秘書の小部屋
2005.3

  ピンクのドレスでおめかしした秘書ドリ   

春・・・

2005年3月31日(木)晴れ

昨日、社内蟻塚の検分をしていて、親指に思いっきり大きなトゲを刺してしまいました。材木の欠片です。ぶちっと折れたそれは爪の直ぐ下で黒々としています。

拷問シーンによくありますよね、こういうの。爪の間に針を刺す、とかいうの。想像しただけでも気持悪くなる事態が、己の身の上に起きてしまいました。秘書卒倒……してても、誰も介抱してくれません。気を確かに持って引っこ抜きましょう。が、引っこ抜く道具がない。そうこうする間に血が滲んできます。(うわあ、思い出すだけで気持が悪いよお)。

ズキンズキンと痛みが脈打ち始めて、この会社には、とげ抜き一つないのかピンセットの1本もないのかラジオペンチもないのか、と秘書は猛り狂います。道具入れを掻き回しても、出てくるのは金槌やバールやモンキーレンチなどばかりです。さっさと見切りをつけて、秘書はお家に帰ることにしました。

お家には、その類いの道具が引き出し一杯に詰まっていて、消毒用エタノールも化膿止めも真っ赤っかなチンキも絆創膏も睡眠薬もシンナーも気持よくなるオクスリもなんでもあるんです。

ぶち、と引っこ抜いて消毒して一安心。お家が近くでよかった。

ほーっと息をついて秘書は思います。つい数年前まで秘書は、全財産を持ち歩いている、と言われる程荷物の多い女でした。鞄は常に二つです。今でも二つですが、だいぶ軽くなっています。持ち歩くほどの財産はありませんでして、何が重かったのかと言えば、お道具箱を持ち歩いていたのでした。

ハサミにノリに直定規三角定規分度器カッター巻き尺オペラグラス虫眼鏡ピンセット缶切り使い捨てライターミニろうそく計算機タコ糸テープメモセットクリーム針と糸セット氷砂糖一口羊羹乾電池…… そうサバイバルキットとはちょい違うけど、いざという時困らないセットです。用心深い性格なのでした。

それが、いつのまにか、このいい加減な会社の根拠のないお気楽モードにすっかり毒されてしまい、いまや例えて言えば、茨の茂みをすっぽんぽんで歩いている状態。

これは、いけません。早速、先日100円ショップで求めたビニールケースにあれこれ詰め始めます。えーと、昔は電話かけるための10円玉も入れていたけど、その後カードしか使えない電話しかない状況で困ってカードも入れて、でも今は携帯だから、そうだ乾電池の充電器入れとかなきゃ…… 

気が付くと、引っ越し荷物を作ってる気分です。気が滅入ってきました。会社には、この類いのことは、なーんも考えていない御仁が数多棲息しています。なんだか、腹が立って八つ当たりしたくなるのですが、自重自重、秘書は人格円満がウリなのですから、自ら商品価値をさげててはいけません。それにしてもむかつくなあ…… 
(↑秘書に一体何が合ったのでせう)

気晴らしに図書館に行って本を借りて来ました。太平洋戦争関係を物色していましたら、ちょいずれた戦後の写真集がありました。

書名 :貧乏だけど幸せ
副書名:われら日本人昭和25年~35年の実写記録

書名も内容も、心に消毒薬のごとくズキズキと沁みます。あ~ん、秘書の心にトゲがささっているよう。

2005年3月30日(水)晴れ

編集長が携帯を首から下げるようになってから3週間くらいになります。

ケータイ持つ若者をさんざん馬鹿にしおった嫌味なオヤジもいよいよ人並みになったか……と感無量です。

最初は大変でした。このオヤジ殿、操作がわからない、とかのレベルどころでなく、携帯の携帯たる理由を理解しておりませんで、充電器に置きっぱなしでした。掛けたって出ないわけです。

そんなん意味ない、と秘書が毎日お説教した甲斐あって、ようやく持ち歩くようになりましたが、そうなればなったで、別の問題が出現します。

即ち、電車の中では使うなマナーモードにしなさい、と言えば、?が返ってきます。ここんところを押してッ。うん、わかった。

病院では電源を切りなさい。どうやって切る? ここんところを押してッ。うん、わかった。

とにかく首からは下げておりますが、ほんとに分かっているのでしょうか。どれ、と昨日点検をしましたら、オヤジイ~、いつから電源切っとんねん、病院行ったは何日前やねん……

