『亜空間通信』2001.10.14:41号

シャロン暴言紛糾を背景にユダヤ人指導者は分裂を避けてブッシュ政策後押し

送信日時 :2001年 10月 14日 日曜日 9:55 PM

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『亜空間通信』41号(2001/10/14)
【シャロン暴言紛糾を背景にユダヤ人指導者は分裂を避けてブッシュ政策後押し】

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転送、転載、引用、訳出、大歓迎!

 本通信では先に、今回の事件以後のアメリカの政策に関して、シャロンとホワイトハウスの諍いを紹介したが、その裏舞台を覗くのに絶好の「アメリカのユダヤ人社会」の論評が現われた。

 この経過の核心は、これまでにも何度か発揮されたユダヤ人社会または政治的シオニスト組織の二枚腰の強味であり、しかもその中心が実はイスラエルにではなく、アメリカにあることを如実に示している。以下、拙訳『偽イスラエル政治神話』の中から「アメリカのイスラエル=シオニスト・ロビー」の一節を紹介する。

 nise-25.html(第1節:アメリカのイスラエル=シオニスト・ロビー-1/2)

 アメリカのシオニストが、いかに強力なものであるかを如実に示すのは、すでに一九四二年、ニューヨークのビルトモア・ホテルで作成されていた過激な内諾の憲章による決定である。その決定とは、[世界シオニスト機構イギリス代表のロスチャイルド家当主に、一九一七年当時のイギリス外務大臣]バルフォアが約束した“パレスチナの内部のユダヤ人の郷里”[homeland]を、その主旨のような、イギリスまたはアメリカの保護下における土地の買収による緩やかな植民としてではなくて、「ユダヤ人の主権国家」[Etat]の創設として通用させることだった。

 以上で引用終わり。

 以下は、アメリカの歴史見直し論者のブラッドレイ・スミス教授が主宰し、学生が協力しているCODOHのリンク記事である。自動機械訳を木村愛二が直した。

 以下の[ ] 内は木村愛二の註。

http://www.jewish.com/jta/

題字下の絵柄の文字:
JEWISH COM (MUNITY) [ユダヤ人のコム(ミュニティ)として「ユダヤ人社会」を意味]

BEHIND THE HEADLINES
主な項目の背後

Rejecting talk of schism, Jewish leaders rally behind Bush policy
分裂の議論を拒絶し、ユダヤ人の指導者たちはブッシュの政策を後押し

J. Jordan
マイケル.J.ヨルダン

NEW YORK, Oct. 8 (JTA) With the launch of the U.S.-led war on terrorism, American Jewish leaders are rallying behind Washington.

ニューヨーク、10月8日(JTA)テロリズムに対しての米国が率いる戦いの開始に当たって、アメリカのユダヤ人の指導者は、ワシントンの後押しに回った。

At the same time, anxiety that Israel's interests may be shunted aside seems to be dissipating.

それと同時に、イスラエルの利益が棚上げにされるかもしれないという不安は、沈静しているようである。

In the weeks since Sept. 11, the administration seems to have acted upon the realpolitik equation that beginning with a narrow goal going after Osama bin Laden and his Al Qaida terrorist network would garner a broad international coalition, while pursuing a broader goal from the get-go such as eradicating all terrorism might result in a narrower coalition.

9月11日からの1週間、アメリカ政府は、テロリズムの全てを根絶する幅広い目標を最初から目指すと、かえって結果的にはより狭い同盟の結成に終わると判断し、オサマ・ビン・ラディンと彼のアル・ケイダ・テロリスト・ネットワークを追及する狭い目標による発端の方が、幅広い国際的同盟の結成に確立につながるとする現実的政治方程式に従って行動したようである。

In the run-up to Sunday's initial airstrikes against Afghanistan, two well-publicized dust-ups over the administration's course hinted at Jewish and Israeli dissent, and perhaps a schism within American Jewry.

アフガニスタンに対する日曜日の最初の空爆に向けるエンジン全開の準備段階では、政府の進路を巡る2つの世間周知の騒ぎが起こり、ユダヤ人とイスラエルが異議を唱え、おそらくアメリカのユダヤ人の内部で分裂が起きているとの憶測がを生んだ。

Many Israelis and American Jewish leaders felt blindsided amid news reports that the Bush administration had been prepared to launch a new Israeli-Palestinian peace initiative and declare support for a Palestinian state.

