■有事法制反対ピースアクション

講演会 「新たな基地は作らせない 海にすわる。沖縄・辺野古の心とその闘い」(要旨)2006年10月6日

講演 平良 夏芽さん


 2006年10月6日、辺野古での阻止闘争で中心的な役割を担った平良夏芽さんの講演会を、有事法制反対ピースアクションと日本聖公会中部教区沖縄プロジェクトの共催で行いました。9月25日、キャンプシュワブ内の遺跡調査に対して、名護市教育委員会の車の前に身を投げ出して逮捕・拘留されたという一報が入ったのは、逮捕直後。すぐに心当たりに電話やメールを送り、その日の夕方には緊急の会議。9団体が集まりました。とにかく、抗議文を作り名護署・教育委員会への働きかけをすること、個人でできることもやること、広くこの事実を呼びかけること、緊急の街頭活動を行うことなどを合意し、活動を開始しました。予定をしていたこの集会も当然開催が危ぶまれ、名護署の平良さんからは、とりあえず飛行機の予約をキャンセルして欲しい。6日までの釈放されれば必ず行くという伝言も受けとっていました。私たちは、もし仮に釈放されなかった場合、抗議集会に切り替え開催するという予定でいました。街頭抗議集会を予定していた27日、釈放されたという報告が入ったにも関わらず、栄三越前には約40人の人たちが集まり、沖縄に新たな基地を作らせないことをアピールしました。
 「平良夏芽容疑者です」という自己紹介で始まった講演の要旨を掲載します。尚、講演の詳細は、講演集の準備をしています。平良さんは2006年10月31日付けで「不起訴処分」となり、あらためて今回の逮捕・拘留が不当なものであったことが明白となりました。


【講演要旨】

<辺野古の基地は、軍港目的の新基地建設>

 辺野古に作られようとしている基地は宜野湾市普天間の代替施設、空港ではありません。辺野古に基地を作る計画は、1966年に設計図ができていたもので、日米両政府はその発表のタイミングを狙っていました。
 それが1995年の少女レイプ事件での時で、県民の怒りに対して、普天間基地返還の代わりに新たな基地を作るという発表しました。1966年に辺野古の設計図を作ったのは、米海軍です。辺野古に日米両政府が作ろうとしているのは、軍港建設なんです。(キャンプシュワブの)弾薬庫に直結した、滑走路もついている、空港としても使える軍港を作ろうとしています。

<完全非暴力で基地建設を阻止する闘い>

 今辺野古で行われているのは反対運動ではないんです。阻止行動です。完全非暴力でこの基地建設を阻止するということを現場でやり続けています。私たちがこの基地建設を止めなかったら、沖縄に新しい基地が作られて、その基地から出て行った軍隊によって世界中の多くの子どもたちが殺され続けるのです。
 私たちは約1年海の上で闘ってきました。非暴力と阻止を両立させるには体を張るしかありませんでした。とにかく人殺しの基地を止めなくてはいけない、そういう思いの人たちが闘ってきました。私の母も70を超えていますが、水深5mまで潜れるようになりました。そういう闘いが繰り広げられたんです。
 非暴力は仲間たちと一緒に本当に覚悟をすれば結構貫けるものです。仲間が殴られて気を失って血を流しながら海の上を流れていく。心の中に殺意が芽生えてくることをはっきり感じました。そういう時に、私たちはお互いに声を掛け合って、自分の中の怒りに身を任せたら世界から戦争をなくすことはできない。本当に戦争をなくすためには意地でもこの非暴力を貫かねばいけないんです。平和を創るといいながら暴力を使うのはまったく筋が通らない。何があっても、例え自分たちが殺されても、もっときついのは目の前で仲間が殺されても非暴力を貫くんだ。これは本当に厳しいことでした。
 単に暴力をふるわないだけではなくて、更にもう一歩踏み出しまして、施設局の職員に声をかけることもしました。心と心の繋がりができて、だんだん向こうの作業員が私たちを殴れなくなってきました。船に乗っている作業員が顔なじみの作業員か新しい作業員なのか、新しい作業員が乗っているということは誰かが怪我をするということなんです。そういう思いを持っていつも朝を迎えていました。