本日、編集長は趣味の裁判にお出かけです。本日は判決だそうです。ああ、そうですか。一区切りついたら、室内蟻塚を撤去しましょうね。どれ、留守の間にちょいと下見を…… 蟻塚がまた増殖しております。そして、崩れそうな塚の横にちらりと覗いているのは、首から下がっている筈のケータイ…… 意味ねえよお……

2005年3月29日(火)雨

お彼岸過ぎても寒いです。少しは洒落っ気をだそうと薄着になったのが間違いでした。すーすーと、薄ら寒いったらありゃしません。秘書の背中と、秘書の財布の中と、どっちが余計冷えてるのでしょう。

さてと、編集長は朝っぱらからどこぞへお出かけしました。この御仁は、喉元を過ぎた途端に熱さを忘れる質(たち)なのですね。関係者を呼びつけてこの世の終わりのような騒ぎをしたのもどこへやら、その後ほんの少々の間しおらしくちんまりしていただけで、また一人で世界を背負って立つべく高揚してまいりまして、まあ、喧しいこと。世界征服友の会でも設立したんですか、といいたいような気配です。

しかし、そんなことはどうだっていいです。

先日田舎に帰った時のことです。実家のトイレのドアは調子悪くてきっちり締まりません。随分前からでしたが、年に何度も使用するわけではない秘書は気づかないふりをしていました。だって、実家の年寄りは、どうせドアを少し開けたまま使うんですもの。曰く「出られなくなったら困る」。って、閉じ込められたことがあるんでしょうか。

が、こう頻繁に実家に出入りするようになりますと、やっぱ秘書は気になります。つい先日なんぞは、沈思黙考している所を、思いっきりお母様に開けられました。何すんねん、ノックくらいせんかい、と思うも、普段はお母様専用のようなトイレなのです。

よっしゃ、ここは秘書が一肌脱いで、人体筋肉標本になって理科室を飾ったる、じゃなかった、艶やかな下着姿になって悩殺したる、じゃない、一肌脱いでお役にたちましょう。

と、近くのホームセンターに行きまして、ドアノブセットを買ってきまして取り替え工事にかかりました。手伝ってやる、と一緒に来ていた同居人が恩着せがましく言います。その物言いに腹を立てるようなケチな秘書ではありません。同居人に内側を持たせ、秘書が外側を持って同時に木ネジを締めました。無事取り付けが済んで、さあ、開けてみい。

わははは。ロックが外れません。ラッチはぴくりともしません。出せっ、と同居人の声がマジになってます。

やなこった、一生入っていろ、と言いたれる秘書。まあ、程度の低い争いだこと。

しかし、お母様に早く直せと切羽詰まった顔で叱られて、せっかく締めたネジをハズしてラッチを抜きます。この段階で同居人は逃げて行きます。当然の反応でしょうな。だいたい取り付け説明書がないのがいけない、とぶつぶつ言いながら再び挑戦する秘書。外側をつけて調整しながら内側をつけて、おお出来ました。

お母様は、非常に不安そうな顔をしております。きっと、秘書のすることが信用出来ないのでしょう。秘書も自分が信用できません。ですので、個室内にドライバを1本置いておくことにしました。

取り外した古いノブやらパッケージやらをゴミ袋にまとめていると、ん?、二つ折りの商品名の紙の裏に取り付け方があるではありませぬか。おおむね合っていたからいいけれど、何で今頃出てくるんでしょうね。

2005年3月28日(月)無情の雨

氷雨が身に沁みますジに沁みます桜は凍えてまして、当初27日予定のお花見は延期。吉祥寺の井の頭公園のすぐ近くにお住まいのお友達が、様子を見に行きましたらば、じぇーんじぇん咲いてなかったそうです。

秘書のお友達は、こんな高級住宅地に一軒家を構えているのです。即ち、秘書とは雲と泥、山のてっぺんと谷底、象とその尻尾についた蚤、ベルーガキャビアとトンブリの実ほども違う、お金持ち。こんなお友達を持って、秘書は幸せなんだか不幸なんだか、よくわかりません。時々お呼ばれしてご馳走が食べられるので、深く考えないことにしませう。

