京大ユニセフクラブ2002年度11月祭研究発表
「水家族」
4 水の国際貿易
第5章 水の将来(文責:佐藤)
経済のグローバル化が進む中、水も商品の対象として大きなビジネスになっています。水が他の製品や食料のように国家間で大量に輸送され売買されるようになったのです。地球温暖化により降水量の地域差がさらに拡大することが予想され、世界の水資源が不足していく中で、これからこの動きはますます大きくなるでしょう。
水の大量輸送の計画は世界中で数多くあります。トルコから中東地域へ、アルプス山脈から南欧へ、カナダからアメリカ南部へと、水の豊富な地域から不足している地域へパイプラインを敷設して水を輸送することが計画されています。また、船によって実際に水の輸送は行われています。トルコからキプロスヘは巨大な袋に淡水を詰めてそれを船で牽引するという新しい方法で水が運ばれ、また水の豊富な日本にもタンカーで水が輸出されているのです。
世界の中で水の主な供給地域となるのはカナダとアラスカです。これらの地域では、大量の水の輸出は地域の自然や生態系を壊すとして、水の大量輸出を禁止しています。しかし近年、水の輸出を解禁しようという要求が、企業や政治家から高まってきました。今後水質汚染や気候の変動などで淡水の不足が予想され、水ビジネスは企業にも国にも莫大な利益を生み出すと予想されているからです。
貿易協定が水の輸出入をさらに加速しています。NAFTAなどの協定は水も明確に貿易の対象としているので、協定に加盟している国は、水がひとたびモノとして売買されれば、水の貿易を制限することはできなくなります。もし貿易を制限すると、協定に違反したことになり、貿易制裁を受けるか、または水ビジネスを妨げられた企業から損害賠償を請求されるからです。また、協定は企業が国外で自由に活動できることを保障しています。そのため国外から入ってきた企業が大量の水を国外に持ち出し、その地域の水資源を枯渇させてまた新たな土地に水を求めて移っていくという自然破壊を引き起きています。
こうして運ばれる水はボトル飲料として私たちの口に入ります。タンカーで大量に水を輸送し人件費の安い国でボトル詰めが行われるのです。ボトル入り飲料水の消費量はここ10年で3倍に増え1年間に世界で約230億リットルが消費されています。日本でもその消費量は増えつづけています。しかし私たちが普段何気なく飲む水が海外で深刻な環境破壊を引き起こしていることがあります。世界中で企業によるボトル用の水源確保の競争が起こり、農家から企業に水利権が売られて地域の水資源が取り尽くされています。
私たちの飲むミネラルウォーターがどこから来るのか、また価格が水道水の1000倍もする水が本当にそれほど価値があるものなのか一度考えて見る必要があります。