現在京都市ではテレビは大型ゴミとして回収され、市の清掃工場で粉砕され、一部焼却などの処理を受けた後に埋め立てられています。テレビには金、白金、銀などの貴金属や、鉛、カドミウム、テルルなどの有害金属が使用されていますが、回収されるのは古いテレビに使用されているPCB(注3)だけです。このような使い捨ては金属資源のムダですし、環境への悪影響も予想されます。近年テレビは大型化し、生産台数も増加しているため、埋め立てられるテレビの量はますます増加する傾向にあります。
こうした状況の背景には次のような事情があります。
- 処理施設の確保が難しい。住環境悪化を招くと考えられがちなため、周辺住民の同意を 得られないことが多い。
- メーカーはテレビやその素材をはじめからリサイクルを意識しては製造していないため、解体して部品や素材を分離・回収するのが難しい。またモデルチェンジを短期間で行うと解体などの技術がそれに追い付かない。さらにはどこにどんな素材がどのくらい使用されているかがメーカーの企業秘密などの理由により表示されていないことも障害となっている。
- 回収システムが不十分、また各部品中に回収すべき金属が極端に少ないなどの場合、業者にとっては再資源化は利益を生まない。また、自治体に再資源化という発想自体ないことがある
などです。
こうした中で、1991年に「再資源化促進法」が制定されました。この中ではテレビを第1種指定製品とし、通産省は再生促進を念頭においた製造・販売をするようにメーカーに指導すること、とされています。また、廃棄物処理法も今年、改正されました。ここでは適正処理困難物に指定された製品については、自治体がメーカーに回収や回収費用の負担を求めることができる、とされています。東京都は業者と協力して、販売店ルートを活用したテレビを含む使用済家電製品の回収を試行しました。家電製品協会も業者等と協力して、兵庫県の工場において「廃テレビ高度再資源化システム」を作り、再資源化の実験研究を行っています。さらにはテレビにデポジット(注4)をかけて販売する、あるいは販売自体をやめて長期レンタルというシステムにする、などの案も出ています。
(注3)PCB(ポリ塩化ビフェニール) 胎児への悪影響や肝臓障害を引き起こすなど毒性の強い有機塩素化合物。日本ではテレビのトランスの絶縁油として、1972年に製造・使用が禁止されるまで使用されていた。現在でもその処理が問題となっている。
(注4)デポジット制 価格に一定額の上乗せをして商品を販売し、商品回収の際に、その上乗せ額を返却することによって商品の回収率をあげることが出来る制度。