不戦へのネットワーク 有事法制反対ピースアクション

【不戦ネット会報46号/2007年4月26日発行】
米軍再編は改憲への一歩 =在日米軍再編推進特措法=

 愛知には米軍基地がない。かつて1990年代はじめまで刈谷市には米軍の依佐美通信所があり、1975年に小学2年生の男の子がこの鉄塔に触り感電死したことや、反対運動が行われていたことを知っている人も今は少ないだろう。沖縄の基地は語られても、岩国や神奈川の基地群のこと、「思いやり予算」という私たちの税金で在日米軍が駐留しているということさえもどれほど人々の意識の中にあるのだろうかと思う。在日米軍基地が、かつて朝鮮戦争やベトナム戦争へ、そして今行われているイラクへの侵略戦争の出撃拠点になっているということの認識もどれほどあるのだろうかと思う。4月12日、衆議院安全保障委員会で強行採決された「在日米軍再編推進特別措置法」への関心の度合いを見るとそう思わざるを得ない。

 「在日米軍再編推進特別措置法」は、2006年5月最終報告が出された「米軍再編」を予算的に推進していく法案です。アメリカの「対テロ戦争」遂行のために、東アジアから中東にかけての「不安定な弧」の地域に対処するために、米軍と自衛隊が共同で任務を遂行できるように再編をするための予算措置を決めるものです。「米軍再編」に関しては、座間への米第一軍団司令部移転、ミサイル防衛、沖縄・名護辺野古沖への新基地建設などなど、このニュースでも取り上げ、学習会なども行ってきました。実質的な「安保条約」の改定・逸脱にもかかわらず、日米安全保障協議会(2+2)で合意され、国会には一度も計られていません。

 この推進法は大きく分けて二つの内容があります。
 一つは、再編の当事者になる自治体に対し、その受け入れ段階に応じて「再編交付金」を出すというものです。これまでも、札束で受け入れを迫るというのは常套手段でしたが、今回は再編を受け入れたところにはお金を出すが、受け入れないところには出さないという露骨やり方です。すでに、住民投票で反対の意思を表明し、市長も受け入れを拒否している岩国市は今年度予算が組めないという事態になっています。(4.14シンポ報告参照)推進法が通れば、関係自治体に対し同じような圧力がかかります。
 二つ目は海兵隊のグアム移転に伴う費用です。「米軍再編」に伴う費用は2兆円とも3兆円とも言われていますが、その中にはグアムの新基地建設費用7100億円が含まれています。その一部を国際協力銀行から融資という形で出すということです。そもそも、この7100億円という金額は、アメリカの言い値であって何の根拠も示されていません。
 更に重要なことは、日本のお金(税金)で国外に始めて基地建設が行われるということです。グアムの先住民チャモロの人たちは基地建設に反対の声を上げています。因みに、グアムは1898年から米海軍の軍政下に置かれ、法的にはアメリカ国内の一部とはみなされていません。大統領の選挙権もなく議会での投票券もないまったくの不平等な状況に置かれています。1950年に軍政がとかれ、米国の市民権が付与されましたが、この不平等な状況はなんら変わっていません。つまり、グアムはアメリカの現代版「植民地」の地位に置かれているところなのです。グアムには、アメリカが沖縄と同じように先住民の土地を取り上げ、アンダーセン空軍基地とアプラ軍港という巨大な基地群を建設しています。そこにさらに海兵隊の移転という基地拡大を行おうとしているのです。加えて言えば、アジア太平洋戦争で、日本がグアムを占領していたことがこの問題の発端なのです。

 沖縄の負担軽減(これ自体もまやかしですが)という名目で、税金を使い、海外に基地を作るという、とんでもない事態が進もうとしています。何の法的根拠のない「思いやり予算」で駐留経費の負担をはじめ、それが今はそれなしには在日米軍を維持できないほどになったことを考えれば、海外版思いやり予算ともいえる今回の推進法の問題点がより浮き彫りになります。

 安倍首相は、26日から訪米し、その後、クウェートなど中東5カ国を訪問し、駐留する空自の激励を行うと報道されています。「従軍慰安婦問題」でアメリカ議会での風当たりが強い中、ブッシュへの土産としてこの法律が使われることも充分考えられます。残された時間は少ないですが、私たちにできることを精一杯やっていきましょう。

(山本)

  ↓参議院安全保障委員会
http://www.sangiin.go.jp/japanese/frameset/fset_b05_01.htm                                 


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