自衛隊の北方演習に関する抗議と申入書

防衛庁長官 中谷元様

前略

 私たちは、すべての人たちの人権が尊重され、平和に生きることのできる社会をめざして活動している市民グループです。

 私たちは、戦争こそが最大の人権侵害であると思っています。その戦争に地方自治体・民間上げて協力させようとする『周辺事態安全確保法』(1999年5月成立)に反対し、発動をさせないために地域での反戦・反軍隊の活動を続けています。

 ところが、この6月26日、2001年北方機動演習に参加する陸上自衛隊員が名古屋空港を利用して新千歳空港へ移動しました。広島の第13旅団所属の軍人約35名が迷彩服のまま、ものものしい雰囲気の中で隊列を組んで日本航空機に乗り込んだということです。予定では6月28日に香川県善通寺の第二混成団、七月九日には伊丹の中部方面総監部が名古屋空港からそれぞれ新千歳、帯広へと移動すると聞きました。

 もともと北方機動演習は旧ソ連との戦争を想定して北海道へ部隊を集中させたものです。冷戦構造の終結で必然性が失われたにもかかわらず、こうした軍事演習を強化拡大するのは、日本が自ら緊張状態を生み出していることになります。周辺事態の安全をいうのであれば、憲法九条の精神を生かして周辺アジア諸国が脅威や警戒心を抱くことのないような平和外交を優先させるべきではないでしょうか。

 名古屋空港は、自衛隊小牧基地との共用とはいえ日常的には民間機優先の国際空港で,毎日多くの旅行客が利用しています。小牧基地からの移動も可能であるのに、あえて名古屋空港を使用するのは、戦争協力法(「周辺事態法」)の先取りです。

 また、6月22日には、陸上自衛隊第13対戦車隊のトラックとジープなど約30台、自衛隊員約60人が名古屋港から太平洋フェリーで苫小牧へ向かったということです。平和を願う人々の目には、戦車や迷彩服、隊列は異様な光景です。これを通常の風景にしたいという狙いがあるのでしょうが、平和憲法の理念に逆らった大きな誤りです。彼らは、単なる旅客ではありません。移動もまた軍事演習の一部であり、軍事演習に民間施設を利用することを絶対に認めることはできません。

 沖縄の米軍犯罪や事故の歴史を見るまでもなく、軍隊であるがゆえに自衛隊も数々の事件を起こしています。つい最近、北海道の北広島市で航空自衛隊が誤射事件を起こしたばかりです。人々の安全を守ると言っている側が、人々の安全を脅かす存在となっていることを防衛庁は真剣に考える必要があると思います。

 民間空港や港湾を軍隊や軍艦が闊歩する風景が異常でなくなることを深く懸念し、民間の空港や港湾の平和的な利用こそが真の国際友好につながると信じて、貴職に下記のことを申し入れます。

一、自衛隊の軍事演習に、名古屋空港や名古屋港等の民間施設を利用しないでください。

一、民間機や民間船舶を軍事に利用しないでください。

2001年7月4日

不戦へのネットワーク
代表・水田 洋(名古屋大学名誉教授)


不戦ネット・トップページ

不戦ネット一覧

名古屋近辺催し案内