さてと、実は秘書は、余りの金の無さがつくづく嫌になってきたので、こっそりと就職試験を受けたのでした。内職はどうする?憎まれ愚痴社の業務はどうする?って、そんなもの、なんとでもなりますがな。9時から4時まで週休2日でなら、アフターファイブでなんだって出来ますきに。その勤務条件で給料は21万円だってさ。あぶない所だろうって? 違います。れっきとしたお役所だっち。

金稼ぐぞっ。

と面接に臨んだのですが、当日内職の納品に行って思いがけず時間食ってしまい、面接会場まで走るはめになりまして、定刻2分前に、はあはあぜいぜいと駆け込みました。顔は真っ赤っか、頭はボウボウ。心がけの悪い代表みたいなもんです。

が、実はもっととんでもない事態が起きていました。まだ、例のあの全身ひび割れの真っ最中だったものでして、どたどた走ったのがいけなかったのか、その、あの、切れまして出まして、あ~っなんか変だよ、と後で見ましたら、秘書愛用のナニが日の丸模様になっておりました。

ついているんだか、いないんだか。

土曜日に通知が来ました。封筒の薄さを見ただけで結果がわかりました。やっぱなあ…… スーツ着てかなかったもんな。履き易さ最優先のドタ靴だったもんな。化粧してなかったもんな。お昼食べたあと歯を磨いてなかったもんな。面接受けながら(ほんとに受かったら忙しくなり過ぎて困るな)とか考えていたもんな…… 因みに倍率10倍でした。

編集長が近頃、「ホリエモン」の名を口走ります。この浮世離れしたオヤジ様がホリエモンの語源とも言える「ドラえもん」のことをどこまで知っているのか疑問です。

----以下、人様のフンドシ----------------------------

ホリエモンがアニメに フジが報復措置
http://www.f7.dion.ne.jp/~moorend/news/2005022601.html

 ニッポン放送の経営権をめぐってライブドアと争っているフジテレビは26日、今年の春から新番組「ホリエモン」を放送すると発表した。これはライブドアに対するフジ側の報復措置の一環と見られるが、肖像権の問題など、新たな闘争の火種になるとの見方もある。

 新番組「ホリエモン」は、ライブドアの堀江社長をモチーフにしたようなアニメのキャラクターが4次元ポケットから取り出した秘密道具「ライブドア」を武器に、買収工作を繰り返し街の人々をパニックに落としいれるという内容。声優には今年「ドラえもん」を引退することになった大山のぶ代さんを起用する見通し。

 フジテレビは今回の新番組発表に際し、「これはライブドア批判ではない」と繰り返したが、主役のキャラクターが明らかに堀江氏をモチーフにしていることから、ライブドア側は「メディアを私的に利用している」と批判し、今後放送差し止めを申し立てるとしている。

----これは嘘ニュースです---------------------------------------------

2005年3月25日(金)晴れ

頭に花を咲かせているうちに春が通り過ぎていきます。血の池地獄からようやく這い出しましたが、抜け出しても抜け出しても目の前に広がる地獄の重層構造。秘書の因果はマリアナ海溝より深いようです。

お彼岸の連休は世間並みに、ご先祖様の墓参りに行きました。タワシと砥石持参で古い墓石をごしごしごりごりしまして、ご先祖様さぞかし痛かろうな、苔の残骸をむしりとしまして、なんか字がありましたっけ。この次は紙を持ってって、魚拓みたいなものを取ろうということになりました。

世間並みにお坊様にお経をあげていただいて、今回は失点なし。やれやれ。

さて、この度はナニがナニしたもので、秘書はいたくウォシュレットに興味を持ちまして、チラシやらインターネットやら調べまして、自分で取り付けられる機種が2万円台で買えることが分かりまして、「注文するぞっ」と勇んだのですが、念のため物差し片手に個室にこもったところ、あれえ~、狭小住宅は悲しいな、取り付けたら個室に隙間がなくなっちゃいます。残念無念怨念鯰の尻尾。

