2000.7.22(土)(2019.6.7分離)
サミットの学校は、海の中、みんなで、「IT、IT」と、お遊戯しているよ。
もっとも不様な演技で失笑を買ったのは、もう名前も言いたくない亡国(わがワープロでは「ぼうこく」の一発変換で「某国」が出てこないから、以下、一発で出てくる方で代用する)首相であった。
「失笑を買った」のは本当なのだ!
米軍放送の男性アナウンサーが、沖縄サミットを控えた亡国首相の初メール発信とパソコン特訓中を伝えた後、日本語に訳せば「イヒヒッ」と笑ったのである。
その亡国首相と仲違い中の亡国記者たちは、上記特訓、17日の情報を、いそいそと18日に伝え、翌日の19日には、その首相が任命した「IT戦略会議」の議長、ソニー会長の出井伸之が、「ほほえましいが、……首相に求められるのは……トップダウン」と、これまた、この種の情報技術の先進国アメリカのヴェンチャーが聞いたら、吹き出したくなるような時代錯誤の「注文を付けた」(日経2000.7.20)そうである。これでは、1にも2にも「独創性」を旨とするIT新技術の開発は、夢のまた夢に終り、日本は、アメリカばかりか隣の小国、韓国の後塵を仰ぐことになるであろう。それまた結構なことなのかもしれない。
亡国記者らも自社報道すら読まぬ不勉強の薄味粋がり
しかし、不様だったり時代錯誤だったりするのは、首相や経営者だけではない。日経は衆議院選挙の投票日の2日前の社説で普段の倍の紙面を使って、「政治家はIT革命の先頭に立て」と檄を飛ばした。「本格的な情報技術(IT)政策は出てこない」状況を「不思議な光景」と皮肉っていたが、中身は、ありきたりで、抽象的だった。選挙当日の「視点・争点」では、論説副主幹の肩書きの岡部直明が、「新しい経済と古い政治」と題して、各党の政策について、「米国のゴア副大統領がかつて提示した『情報スーパーハイウェー』のような構想力に欠けていた」と評していたが、これでは、歴史的事実の誤解を生む。
私が「不思議な光景」、いや、ああ、あ、やんなっちゃった、ああ、あ、驚かない!
と呆れ、かつ諦めるのは、これらの大手メディア記者ばかりか、教授などの肩書きで紙面に登場し、悲憤慷慨してみせるアカデミー業者たちの厚顔無知の方なのである。
そのことを実は、すでに私自身が、別途、沖縄サミット開幕、さらには「森首相の依頼を受け、19日に東京に最先端のリーダー十数人に集まってもらい、IT革命のための提言をする予定」(日経2000.7.9「リレー討論/IT革命は成功するか(1)」と語っていたソフトバンク社長、孫正義の大向こうを張って、同日の夜、某大学OBの経営者を中心とする勉強会で、大口を開けて、怪気炎を上げ、語ってしまったのである。
これは本当に「不思議」なようで、まったく「不思議」ではないし、まるで「驚かない」光景なのであるが、すでに表題と小見出しに記した「紙情報」とか「自社報道」とかは、1991年5月21日から6月3日に掛けて、日経産業新聞が10回の連載で要約報道した「米国重要技術報告書/復活へのカルテ]のことなのである。私は、この連載記事を全文転載したレジュメを作り、正味1時間半の講演をした。私は今また、「この連載記事を読まずにITを語ること勿れ」と断ずる。以下、別途、わがホームページで全文公開準備中の連載記事の冒頭のみを紹介する。
(1)総論/譲れない22分野強化
[写真説明]:湾岸戦争で米軍が使用した巡航ミサイル「トマホーク」
ブッシュ大統領は米国が優位を維持すべきハイテク分野・産業を明確にした「国家重要技術」報告書をまとめ、議会に提出した。ホワイトハウスが任命した特別委員会の作成した報告書で、米国にとって重要性の高い22の技術をリストアップし、戦略的な強化を訴えている。
つまり、クリントン政権の副大統領のゴアの「構想」ではなくて、その前のブッシュ政権時代からの産業戦略なのである。10回の連載の内、3回が「情報・通信」で、その冒頭の見出しは「日本がライバル」となっている。この報告書は、明確に日本を主要な仮想敵国とした「大反撃」戦略計画の「はしがき」に相当するのである。
私は、すでにこの連載記事、というよりはアメリカの「国家重要技術報告書/復活へのカルテ」の存在について、『電波メディアの神話』(緑風出版、1994.7.18. p.208)に記した。しかし、以後、関係書、関係記事のどこにも、このアメリカの「必死の巻き返し」報告書についての言及を発見できなかった。「バブル・ニッポン」の弛み様は、ことほど左様なのである。「ノホホン」首相は、その「紙の国」の「酷態」の象徴なのである。