<命がかかっている>

 1年闘って海上の基地建設工事が止まったんです。そうしたら10月中旬に沿岸案が発表されたんです。
 辺野古の強さはここからです。めげてしまったら基地が作られるんです。基地が作られたら誰かが殺されるんです。人の命がかかっているんです。本当に自分たちはまず立ち上がらないといけないということを確認し会いました。
 沿岸案と言うのは、66年に立てられた設計図とほとんど同じです。変わったのは何かというと、1本の滑走路がv字型になっただけです。そういう計画が強行されようとしています。

<キャンプシュワブの埋蔵文化財調査>

 キャンプシュワブという米軍基地の中に新しい基地を作ろうとしているわけですが、それを作るために名護市の教育委員会に埋蔵文化財を調査するように命じたわけです。名護市の教育委員会はこの要請に従って調査をしようとしているのが現段階です。
 1982年に同じような埋蔵文化財調査をしたことがあるんです。その時には、たいしたものはありませんでした、という調査で数日で終わっているんです。その地域には、数千年の歴史を持つ文化財がいっぱいあるということがはっきりしているんです。
 というのは、アメリカは文化財保護法というのがあって、これはネイティブアメリカンのお墓であったり文化財を守るために、ネイティブアメリカンが闘ってアメリカに作らせた法律ですけれど、米軍が世界で動く時にははこの法律が適応されるんです。沖縄の文化財にも引っかかってくるんです。だから米軍は前もって調べていて、ここはいじってはならないと分かっているんです。ところが、日本政府はこんなのはどうでもいいと、ここに基地を作りましょうと、日本政府の責任でそこを潰すという計画を立てているんです。
 文化財調査というのは5年10年かかるんです。ところが、本来公開してなされる調査がまったくクローズで、マスコミも入れない中で調査をしようとしています。「重要なものはありませんでした」という調査結果が出てきたときに、基地建設のために法的なステップが一つ終わってしまうと言うことなんです。
 好き好んで船の前や車の前に飛び込んでいるんではないんです。沖縄から出撃した米軍によってイラクで何万人殺されているんですか。イラクのファルージャに行きました。ファルージャの病院に医薬品を届に行きました。戻ってきた一ヵ月後にファルージャでは700人が殺されて、私がクスリを届けたその病院が米軍に攻撃されて占拠されました。キャンプシュワブから出撃した部隊によってです。私たちが基地をなくすことができなかったから、ファルージャの700人は死んだんです。こういう現実をしっかり見ながら、漠然とした平和運動なんか私は考えていないんです。私は平和運動なんかやるつもりはない。具体的に人が殺されていっている現実に立って、これを止めるためにどうしたらいいのか、何をしなければならないのか。もがき苦しみながら完全非暴力で基地建設を止めるためには自分の生身の体を晒すしか方法を見つけられていないんです。
 本当に他の方法があるなら教えていただきたい。安全に穏やかにそれぞれできる方法でやって基地建設を止める方法があるんだったら本当に教えて欲しい。これが私たちの本当に切実な想いです。

<逮捕・拘留>

 名護署の外には、どんどん毎日人が増えていきました。集会をするたびに人が増えていき、多くの人たちがチケットを取って沖縄に駆けつけてくると言う情報がどんどん流れてきました。名護署のファックスは機能停止。電話も機能停止。名護署の職員は眠れない。頼むから早く出て行ってくれといわれて私は釈放されたわけです。本当にそういう意味では、ネットワークの勝利だったと思います。
 釈放され警察署の前でマイクを持って拘留中に聞かれた「あなたは同じ状況が起きた時に同じ事をしますか」という質問に「同じことはしません。もっと激しく闘います」と答えました。私たちは本当にそういうふうに覚悟しました。