ま、とにかく人体の修復機能は偉大であることを実感いたしましたので、この話題はこれにてチョン。

ニッポン放送+ライブドア-フジテレビ+ソフトバンク=なんでしょ・・・ オセロゲームみたいです。秘書はオセロも五目並べも、めっちゃ弱いです。考えるのがめんどくさくて、取り敢えず目の前の手しか読まないもので、常にぼろ負けです。同居人にいっつも、「やる気があるのか」と怒られます。(秘書は始めからやりたくないと言ってるのに……)

編集長が、ライブドアがらみの講演をするらしいです。このアナログオヤジ様は何を喋る積もりでしょうか。今、せっせと新聞を読みテレビを視聴しあちこちに電話を掛けインターネット界を徘徊しています。ご興味のある方は是非聞いてやって下さい。トップページにごたごたと案内してあります。亜空間な通信でも偉そうに宣伝しています。

2005年3月17日(木)曇り

秘書は頭が痛いですが、お尻も痛いです。

昔働いていた出版社の社長は、気分にムラのある人でした。一応紳士なのでしょうが、一頃フランス料理店に多く生息していた、不慣れな客とみるや(田舎者め)と全身で表現する給仕のような、慇懃無礼の類いでした。

秘書がキャピキャピしていた頃でしたから、何も知らない馬鹿女と思ったのでしょう。ある日、Samenを知っているかと何食わぬ顔で質問をしてきました。もちろん秘書はニコニコして黙っていました。聞いておきながら、この社長はそれが何であるかは説明しませんでした。馬鹿女をからかって密かに憂さ晴らしをしたのでしょう。

ドイツ語なんぞ知る筈もないと思ったのでしょう。が、馬鹿を馬鹿にするものではありません。馬鹿は馬鹿なりの知恵があるのです。情けない男だな、と開いた口が塞がらなかった当時の秘書でしたが、今から思えば、あっ、それは社長の大好物ですか、ぐらいに答えておけばよかったのかも知れません。

この社長、とかく朝が不機嫌でした。先輩社員が囁いていました。(また、今朝、切れて血が出たんだろ……)

その時は、何だジ主か、と思っただけでしたが、それはこういうことだったのですね。

痛いです。不快です。ロマンチックな気分など、これっぽっちもありません。ぐだぐた抜かす奴らは、片っ端から蹴倒してやりたいと思いつつ、「気」がどんどん抜けて身も心もシワシワ、しぼんだ風船みたいです。

そういう秘書の気持をことごとく逆なでする大明神が我が社内に鎮座まします……

2005年3月14日(月)晴れ

どおも。またプッツンしました。ご期待通り、秘書の道はイバラの道です。人生が辛くって・・・

とまたしても泣き言を並べてばかりでは埒(らち)があきませんな。説明いたしまする。

さる10日、編集長がまたややこしい状態になっておりました。(くるかな?)と思っておりましたら、案の定、夜、お風呂に入ってぬくぬくしていた所を呼び出されましてすっ飛んで行って、救急車にお出でいただいてドライブすることになりました。これが、海岸線をスポーツカーで飛ばしているのなら、隣にいるのが少々不細工な男でも、どんなに胸ときめくことでしょう。ピーポー鳴らしながら雑踏をくぐり抜けるのでは、シャレにもなりませぬ。

編集長、今にも死にそうな顔をして、14日の裁判は延期だ、裁判所に連絡しろだの、ホームページに発表しろだの、思いついたままに言いたい放題をいいます。疲れ果てている秘書としましては、へえへえ、明日やりますきに、今日は帰りますで、と頭が簾(すだれ)状態の素通しです。

で、翌朝早くに、病院の職員の方よりお電話をいただきまして、本日退院ということになるようですが、とにかく病院の方へ来て下さい、とのこと。(またあ)と秘書は内心舌打ちします。思い出して下さい。昨年1年間に何度救急車で病院に運ばれて、搬送先の病院で何があったか。秘書はその度に、米つきバッタやら平身低頭虫やら食い下がり虫やら、いろいろ変身してきました。今度は何になれっちゅうんやっ。

秘書もどどどっと疲れが吹き出しまして、ピキーン、と全身にヒビが入りました。もののたとえじゃなくってホントひび割れたのです。どうにも我慢ならず、薬局にいきまして、(あれっ薬剤師は男の人だよ)と動揺しつつ、ボラギノールを下さいと堂々と口にしている秘書。年を取ると、臆面もなく何でも言えるようになるのですね。