多くのイスラエル人とアメリカのユダヤ人の指導者たちは、ブッシュ政府がイスラエルとパレスチナの新しい平和交渉の取り持ちの開始と、パレスチナ国家支持の宣言を準備していたとの報道が渦巻く最中、不意討ちを食わされたと感じていた。

Mortimer Zuckerman, chairman of the Conference of Presidents of Major American Jewish Organizations, was quoted as describing such policy perceived as a leak to entice more Arab states into the anti-terrorism coalition as "a very short-sighted and erroneous policy" that would reward the Palestinians for their past year of violence against Israel.

アメリカのユダヤ人の主要な組織の長たちを束ねる協議会の議長、モーティマー・ザッカーマンが引き合いに出され、彼が、反テロリズム同盟の結成にアラブ諸国を加えようとする政府の方針を、イスラエルに対してのパレスチナ人の過去の長年の暴力に報酬を与える「非常に近視眼的な誤った方針」の意図的な漏洩として描き出しているとされた。

Zuckerman later said his words had been taken out of context and misunderstood.

ザッカーマンは、この言葉に関して後に、彼の発言の前後関係を無視して取り出された誤解だと語った。

Israeli Prime Minister Ariel Sharon then expressed the fears of many Israelis when he warned the Bush administration not "to appease the Arabs at our expense," invoking the infamous appeasement of Hitler in 1938 when the West sold out Czechoslovakia in an effort to avoid a wider European war.

イスラエルのアリエル・シャロン首相は、その時、多くのイスラエル人の危惧を表明し、「我々を犠牲にしてアラブ人を宥める」のを止めよとブッシュ政府に警告し、1938年当時に西側諸国が、より広範囲のヨーロッパの戦争を避けるために、チェコスロバキアを売り渡した悪名高いヒトラーに対する宥和政策を引き合いに出した。

Sharon's speech sparked a diplomatic tiff, and a schism appeared to be developing in the American Jewish community as the weekend approached, when some 50 Jewish leaders wrote a letter of support to Bush.

このシャロンの発言は、外交上の諍いばかりか、ユダヤ人のコミュニティが分裂の様相を週末に掛けて広げる状況へと引火し、50人ほどのアメリカのユダヤ人の指導者たちはブッシュを支持する連名の手紙を作成した。

Sharon and the White House reportedly patched up relations over the weekend, before the airstrikes.

伝えられるところによると、空襲を前にして週末に、シャロンとホワイトハウスは関係を修復した。

And on Monday, with America embarked upon a new military campaign, Jewish leaders voiced their support and banked on off-the-record reassurances from Washington that the anti-terrorist dragnet likely will extend beyond bin Laden and his network to include enemies of Israel such as Hamas and Hezbollah.

そしてアメリカが新しい軍事作戦に乗り出した月曜日、ユダヤ人の指導者たちは支持を表明すると同時に、反テロリストの捜査網がビン・ラディンと彼のネットワークを越えて、いずれはイスラエルの敵であるハマスとヒズボラなどをも含むようになるとの非公式の保証の見込みを、ワシントンから取り付けた。

Most Jewish leaders expressed the belief that U.S. and Israeli interests more or less coincide.

大部分のユダヤ人の指導者たちは、アメリカとイスラエルの利益がおおむね一致する との信念を表明した。

"There is broad consensus and support for the administration, both for what it's doing right now and for going after the global terrorist infrastructure, to not make it a one-shot deal," said Malcolm Hoenlein, executive vice chairman of the Conference of Presidents.

[前出:アメリカのユダヤ人の主要な組織の] 長たちを束ねる協議会の執行副議長、 マルコム・ホーヘンラインは、「政府の方針に関しては、現在進行中の施策と、その後の世界的なテロリストの全体的な基盤への追及との両方を、ワンショットにはしないことについて、幅広い共通認識と支持を確認する」、と語った。

"If you address those who are a part of this terrorist network, you are enhancing Israel's security, in addition to America's security and interests."

「このテロリストの[世界的な]ネットワークの一部への追及に取り組むことによって、アメリカの安全保障や資産擁護と同時に、イスラエルの安全保障を強化することができる」

The Jewish Council for Public Affairs, an umbrella group for Jewish communal organizations nationwide, was also backing the president.

ユダヤ人の公共的な組織の全国規模の統率団体、「ユダヤ人公共問題 [特に外交政 策に関する] 評議会」もまた、大統領を支持した。

"We support the direction in which the president is going, and it's important we go on record saying so," said Martin Raffel, the group's associate director.