<ネットワークと信頼関係を作ること>

 25日以降のことは、予行演習だったと思って下さい。もっともっとネットワークを確立して欲しいです。名古屋で声を上げる、桑名で声を上げるということもとっても大切なことです。そして、全国から抗議の電話やファックスが入るということもものすごく大事なことなんです。
 ネットワークを整理して、日本全国・世界中にいち早く広がるという体制を作るということ。これからは情報戦です。本当に。そういうことが現場で頑張っている者を支えるんだ、ということを思っていて欲しいんです。組織での議論も非常に大事でそれを重んじていかなければなりませんが、それと同時に、緊急のときに誰かが決断をして動くという体制も確立していかないといけない。そういうことだと思います。
 11年間いた桑名教会で、10年くらいたったら教会員・役員の皆さんが「逮捕されたとしても私たちはあなたを守り抜きます。やるべきことをキチンとやってきてください」と言って、現場に送り出してくれるように変わってきました。やっぱり人間関係や組織の中でこれからそういうこと(緊急のこと)を普段から話あっていかないとダメだと思います。

<韓国・フィリピンの闘い>

 韓国の平澤がどんどん襲われつづけています。(米軍基地を平澤の)農村に拡張・移設するという計画が進められています。まさに、沖縄の辺野古みたいな状況です。5月4日に最初の強行があり、数百人の村に7000人の機動隊と国軍、韓国軍が押し寄せ、9月の12日には2万人の機動隊と国軍がこの村を襲い、60の家を叩き潰して帰っていきました。韓国政府は今年中に残っている家は人が住んでいても全部叩き壊してここを米軍基地にすると宣言しています。
 フィリピンではピナツボ火山の噴火以降米軍は撤退したことになっています。なっているというのは、今訓練とか何とかいって実際は戻っているんですが、正式に戻ってくる手続きが進んでいます。実際に米軍が戻ってくるのは地方の島々です。沖縄と同じように酷い目に合い続けてきた島々です。この島に住んでいる人たちが「いやだ!」という声を上げています。いやだというふうに声を上げている人たちがなんと言われているか、「テロリスト」です。昨年だけで55人が殺されました。今年になって私たちが連絡を取っていた牧師が何人も殺されています。これが今のフィリピンの現状です。
 米軍再編と言うのは沖縄の辺野古だけで行われているのではなくて、横須賀とか厚木とか、米軍による世界支配を完成させるかどうかというのが米軍再編なんです。
 15日の機動隊導入は、辺野古の新基地建設反対の運動が起こってから10年目の出来事でした。初めて機動隊が導入されました。安倍総理・防衛庁長官・沖縄担当大臣ともみんなタカ派です。この体制が整った段階で、本当に沖縄は襲われるんだな、私たちは叩き潰されようとしているんだなということを本当に感じました。そのことが具体的に起きているわけです。このことを、ひっくり返すことができるかどうかということは、私たちではどうにもならないです。日本全国、世界の人たちが手をつないでうねりを作っていかないとなんともならないです。そのことを本当にわかって欲しいです。

<知事選について>

 沖縄の県知事選挙がこんど11月19日にあります。与党の候補として、仲井間さんが立候補しています。これに対して、対候補としてほぼ決まっていたのが元読谷村長の山内徳信さんでした。しかし、非常に大きな政治の力が動いて、この人が候補から降りざるを得ない状態になりました。(山内さんは)自分が知事になったら、県知事の権限として県警を動かす。機動隊の力を持ってあなたたちを守り、施設局員たちを逮捕する、といってくださっていました。本当にケンケンガクガクあって糸数けい子さんが候補者として選ばれたんです。
 でも、今沖縄の中で確認していることは、私憤に囚われているときではないと。とにかく選挙に勝つということが大事なことなんだと。やっぱりどうしてもこの選挙は勝たなければなりません。何百年も人殺しの島といわれ続けるのか、それとも本当に平和な島を求めるのか、そのことが問われています。そのことを思いながら、同時に辺野古の現場に立っている私たちは、誰が知事になっても、どういう体制が整ったとしても、私たちのスタンスは変わらないし、変えるわけにはいかない。止めつづけるしかないとういうことを確認しています。