薬剤師さんはとっても親切でした。初めてですか、と聞いて下さり、(全くの初めてではないのですが、この場合、はい、としか言えませんな)、疲れが原因でなることが多いですから、体を休めるように、と指導してくれました。

ほんと、秘書は疲れてるんですっ。それもこれも、言いたい放題のあんの○○○が~。

諸々の事態の結果:本日編集長は証拠書類を詰め込んだカートを引いて、裁判所へお出かけしました。携帯電話を持った若者を、「猿のクーコール」とさんざん揶揄していた御仁ですが、諸々の事態に鑑みて、とうとう携帯電話を首からぶら下げることと相成りました。使い方は秘書が、お猿の学校よろしく教え込んだのですが、果たして使いこなせるでしょうか。お気づきの皆様、電話番号を聞いてやって下さいまし。多分自分の番号を答えられない筈です。

2005年3月9日(水)晴れ

秘書の通勤途中のとあるお家の話です。この冬、寒いのに暗いのに毎晩家の前の道路に盛大に水まきをしております。ばしゃっばしゃっ、とまるで恨みがあるように玄関の中から水を放り出しています。秘書が通りかかった時も、直ぐ後ろでばしゃっ。

少々濡れまして秘書は、(このババア)とガラにもない下品な言葉を口走りそうになりました。が、水まきオバさんが、「こんちくしょうめ」となにやらぶっそうな言葉を憎しみのこもった口調でわめいておりましたゆえ、夫婦喧嘩でもしたのでしょうと、そっとしておいてあげることにしました。

翌日も道路はびしょ濡れ。翌々日もびしょ濡れ。そう思ってみると毎日びしょ濡れ。水をぶちまける現場に遭遇すると、水の放り出し方は尋常ではありません。この家にいったい何があったのでしょうかしら。このお水は何のお水かしら。劇薬でも混じってないかしら。炭疽菌でもまじってないかしら……

日常の中のちょっとした歪みは、人の心に不安とあらぬ妄想を呼び起こします。

2005年3月8日(火)晴れ

田舎での話。ご近所を歩いていると、住宅の間に存在する畑のこんもりふかふかした見るからに肥えた土に猫がたくさん生えています。猫柳じゃなくて猫。まるでキャベツのように地面に丸まってぽっぽっと。家に挟まれて風は遮られ逆に日光は降り注ぎ一種の温室なのでしょう。

通りすがりに猫を見つめたことがありますでしょうか。秘書は年中やります。何故って、これが結構面白いのです。猫を見つめると猫も見つめ返します。こちらが歩いて移動するのを猫の視線はずっと追って来ます。じーっと見つめて首が後ろに回る程動かして胴体はそのままで……体勢に無理がありますなあ、と思っておりましたら、ちょこっと盛り上がった所にいた猫がこけそうになって慌てておりました。わははは。猫見は楽しいです。

2005年3月7日(月)晴れ

秘書が田舎から東京に戻ってくるのは、いつも夜です。お天道様に顔向けできないことばっかりやっているので、闇にまぎれてこそこそと…… 違います。

お母様と晩御飯をいただいてから出てくるのです。一緒に御飯を食べるのは親孝行なのです。なんて感心な秘書。

夜汽車はいいです。ごとごと揺られて、窓の外の盆地には人家の灯りが闇に浮かび、湖の底の宝石のよう、なんて、ついでたらめを申しました。昔の列車はいざ知らず、現在の電車は車内に煌煌と灯りをともして疾走します。窓の外は漆黒ではないけれど一応の闇。となれば窓ガラスは映りの悪い鏡です。じっと、目を凝らせば、己を見つめる己の間抜け面とばっちり視線が合いまして、まあ気恥ずかしいこと。

目の焦点をちょっと動かせば、通路を挟んで向こう側の座席の様子が映ります。ジイ様がいます。靴を脱いで座席であぐらをかいて、読みふけっているのは競馬新聞のよう。この人の人生、きっと楽しいのでしょうね、と意味もなく感じたりします。

もしも座っているのがバア様なら、きっと靴を脱いで座席で正座していることでしょう。秘書は正座したら20秒と持ちませんが、バア様達は足に故障がない限り正座の方が楽だと申します。習慣の力は偉大です。

