4月9日、石原慎太郎東京都知事は陸上自衛隊の記念行事で、「不法に入国した三国人が凶悪な犯罪を繰り返している」、「大きな災害が起きたときには騒じょう事件すら想定される」、「そういう時には(自衛隊の)みなさんに出動願う」と言い、9月3日には「陸海空の3軍を使って東京を防衛する大演習をやる」と発言しました。この発言はその時には「問題」にされましたが、結局謝罪したり撤回したりするわけでもなく、ウヤムヤのうちにすまされました。
こんなことが許されていいのでしょうか?
このままにしておくことは許されないし、とても危険なことです。
凶悪な少年犯罪の多発に見られる社会不安や経済不安、それに対して一方ではとても情けない政治があります。そのため、強い政治家、強い軍事力、そして強い警察に「期待」が集まる素地が十分にあります。石原知事はこうした「気分」をたくみにとりこもうとしています。現に一定程度の支持が石原発言にあるといわれています。
「交通規制」や「排ガス規制」や「銀行の外形標準課税」のような、懸案となっている問題への対策を強引な形でうちだす一方、重度障害者にたいして、「人格はあるのかねー」などと言いました。あたかも税金のムダ使いのように言います。そして「不法入国した三国人」発言です。石原知事は今の日本を「タガのはずれた日本」と表現します。そのタガはめは少数者を攻撃することで始められました。また「俺は反中国だ」と言い、外にたいしても強さをアピールしています。しかし「南京大虐殺」を否定したこともあり、アジアへの侵略戦争の反省の上に立った誠実な議論とはとても言えません。
森首相は、もうご存じのように、5月15日、神道政治連盟国会議員懇談会の場で「日本の国、まさに天皇を中心とする神の国であるぞということを、国民のみなさんにしっかり承知していただく」という発言をしました。この発言は大きな問題として今度の選挙の争点の一つもなっています。私たちがチラシをまいていても、森首相の発言にたいしては、高校生たちもバカな発言だと言います。しかし、森首相はこの発言の前段で、「昭和の日」を制定したとか、天皇在位10年を御祝いしたとか言っています。今春の小、中、高の学校の卒業式、入学式では君が代の斉唱率と日の丸の掲揚率が飛躍的にあがったといわれます。とくにこれまであまり高くなかった地域で上昇したと言われています。まさに「国民のみなさんにしっかり承知していただいた」結果。つまり強制の結果です。「神の国」は実は今つくりあげられつつあるのです。「神の国」発言で問題になっているのは今の政治そのものです。
石原発言にしろ、森発言にしろ、こんなものが出てくる背後には、社会そのものに時代の閉塞感とでもいうものがあると思います。これに対して、排外的な「愛国心」をてこにして強い政治、軍事、警察力をめざしているようにみえます。しかしそれは日本にとってもアジア諸国にとっても危険なことです。私たちは強い政治を期待するのではなく、私たち自身で物を考え、行動していかなければなりません。困難に立ち向かう力は市民のなかにこそ十分蓄えられていると思います。
何よりもまず、石原知事や森首相の発言にきちんと反対の声をあげていきましょう。
2000年6月11日名古屋・栄公園にて
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