■不戦へのネットワーク

一日も早い「イラク撤退」を求める要請書(2006年10月28日)

小牧基地司令 浮須一朗様及び隊員の皆さま

 10月18日、ブッシュ大統領は「今イラクは1968年のベトナムでのテト攻勢にさらされた状況に似ている」と発言しました。11月7日アメリカの中間選挙を前にこう言わざるを得ないほどイラク、とりわけバグダッドは激しい戦闘が続き、駐留米軍も翌19日に、夏から始まっていた「共に前へ進め」と題するバグダッド制圧作戦の失敗を認め、作戦の見直しに着手したと報道されています。事実9月の米兵死者数71人、10月に入り中旬までに78人。このままでは10月だけで100人の死者と1000人を越える負傷者が出ると予想されるほど激しい戦闘が続いていることになります。

 もともとウソの開戦理由で始まった侵略戦争と占領。しかも、この「負けいくさ」になぜ皆様のC130が米兵とその物資を、命をかけて運ばなければならないのか。輸送機が何の防御手段もないことを承知している防衛庁長官は、最も危険なバグダッド空港への輸送をなぜストップできないのか。日本国民はなぜ知らないふりをしているのか。私たちは何の政治力もありませんが、ギリギリの立場に置かれた浮須司令や隊員の皆様、またご家族のことを思うとき、私たちは黙っていられません。日本の社会にまだまっとうな判断力があると信じて日本政府に働きかけ、市民・県民に働きかけ、当事者の皆様に意見表明をしていただきたく、本日もこの正門前にお邪魔しました。

 浮須司令が輸送機のパイロット経験者であることを考えるとき、誰よりもバグダッド空輸作戦の危険性について自覚されていると思います。アメリカ軍は、自国の輸送機の離発着時にはしっかりと周辺の掃討作戦をしますが、多国の輸送機の安全にまで手を回す余裕がありません。2005年1月にバグダッド空港を飛び立った英国軍のC130が撃墜され10人が死亡した原因もそこにあったと言われています。そのことを百も承知でキャリー・ノースアメリカ中央軍司令官は、軍の機関紙の中で「掃討作戦を可能にしているのは航空輸送であり、日本や韓国その他の国の輸送機が重要な役割を担っている」と、ヌケヌケと述べています。作戦の実態は、イラク民間人に対する無差別殺害です。これに命をかけて協力する理由など全くありませんし、とうてい許されることではありません。

 命をかけてイラクの人々を殺害することに協力している―これがC130とクウェートに駐留する200人の隊員の任務になっていると言わざるを得ません。部下の命を守るためにも、イラクの人々の殺害協力をやめるためにも、どうか基地の中から外に向かって発言してください。まだ日本の社会の中には、当事者のまっとうな発言をまっとうに受け止める判断力がある‥と信じています。
しかし、「日米同盟が何よりも大切」という日本政府に引きずられる限り、隊員の中から「空自は捨石であり、米軍に言われたとおりに動くパシリだ」という無責任な諦めを増大させてしまいます。これら双方の積み重ねで海外派兵が当たり前になってしまいます。中日新聞の木村靖記者が「戦争は、行かないやつ等がやりたがる」と書いています。同感です。

 12月14日、イラク特措法の期限切れを前にして、一日も早い撤退に向けて、まずはこの法律の二つの柱である「戦闘地域での活動禁止」条項と「隊員の安全確保に関する義務」条項を徹底することを上部に意見具申していただきたいと、強くお願い致します。2004年9月に、新田原基地にここから転任された溝口司令の次の言葉「日本の海外派遣は、平和時に限られる。アメリカが勝手に始めた戦争に日本はどこまで付き合うのか」−この言葉をどうか尊重してください。

2006年10月28日

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