この集団の共同理事、マーティン・ラッヘルは、「我々は大統領の方針を支持するし、我々がそのことを公式に発表して語り続けることが重要だ」、と語った 。

"It's not a question of wait-and-see'; we support the president based on what he's said, that we're striking out against those who use violence against civilians," Raffel said. "This is the beginning but certainly not the end of the campaign against terrorism."

ラッヘルは、「これは『静観して見守る』べき性質の問題ではない。我々は、民間人に暴力を振るう者に対しては三振を喫していると語った大統領の言葉に基づいて、彼を支持する」、と語った。「これはテロリズムに対する作戦の開始であって、その終結では全くない」

Meanwhile, to the left and right of the mainstream, views were predictably mixed about the appearance that Washington was linking the Palestinian issue to the anti-terrorism campaign.

一方、主流の左右を問わず、ワシントンが反テロリズム作戦とパレスチナの問題を連結するかどうかの予想に関する見解は、混迷している。

Numerous analysts and Middle Easterners including bin Laden himself have pointed to the Arab-Israeli conflict as one of the main, if not the primary, source of anti-American anger in the Muslim world.

多数のアナリストとビン・ラディン自身を含む中東関係者は、アラブ・イスラエルの紛争を、イスラム世界における反米の憤激の第1ではないにしても、主要な根源の一つとして指摘してきた。

The Israel Policy Forum, while praising the Bush administration's steps against terrorism, also welcomed its renewed push to get Israelis and Palestinians back to the negotiating table.

イスラエル政策フォーラムも同様に、テロリズムに対するブッシュ政府の措置を賞賛しつつ、イスラエルとパレスチナを再び交渉のテーブルに着かせるプッシュの新しい方針を歓迎した。

"The Arab-Israeli conflict, with few exceptions, has only moved forward with help from the Americans," said Tom Smerling, director of the IPF's Washington Policy Center.

ワシントンのイスラエル政策フォーラムの理事、トム・スメーリングは、「アラブ・イスラエルの紛争は、一部の例外を除いて、アメリカの援助によってのみ推進され得る」と語った。

"Parties involved in deep conflict are almost never able to extricate themselves without third-party involvement."

「深い紛争状態にある関係者はほとんど、第三者の関与なしには紛争から離脱することができない」

On the other side of the spectrum, though, Morton Klein, the president of the Zionist Organization of America, said Bush had done "serious damage" to Israel's attempts to repel Palestinian violence.

多様な見解の中の反対側には、アメリカのシオニスト機構の議長、モートン・クラインがいて、パレスチナ人の暴力をはね返すためのイスラエルの努力に関して、ブッシュが「重大な損害」を及ぼしたと語った。

While stressing his support for Bush's efforts to fight terror, Klein warned: "By saying he has a vision for a Palestinian state he is whetting the appetite of the Arabs to continue their terrorism. He pledged that we will end all regimes that harbor terrorists, but then he turned around and asks precisely those regimes to join the coalition. That proves Sharon's charge that he is appeasing regimes of great danger to Israel."

テロと闘うブッシュの努力に対する彼自身の支持を強調しつつも、クラインは警告した:「彼 [ブッシュ] は、パレスチナ国家の未来像を持つと語ることによって、テロリズムを続けようとするアラブ人の食欲を刺激している。彼は、テロリストをかくまう全ての国家を我々が根絶するのだと誓ったが、その次には後ろを向いて、まさにそれらの政権に同盟への参加を求めてる。その態度は、彼がイスラエルに対して非常に危険な体制を宥めているというシャロンの嫌疑を証明するものだ。」

Still, Klein implied that the fight ultimately would be broadened, to Israel's benefit.

それでもなおクラインは、その戦いが最終的にはイスラエルの利益に向けて拡大されることを示唆した。

"I remain confident that overall Bush's policies will be of benefit to both the U.S. and Israel," he said.

「私は、ブッシュの政策が全体としてアメリカとイスラエルのためになるという信頼を失ってはいない」、と彼は語った。

To destroy only bin Laden and the Taliban, he said, "while allowing the others to continue with business as usual will mean we'll lose the war on terrorism. He'll have to destroy them, or terrorism will persist."

ビン・ラディンとタリバンだけを破壊する間、「他の連中に通常通りの所業を続けることを許してしまうならば、我々がテロリズムとの戦いに負けることを意味する。彼[ブッシュ] が、その連中を破壊しなければ、テロリズムは持続することになる」、と彼は語った。


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