<闘いに備える>

 基地建設を止めるためには技術が必要なんだということを学びました。「私は何もできませんから」と挨拶をされる人が多いんですが、こらからはその挨拶を止めましょう。何も出来ない人は絶対いないんです。何もできませんという挨拶は、何もする気がありませんからということではないですか。日本政府とアメリカ政府という、世界を支配しようとするお金持ちの軍事大国が本気になってそこに米軍基地を作ろうとしているのに、素人の集団ができることをできる範囲でやって本当に止めることができると思いますか。数でもお金でも絶対にかなわないです。でも、本気の心だけは勝つことができます。その本気の心をみんなが持ったらことは動くはずです。

<闘いに備える その2>

 沖縄に知り合いがいる人は、知事選にまず行くように、絶対に棄権しないように、絶対に投票に行くように。もちろん、そこに糸数と書くように、そのことを連絡して下さい。
 日本の各地や世界の各地で平和のための闘いが非常に厳しくなってくると思います。緊急連絡ができる体制作ってください。
 マスコミの人たちと繋がって欲しいです。私たちがネットワークを作っていくことには限界があります。マスコミが動いてくれたら私たちのネットワークにない人たちに情報を発信できるんです。そのためにはマスコミの人たちと信頼関係を作っておくことが非常に大事だし、本当に市民の立場で報道しようとする現場の記者たちを支えるということになります。
 自分が沖縄に駆けつけようとしていたお金を送ってくれた人がいて、それで僕はダイビングの資格と器材をそろえました。やっぱりお金も大事なんです。
 子ども達に話をする時「何をしたらいいのですか」という質問はしないようにと言います。「私もこの学校の先生もみんな失敗をした人たちです。戦争一つ止めることができていない大人たちです。この、戦争一つ止めることができていない大人たちに私たち何をしたらいいんですかと質問をして出てきた答えなんかろくでもないことなんです。失敗した大人たちに聞かないで、自分たちで考えてみてください」と言います。
 私たちは死にたいわけではない。痛い思いをしたいわけではない。止めたいだけです。
 私たちはかなり行き詰まっていますが、今度彼等が動いたらまた機動隊と衝突しながら、逮捕者を出しながら同じことを繰り返さなければいけないのか、それとも他の方法があるのか、そのことを本当に悩みながらケンケンガクガクやっています。昔から沖縄は戦場みたいだといっていますが、沖縄は本当に大変です。フィリピンなどいろいろなところから米軍車両がどんどん沖縄に入ってきて、ナンバープレートをつけないでガンガン走っています。世界各国からきた戦闘機が嘉手納基地で飛んでいます。尋常ではないです。実弾演習もものすごいです。アメリカは恐らく軍事行動を起こす準備を始めています。
 はじめた戦争はまだずっと続いています。でも、新たな戦争前夜なんだと思ってみんなで止めていくことを考えて話し合っていきたいです。

(要旨終わり)


 私たちは、今回の平良夏芽さん逮捕は、改憲を明言して誕生した安倍タカは政権が、改めて本格的に新基地建設を作るという決意の現れの中で起きた弾圧であると確認しました。共和国の核実験にたいしてのマスコミを通じての危機煽りは、経済制裁から周辺事態法の適応、挙句の果ては日本の核武装などということまで出てくるほどです。沖縄では、嘉手納基地へのパトリオットミサイル配備が阻止行動にも関わらず強行され、国内の配備も前倒しされようとしています。
 この臨時国会では、安倍首相が最優先課題に掲げるという教育基本法の「改正」をはじめ、共謀罪・防衛省昇格法案・自衛隊の海外派兵任務を本来任務にする自衛隊法の「改正」などなど重要な法案が審議されています。
 平良さんの提案にあったように、私たちはこの愛知でネットワークを強化するべく、相談会を始めています。そこでは連絡網の確率と、沖縄知事選に向けての支援など今後に向けて話し合いを始めています。人の命がかかっているということを肝に銘じたいと思います。(文責 Y)


■有事法制反対ピースアクション ■不戦へのネットワーク