『亜空間通信』291号(2002/07/03) 阿修羅投稿を02.12再録

「ジャーナリスト」の最良の部類も騙したテレヴィの犯罪はアメリカのVOA戦略

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『亜空間通信』291号(2002/07/03)
【「ジャーナリスト」の最良の部類も騙したテレヴィの犯罪はアメリカのVOA戦略】

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 転送、転載、引用、訳出、大歓迎!

 ここ1週間というもの、仮題『911事件の真相と背景』完成のに向けて雑多な資料の山の整理にかかり切りであった。一番数が多いのは、わが電網宝庫読者が届けてくれた新聞の切り抜きである。

 分類と内容の再確認のために、整理しながら斜め読みしているが、程度の差こそあれ、911事件を「テロ」とか「同時多発テロ」とか表現し、結果的には、「テロと認めるか否か」を迫るアメリカ極右の手に乗ってしまった「識者」たちが、あまりにも多すぎるのには、とても、とても、疲れてしまった。私の表現では「ジャーナリスト」の最良の部類と言える諸先輩も、いわば「枕を並べて討ち死に」の状況である。私には似つかわしくない表現だが、一応、「失礼ながら」、と言っておこう。いささか食傷ぎみと言わざるを得ないのである。

 彼らを「討った」得物は、他でもない。あの事件を伝えたテレヴィの画面である。

 テレヴィ業界出身の私としては、これを自らも関わってきた「テレヴィの犯罪」として告発せざるを得ない。

 日本のテレヴィ放送の草創期の裏話に関して、私は、徹底調査し、拙著『読売新聞・日本テレビ・グループ研究』(汐文社、筆名・征矢野仁、1979、絶版)の中で詳しく記した。簡単に言うと、日本のテレヴィ放送の創設は、アメリカの上院で、「謀略放送」と批判され続けているVOA(ヴォイス・オブ・アメリカ)の推進者、ムント議員が、「共産主義との戦い」の一環として、「B52爆撃機2台分の予算」で可能と演説したのが発端である。その部分を、私は後に、拙著『電波メディアの神話』に要約して収めた。こちらはワープロ時代の作業だったから、簡単に電網宝庫に取り込める。後日、別に発表する予定である。この項目の見出しは「『武器』として建設された日本のテレヴィ放送網」になっている。

 私には、その実感があるから、私の目と頭脳には、いわば「対ウィールス・ソフト」が入っているような状態である。特にアメリカ発情報は、すべて、このソフトのフィルターに掛けて、濾過してから吟味する習慣が身に付いている。しかし、それができない先輩が実に多い。以下の「大御所」とか「泰斗」の名が相応しい先輩も、一部だけ先に引くと、「11日夜、テレビ朝日の『ニユースステーシヨン』で事件の発生を知った。NHKの総合とBS、その後中継を始めた他の民放局を含め、テレビを見ながらさまざまの思いに駆られた」と記している。つまり、基本は活字メディアの出身なのだが、ほとんどの情報をテレヴィから得て、911事件を「テロ」と判断し、以下の文章を綴ったのである。

『朝日新聞』(2001.09.15)15面(「オピニオン」頁)
opinion@news project
opinion-page@ed.asahi.com
「メディア・テロの背景さらに究明を」
原寿雄(はら・としお)
ジャーナリスト、元共同通信編集主幹

 11日夜、テレビ朝日の「ニユースステーシヨン」で事件の発生を知った。NHKの総合とBS、その後中継を始めた他の民放局を含め、テレビを見ながらさまざまの思いに駆られた。

 まず、真珠湾、日本軍の特攻、ヒロシマ、そしてべトナム戦争の米軍北爆である。
 70年、タイのウタバオ基地で取材した米軍乗組員たちは、迎撃の危険性が全くない高高度からの爆撃を日課として、陽気な毎日を過ごしていた。「絶対安全な戦争」の存在に深いショックを受けた。それが突然、思い出された。

 テロは圧倒的な軍事力の差が生み出す戦争の一形態と言える。今度は武器も使っていないようだ。超大軍事力の米国が、こんなにもテロに弱いことをどう考えるべきか。ジヤーナリズムの上でも課題は多い。

 センセーシヨナリズムはなかった。むしろ惨劇の規模の大きさと深刻な質にふさわしい報道の仕方が、従来の手法からは探し出せなかったと言うべきだろう。

「21世紀型の世界戦か」との記事もあったが、問題の根の深さと衝撃度の強さを的確に表現する難しさが確認された。

「自由と民主主義の擁護者」を自他ともに認める米国がなぜこれほど憎まれ、恨まれ、敵視されるのか。どこで、だれに、どうして恨まれているのか。今なお自殺特攻隊が後を絶たないのはなぜか。

 それらの事実を総体的に理解できる報道なしに、米国民も世界も適切な対策を論議するのは難しい。報復戦争の連鎖でテロは根絶できない。冷静な議論のデータ提供をジャーナリズムは求められている。

 テロによる世界同時不況への心配も大きく取り上げられたが、その因果関係は必ずしも明らかではない。事件が世界の株式市場の下落を加速させ、原油高騰などの不況要因を増した点や米国民の消費心理を曇らせた点は認められるが、テロが恐慌をもたらすほど現代世界経済の構造は脆弱なのか。そうなら、その解説こそが求められる。

 乱れ飛ぶ未確認構報のチェックは慎重に行われたようだ。今度はむしろ全体的に情報不足を問題にしたいくらいだつた。パレスチナ解放民族戦線(DFLP)が犯行声明を出したというニユースも、ロイター通信とNHKの直接取材ですぐに否定された。11機がハイジヤツクされた」という報道は出所不明のまま、結局4機だった。ニユースの出所を明らかにすることと確認のチェックは一般的原則だが、大事件ではその重要性を特に強調したい。

 同時代に生きているというだけでテロは一般市民をも巻きこむ。日本のジ-ナリズムも邦人関連ニユースを超えて、地球市民としてどう考えるべきかの問題提起に力をいれて欲しい。

 以上で引用終わり。

 今、改めて読み返すと、実に慎重な文章で、「確認」を求めてはいるのだが、惜しいかな、やはり、テレヴィ映像の強烈な影響のせいであろうか、「べトナム戦争の米軍北爆」を現地で取材していた先輩ですらが、その「北爆」に先立つ「東京湾」(とんきんわん)事件を思い出してもいないのだ。アメリカは、北ヴェトナムの水雷艇がアメリカの軍艦を攻撃したと「でっちあげ」、それを口実にして、「北爆」を開始したのだった。

 私に言わせれば、「あの」アメリカが、謀略をやったと疑わない方が不思議なのである。どうして、それを忘れたのか。原さんとは面識もあるし、きちんとした議論ができる先輩だと判断しているから、早い機会に面談したいと願っている。

 以上。


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