電子手紙の送信日付け順・注釈付き一般公開文書館 2001年5月

『日本経済新聞』「文化」欄記事「アンデスに息づく組紐」に見る歴史錯誤再生産

送信日時 : 2001年 5月 18日 金曜日 8:52 AM

件名 :[pmn 14942] 大手紙の歴史錯誤再生産の責任を問う

 先にも、日経でマッカーサー伝説を「創作」している「ノンフィクション作家」が、NHKの歴史を動かす番組に呼ばれたことを記しました。この場合には、自称の肩書きのようですから、新聞の編集者、または担当記者、担当放送局員の無知だけを咎めるのは、片手落ちと成ります。

 ところが、肩書き紹介が「組紐研究家」ともなれば、具体的な組紐の細部を追う仕事なので、普通は、背景の歴史にまでは目が届かないでしょう。『日本経済新聞』では、「文化」欄に、この種の特殊な研究、または趣味の探索を続けている人の記事を載せています。時折、歴史的な背景の認識では、どうかなと思われる部分もありますが、なかなか面白い企画です。こういう場合には「文化」欄の編集者の歴史検証責任は重いのです。

 ところが、ちょっと古い記事ですが、当方の都合で、積んだままにしていたものを整理していたら、どうかなよりも少し進んで、これはちょっと問題では、という記述に遭遇しました。

 2001.3.16.見出しは「アンデスに息づく組紐」ですが、この中に、「日本で最古の組紐[中略]。どちらかの組紐文化が海を渡って伝わったと唱える人もいるが、各地で個別に発生したと私は考えている」とあるのです。

 この「考え」の根拠は示されていません。こういう場合、私は、編集者の検証責任を問います。私は特に、この種の「各地で個別に発生」説に強い疑問を抱き続けてきました。わが電網宝庫にも逐次収めている最中の『古代エジプト・アフリカ史への疑惑』の中で、いわゆる人種の各地発達説には、人種差別の思想が色濃く刻印されていることを告発しました。今では、私が27年前に可能な限りの資料を比較検討して発表したアフリカ中心説が、ほとんど定説に成っています。以下を御覧下さい。

 http://www.jca.apc.org/~altmedka/afric-index.html

 アンデスの古代文明に関しては、近年急速に、日本列島周辺との関係が、立証され続けています。人種的には、これが全部とは言いませんが、アンデス周辺の遺跡に残る古糞(古墳の打ち間違えにあらず)の化石のODA研究により、アラスカ経由の移住は否定されました。古糞の化石を「糞石」と言いますが、その中から、摂氏20度以下では死滅する体内の微少寄生動物が発見されたのです。これらの動物は、糞を媒介にして子孫の体内に伝わるので、彼らの祖先は、寒い地帯からではなくて、大平洋を渡ったに違いないのです。本体の方のDNA研究でも、非常に日本人に近いことが立証され、テレヴィ番組にもなっています。技術的には、真ん中にはハワイ諸島がありますから、道程を倍にするだけで解決します。

「紐」については、インカ帝国で通信手段とされた「キープ」と同じものが、沖縄に残っています。この種の古代技術というものは、その起源が、ますます遡ると同時に、世界各地の関連の深さが、これまた、ますます実証される傾向にあります。

 ついでに、もう一つ、大手紙記事を紹介すると、『朝日新聞』(2001.5.14)「私の視点」には、「新しい歴史教科書をつくる会理事」が登壇しました。議論は結構ですが、朝日は、おそらく戦前から、「エセ紳士」と呼ばれていました。立派な「戦犯」でもあります。この種の右顧左眄が習性の大手メディアに、歴史認識の操作を委ねていると、気が付いた時には、大変な事態になるでしょう。いや、実は、もう大変な事態なのですが、いわゆる既成も新とか珍とかをも含めた左翼は、「孤塁を守る」のが好きで、それこそ国際的な大手メディアの報道操作によるホロコーストの嘘を信奉していたり、幼児語の「よしりん反対!」程度の水準で、ますます孤立を深めているので、大変に心配なのです。


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