イラクからの航空自衛隊の即時撤退を求める申し入れ書(2006年12月2日不戦へのネットワーク) |
航空自衛隊小牧基地 浮須 一郎様
隊員の皆様
2004年1月17日の雪の日、航空自衛隊の本隊がイラクへ派兵される直前のこの日、私たちはこの小牧基地前で人間の鎖を行い、自衛隊はイラクへ行くなという意思表示をしました。それから3年弱の時間が過ぎますが、残念ながら航空自衛隊は今だ派兵を続け、その任務も当初より更に深く多国籍軍への協力の度合いを強めています。即ち、クウェートからイラク国内に米軍等の武器や兵員を運ぶという兵站活動を行っています。このことは、もはや航空自衛隊が憲法もイラク特措法も違反してイラクの人たちを殺戮することに加担していると言えます。
最近のイラクの情勢は実に悲惨です。多国籍軍の掃討作戦による死傷者はもちろん、宗派対立、宗派内対立も激化し、その死者数は1日100人以上にものぼり、2003年の攻撃開始以来、死者数は一説では65万5千人にも達すると言われています。そもそも、イラク攻撃の理由となった大量破壊兵器の存在もアルカイダとの関係もウソであることが明らかになっています。死ななくてもよい生命が、ブッシュの「テロとの闘い」という虚構のために失われたのです。そのことを既にアメリカ・イギリス・韓国などの人々は気付いています。11月に行われたアメリカの中間選挙ではブッシュ共和党が敗北し、イラク政策が間違っていると選択しました。盟友ブッシュと行動を共にしたイギリスのブレア首相は国内で批判に晒され、来年には退任することが決まっています。隣国韓国も来年末には撤退するとの姿勢を示しています。
日本はどうでしょうか。小泉首相の政策を継承すると発足した安倍政権は、いまだに米英のイラク攻撃の間違いを認めず、自衛隊の派兵を「人道復興支援」と言い続け、自衛隊派兵を正当化しています。11月には、派兵延長を見越した第11次派遣隊をこの小牧基地から飛び立たせました。
私たちは、これ以上イラクの人たちを殺戮するための物資や兵員・武器を輸送するために自衛隊員が小牧基地から行くことを許すわけにはいきません。
航空自衛隊の滑走路は県営名古屋空港の滑走路でもあります。私たちは、人殺しのためにではなく、人々の生活の安定と向上のためにここが使われるようにと、県への申し入れや周辺自治体への働きかけ、周辺住民や市民・県民に訴えてきました。しかし、残念ながら小牧基地に配備されているC130輸送機への空中給油機能の付加や機動衛生隊が配備され、来年2月には空中給油輸送機の配備が決まっています。明らかに基地機能は強化され、常に空の派兵拠点として機能していた小牧基地の更なる強化が行われ様としています。来年初実験飛行が開始されるC1輸送機の後継機である大型輸送機CXの配備も心配されます。私たちは、このあいちの空と大地が、ましてや県営空港の滑走路が戦争をするために使われることを決して望みません。
自衛隊の海外派遣を本来任務とする防衛庁の「省」昇格関連法案が衆議院を通過しました。安倍政権は、その発足から5年以内の改憲を明言し、また、「違憲となる集団的自衛権の行使の事例研究を始める」と集団的自衛権行使容認の姿勢を示唆しています。明らかに、戦地での戦闘行動を多国と共同でやる、つまり戦争をすることを前提とした極めて危険な動きです。
自衛隊員の皆さんの命はもちろん、日本が戦後60数年戦争をせずにきたのは憲法9条があることとそれを守り生かそうという人々のたゆまぬ努力があったからです。イラク・アフガニスタン・パレスチナ・レバノンなど、軍事力で平和を創ろうとするその試みがことごとく破綻をしていることは現実が示しています。12月14日のイラク特措法期限切れはこれまでのイラク政策を見直す絶好の機会です。人が人を殺す、または殺されるという人間として一番おろかな行為、最大の人権侵害である戦争の手助けをもうこれ以上するべきではありません。私たちもこの動きを止めるために精一杯の努力を続けていく所存です。浮須基地司令ならびに隊員の皆様も真の平和のために航空自衛隊のイラクからの撤退を意見具申してくださるよう、要請します。
2006年12月2日
不戦へのネットワーク