雑誌『憎まれ愚痴』読者の鍼灸

「新聞は他人の声を借りてものをいうという面がありますから…」

少子化問題の日経記事に電話の対話

投稿:萩谷良(2000年)

12月25日の日経夕刊家庭欄に「少子化問題」についての記事が載りました。

少子化対策基本法案/年明けから審議

『生めよ殖やせよ』の発想? 自己決定権に触れず

 少子化論議では女性の自己決定権の視点が抜けている、父親の役割についての論議もない、という内容。それ自体はとても正当です。

 しかし、ここでも、日本が人口を増やしていいのか、という国際的視点と、労働力がほしければ女性、老人、子どもだって使えるではないか、という労働や教育や福祉の視点が欠けているのです。

 父親の役割を言うなら、当然、壮年男子ばかりを集中する今の労働のあり方が問題になるはず。「残業をやめれば260万人の雇用が創出できる」という社会経済生産性本部(旧称日本生産性本部)の試算を記事にしたのは、今年夏の日経でした。

 ものは試しと日経に電話をしました。

 日経の家庭欄はとても内容が充実しているとほめちぎって(事実、うちでは、子どもが日経の家庭欄がいちばんいい、と言うからとっているのです。日経の子どもと女性の問題の取り上げ方は、他紙のような変な情緒性がないから、でもあるようです)、上記のような点を指摘しますと、記者(記事の執筆者とは別の人)は、個人的には賛成なのだと言います。「あなたがそうお考えなら、この記事を書いたはどうなのですか」と聞くと、どうやら、記事を書いた論説委員も、たぶん私の意見に反対ではないだろうとのことです。

 コメのことだって、日本が生産を減らせば、東南アジアやアフリカが飢饉になるという私のついでの話を、その記者は、ごく当然のこととして聞いていました。

 ただ「新聞は他人の声を借りてものをいうという面がありますから、おっしゃるような点がもっと世間に高まれば書けます」とのこと。この日の記事でも、昔ながらの少子化論議の流れを少しでも変えようとしてみているのだ、と言います。ぜひ、国際的視点が必要だということを、日経におおぜいの人から、インターネットとか、そういったもので注文つけて欲しいというのでした。

 きょうの少子化問題の記事の横には、私にとっては昔なつかしい山尾三省氏のエッセイが掲載されていました。ほんの数年前まで、山尾三省と日経なんて、あまりにミスマッチだったのに、世の中は変わったと思います。

 日経の記者はだいたいマジメな人が多いので、たぶん、上記のT記者の応対は信じていいのでしょう。それにしても、もともと財界よりの日経でもこういう話ができるのに、某大新聞は何をしているんでしょうね(あそこの記者の態度が悪いのは、殿様記者H氏に限ったことではありません)。


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