そんなことを思いつつ、近頃「締まり」というものと無縁になりつつある秘書は、足を投げ出し首が折れたのかと思う程窓に押しつけて爆睡しました。はっと気づけば、途中駅に停車してしておりまして、ホームにいる人が、秘書の大開放の馬鹿口を覗き込んでおります。ああ、恥ずかし。秘書はいろいろとお疲れなのです。

2005年3月6日(日)晴れ

秘書@田舎。

実家とはいえ、秘書の生活の基盤はここにはございませんもので、基本的には一時滞在の御客様です。それがどうしたかというと、つまり、一通りのことをしてしまえば暇でしょうがありません。

朝起きて雨戸をあけて朝御飯を食べてちょいちょいとお掃除をして、さあそれから? 押し入れや納戸の中を片付けたくも、普段使うのは秘書ではありません。勝手に整理してしまったら、お母様が大混乱を来すのです。

これはこっちの方が便利だからここにしまったからね、と言ってきたから大丈夫、と思ったら大間違い。秘書の目には、この配置原則がわからん、と言いたくなるような収納メソッドでも、お母様には一目瞭然なのです。

しばらく、あれはどこいった?の騒ぎをくりかえして、秘書は(いらん手出しをしてはいかん)と思い知りました。

と、言うわけで、食っちゃ寝生活に陥るのを避けるべく秘書はお散歩にゆきます。数年前の田んぼの中の迷子の雪辱を兼ねて、あの時降りたローカル電車の駅まで歩いてみます。地図上ではどうみても15分ほどの距離にあるのです。

結論兼教訓:田舎の元田んぼの畦道に秩序があると思うな。

曲がりくねって、それでもなんとかたどり着きまして、ついては御買い物をして帰ろうと駅の反対側に出てあるきましたらば、え~ん、行き止まりばっかだよ。嫌になるほど歩いて、やっといつものスーパー(昨日の店とは違うやつ)に巡り会えまして、お刺身を買って帰りました。疲れたぞい。

2005年3月5日(土)曇りのち雨

秘書@ローカル電車。

毎度の里帰りです。秘書の「里」は、公共交通機関の著しく不便になった地方都市ですので、毎回、電車を降りるとタクシーに乗ります。その代金は、天候や混雑具合により違いますが、1500~1800円しまして、結構な出費です。緊急時にはやむを得なくとも、毎度のことになりますと、啓蟄よろしく這い出してくるのはケチの虫。

秘書の実家の近くを、降車駅から枝分かれして南下するローカル電車の線路が走っています。以前にもこの路線に目をつけて乗って、大まかな地図を頼りに適当に降りたところが、さあ、ここはどこの田んぼの中よ、と見事に迷子になりまして、さまようこと1時間。懲りて、暫くはローカル電車のことなど、思い出しもしませんでした。

が、ちかごろ足繁く帰省しますもので、実家にありました市内地図を穴のあくほど眺めて、1つ手前の駅の方が近そうだ、分かりやすそうだ、と気が付きました。乗換えの待ち時間は30分。一旦改札をでまして、駅前デパートでおやつなどを買い込んで戻りまして丁度よい頃合いです。

数年の間に、ローカル電車にも変化が訪れていました。往時には、何両も連ねてしゅぽっしゅっぽっ盛大に走っていた路線ですが、モータリゼーションのあおりをもろに喰らって、この前乗った時には、2両編成1時間に数本の運行でしたが、本日再び乗ってみますれば、1両編成1時間に2本程度。

それだけならまだしも、後ろから乗って整理券をお取り下さい前で運賃を払って降りて下さい、の「ワンマン」運行。鉄路を走るバスですか。以前は車内に車掌さんがいて切符を売ってくれてましたっけ。駅はもちろんほとんど無人化されてます。江の電を田舎の盆地に持っていって、う~んと侘しくしたような雰囲気がなかなか味があってよろしいです。JR東日本様、廃止しないでくださいまし。

さて、降りてトコトコ歩いてみれば、おお、そこに見えるのは、お母様とお買い物に来まする某スーパーマーケットの裏側。さっそく、晩ご飯のおかずに、「本日の店長お勧め!海老フライお得パック」を買い込みます。

