基地の隊員・家族の皆様

 また1カ月たちました。この1カ月の間に日本の将来を左右する重要な法案が矢継ぎ早に可決成立しています。5月14日に参議院本会議で、「国の交戦権を否定した9条2項」の削除を狙う憲法改正のための「国民投票法案」が、23日に「米軍再編特別措置法」が成立し、海兵隊のグアム島移転では7000億円が使われ、しめて3兆円の日本の税金が注ぎ込まれるといいます。24日には海外派兵先遣隊と言うべき「中央即応連隊新設」の自衛隊法改正案が衆議院安全保障委員会で可決されました。25日に航空自衛隊のイラク派兵を2年延長する「イラク人道復興支援特別措置法改正案」が参議院外交防衛委員会で審議に入り、このままであれば参院本会議で可決成立することになるでしょう。

 憲法施行60年、平和な社会をめざしこの国の人々は働いてきました。自衛隊が先頭に直接することなく、他国の人を殺すことなく、他国の軍隊に自衛隊員が殺されることもなくきました。自衛隊の戦力を問わなければ、交戦権を持たないことと自衛隊の海外派兵がないならばアジアの国々に戦前のような脅威を与えることはありませんでした。

 ここに1991年5月5日の毎日新聞があります。湾岸戦争終結後、海上自衛隊掃海部隊がペルシャ湾の機雷除去に向かう途中、フィリピンのスビックアメリカ海軍基地に一時寄港したときのものです。記事に「フィリピン言論界の重鎮で歴史家のレナト・コンスタンチーノ氏は『海部首相の訪比は掃海艇派遣と関わりがあるがさらなる自衛隊部隊の海外派遣、軍備増強を我々は懸念している。東南アジアにおいて苦い戦争中の記憶はまだ薄れていない』と語り、掃海艇派遣は日本の憲法違反と主張」とあります。

 それから15年後、現在イラクに派遣された航空自衛隊が、隣国クウェートのアリ・アレサレム アメリカ空軍基地からバグダッド空港にアメリカ軍兵士や軍用物資をC130輸送機で運んでいます。このアメリカ軍は2003年3月にイラクを一方的に攻撃し占領しているのです。もし日本型こくから一方的に攻撃され占領されたらどうするのでしょうか。イラクの人々はアメリカ軍の占領に抵抗しています。ナチスヒトラーのフランス占領に対するレジスタンスと同じです。このアメリカ軍のイラク占領を助ける航空自衛隊の輸送任務に対してイラクの人々はどのように見ているのでしょうか。

 新聞報道に代売ると、イラク国民議会の過半数の議員がアメリカ軍主導の多国籍軍のイラク占領に反対し、アメリカ軍にイラクからの撤退を要求しているという。

 イラクのマリキ首相はエジプトで共同通信と単独会見し、航空自衛隊の輸送任務について「今年中にも日本の部隊は必要なくなる」言明し、「日本には経験と技術を生かした文民による支援を求める考えを表明した」と毎日新聞は報じています。

 エーレン・ワタダ アメリカ陸軍中尉は「イラクに派兵され任務に就くことは将来戦争犯罪に問われる」と公然とイラク行きを拒否しています。

 昨年11月7日のアメリカの中間選挙でイラク攻撃・イラク占領が争点となり、ブッシュ大統領のイラク政策をアメリカ国民は受け入れませんでした。

 イギリスのブレア首相はこのイラク攻撃とイラク占領を積極的に推進したがゆえに辞任することになりました。スペイン軍も、オランダ軍も、イタリア軍もイラクからすでに撤退しています。

 ところが、ブッシュ大統領はアメリカ上下両院のイラクからの撤退要求に拒否権を発動して、さらにイラク占領を続ける意向です。安倍首相は自衛隊派遣法ともいうべき「イラク人道復興支援特別措置法」の2年延長を求めています。現憲法下においてもアメリカ軍と一体となって戦争ができるように憲法解釈しようと「集団的自衛権」なる考えを押し出そうともしています。

 ブッシュ大統領も安倍首相も武力・軍隊を信奉しています。しかし、大国アメリカがベトナムで勝利を収めることはできませんでした。同様に、アメリカ軍はこのイラクで一時的には勝てても、将来にわたって勝つことはできません。武力には大きな限界があるからです。

 防衛政務次官をし、郵政大臣を歴任した自民党の箕輪登氏は自衛隊のイラク派兵に対して憲法違反であるとして地元北海道で裁判を起こしました。自衛隊を愛するが故に海外派兵を認めるわけにはいかなかったのです。「謝った権力」に抗う小さな勇気、「謝った権力」に抵抗する行動を呼びかけていました。それに呼応するかのように、全国では5000年を超える人々が10の年で11訴訟団となって自衛隊のイラク派兵に対する裁判を起こしています。

 「平和を守るのに、右も左もない」という言葉を残して、ちょうど1年前の5月に箕輪登さんはなくなりました。

 イラクの空から日本の空に、航空自衛隊員は無事に帰還しなければなりません。
 私たちは政府に航空自衛隊のイラクからの撤退を要求します。航空自衛隊のみなさん、そして家族のみなさんも愛する自衛官が生還できるよう働きかけてください。

〈ノーモア南京〉名古屋の会 事務局
社民党愛知県連合副代表 平山良平


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