今回は迷子にもならず、晩御飯には大好きな海老フライを山盛り食べられます。ささいなことですけれど、秘書はなんだか幸せです。

2005年3月4日(金)雪のち曇り

予報通りに雪が降り予報通りに止みました。当たる天気予報の怪。大根役者と並んで当たらないものの代表だった頃が懐かしくあります。この懐古、これ即ち後ろ向き人生…… と黄昏れるのには、いい加減飽きが来ました。ぱーっといきましょう、ぱーっと。

で、さて、どうするね。花見にはまだ早いし。お買い物でもしましょうか。全財産、使ったるで~。

と、口先豪儀なれど先立つものがござんせん。しばし沈思黙考する頭を着膨れた胴体に乗せたまま、足は勝手に最近開店した100円ショップに向います。

秘書が子供だった頃、お家の回りは田んぼばっかしでした。「金物屋」もしくは「荒物屋」と称する、リヤカーにぎっちり物を詰め込みぶら下げた出張販売が、様々の金属がぶつかる音を響かせ、触れ歩きながらやって来ました。銅のおろしがねやピカピカの茶漉し(家にあったのは茶渋で真っ黒けでした)やレモン絞りその他見たこともない素敵な物が一杯の、子供秘書の目には魔法のお店屋さんでした。お母様の後にくっついて行って目を輝かせてそれらの品物を眺めたり触ったりしたものです。(いつの時代だ、年がバレるよ、おい)

100円ショップも、狭い空間にぎっちり物を詰め込んで、まあ楽しいですこと。こんな物までと声を上げたくなるものもあります。100円のフライパンに包丁にキッチンバサッミに手袋に帽子に靴下に…… 全てがプラスチックのように見えるのは石油文明社会ゆえ致し方ないのでしょう。溢れる色彩をカラフルと受け取るか下品と受け取るか…… 品性にも感性にも関係がありません。財布の中身で決まるのでしょう。(とか、またでたらめを……)

とにかく、社内で埋もれてしまって不便を感じている直定規とカッターナイフを買いました。以前なら文房具店で気に入ったものを買おうとしたら、あれこれ迷った挙げ句に1000円札が必要でしたが、100円ショップでは選択の余地はありません。つまり、どれを買うかで迷うことはなく、これを買うか買わないかで迷うだけです。潔いといえばこの上なく潔い世界です。

それにしても、金を使うというのは、快楽ですなあ。全財産を馬券につぎ込んでハズしたときの気持ってどんなんでしょう。

2005年3月3日(木)晴れ

本日は、女(の子)の祭典、雛祭りです。秘書んちの、ちんまりしたお雛様が外気に触れることができていたのは、さていつのことだったでしょう。もう何年も箱入り娘・息子の暮らしを続けておりまして、もしかしたら虫さんに齧られているかもしれません。余計取り出すのが恐くなって、今年も押し入れの上に突っ込んだままです。

こういう荒れ果てた心持ちがいけないのですね。そんなこと、よおく分かっております。分かっているのに、放っておくこの心理。きっと歪んでいるのです、どうせ秘書なんか……

と、自爆していてどうする。

気がつけば春です。陽射しは明るく風は暖かく木々は芽吹き鳥は歌い、本日東京地方は夕刻から雪だそうで…… やっぱ、めちゃくちゃです。鬱、鬱、鬱……

気晴らしに、お片づけでもしましょ。それにつけても金の欲しさよ。

(------------以下、他人様のフンドシで相撲をとらせていただきます----------)

(大言快・覚書 http://www.mars.dti.ne.jp/~matsumu/daig-000.html

それにつけても金の欲しさよ
(中略)
明治時代の作家だったかが、「どんな上の句にも付く下の句はあるだろうか」と言う話をしているときに、これはどうだい、ということで出てきて以来、もっぱら下の句しか知られていない言葉。太田南畝{なんぽ}の

  世の中は いつも月夜と米の飯 それにつけても金の欲しさよ

が元歌と言われています。「それにつけても」でそれまでの話題を切り捨てた上で、俗人永遠の願望たる金銭欲に訴えるのだからまさしく万能。
それにつけても、江戸時代からある歌が元ネタなのだから人間そう変化はしないものなのですねえ。

  世の中に 金と女は仇なり どうぞ仇に巡り会いたい
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2005年3月2日(水)晴れ

本日も○○面白くないです。なあ~んもする気がしません。で、隣町の吉祥寺に行っちまいました。用なんかねえです。家電店をふらふらして、買う気もないショット機能付きアイロンを片っ端から試したり、液晶テレビの画面が大きいの小さいの、プリンタはやっぱA3が印刷できなくっちゃね、とか冷やかしまくり、アンテナ分配器の機能は殆ど同じ品がなんで1000円も値段が違うんだろ、とか……

あれえ? 

なんか変だと思ったら、アンテナ接続ケーブルの商品名の下の大きな字の説明が「衛生」用だってさ。衛生放送って、保健所がやってるんかしらん。一般市民が欲しいのは、衛星放送用のケーブルだと思うんですけど。だあれも気が付かなかったんか知らん。気が付いたけど、どうでもいいと思ったんか知らん。一昔前だったら、始末書・回収もんでしたなあ。世の中がいい加減になったと言うのか、寛容になったと言うのか。

↓衛生放送
「衛生」とあるパッケージ

企業のクレーム処理担当者(商品に文句を言ってくるお客の相手をする人)の実例集を読みました時、お客様というのはとんでもねえ人種ですこと、と思わず担当者に同情してしまいましたが、さて、その類いの御客様がこの衛生表示に気が付きましたら、どういうクレームをつけるのでしょうか。

衛生放送用というから、保健所のお知らせが見られると思って買ったのに、映らないじゃないか。期待を裏切られて精神的に非常に傷ついた。企業としてはどう対応するのか、誠意を見せて欲しい……とか、まさか。

結局何も買わないで出て来て、向った先は、今噂の1000円カットハウス。おそるおそる店内を覗けば、順番待ちしているお客は一人です。しめた、すぐ出来る、と思いつつも、「待ちますかあ」とカマトトぶって可愛い声をだす秘書。なに気取ってるんでしょ。あたし初心者なんですう、いつもは6000円くらいする美容院に行ってるんですけど今日は時間無くって、とりあえず切っときたいんですけどお、みたいないらん見栄張ったって、誰も秘書のことなんか気にしちゃいませんがな。

あっと言う間に可愛く仕上げていただきまして、秘書は1000円カットがいたく気に入りました。秘書と似たり寄ったりの感覚と境遇の方にQBカットハウスをお勧めします。

(宣伝しただよ、なんか呉れ)

2005年3月1日(火)晴れ

また月が変わっちゃいました。ちょっと油断すると、時間が逃げていきます。これ即ち人生の黄昏……

相変わらず、○○○が○○○で、○○が○○して、○○面白くない毎日です。(○には、お好きな字を当てはめて下さい。入れた文字によって、自分の品性が確認できます。因みに秘書の記入例:あんこが醤油味で、最中〈もなか〉が粉砕して、マジ面白くない毎日です……なんのことだろ……)

さて、木の芽時です。頭の中がなんだかムズムズして、社内は収拾がつかなくなってきました。蟻塚はどこまで増殖するのでしょう。数々の物件が狭い社内のどこかに確実にある筈なのに、発掘不能です。

非常に気分が悪い秘書は、とにかく手を付けられるところから片付け始めました。なにがなんだか分からない状態の書籍封筒ビデオ書類の山を収納場所を決めて詰め込んで行きますれば、おお通路が出来ます。壁一面の引き出しの中身を改めれば、まあ分類のどうしようもないこと。ちょいちょいちょいと入れ替えるだけで、あっと言う間に半分以上が空になります。行方不明の大事なものも少々でてきましたなあ。

狭くて片付けられない、が口癖のお方が我が社内に約1名いらっしゃいます。確かに我が社はだだっ広くはないのですが、無駄な空間もまた相当なものですぞ。探し物をする時間を整理整頓の時間にまわせば、空間も人生も片付くと言うのに……

最近、壁にむかってぼそぼそ呟くことの多くなった秘書です。心の暗闇に何か住むのでしょうか。そう言えば、今年は豆まきを忘れました。出番がなくて倦怠しきった鬼が碌でもない暇つぶしを考えませんように……


けーっ、けけけけけーっ