京大ユニセフクラブ2002年度11月祭研究発表
「水家族」

5 水紛争

第5章 水の将来(文責:佐藤)



 分配できる水の量が少なくなっていく中で、近い将来水が紛争の火種になるかもしれません。21世紀の戦争は水をめぐる争いだろうとさえ言われています。近い将来本当に水紛争は起きるのでしょうか。また、それを防ぐ方法はないのでしょうか。


 水紛争は現代に始まったわけではなく、人類が農耕を始めたころから狭い地域での小規模な争いはごく日常的に続いてきました。20世紀に入ると政府が軍隊を派遣するという大規模なものも起こりましたが、実際に水が原因で戦闘状態になったのは4事例だけで、大規模な水紛争はそれほど多くは起きていないと言えます。


 それでは水紛争はどのようなときに起きるのでしょうか。多くの場合、紛争は川を流れる水の量が需要を明らかに下回るときに起こります。川の流域にある国が大規模な灌漑事業を進め始めたり、大規模なダムを建設したり、川の分水計画を持ち出したりすると、川の水量が減るため、下流の国はそれらの事業の中止を求めます。エジプトなどの国では地表水のほぼすべてを隣国からくる川の水に依存しているため、川の水量の減少は死活問題となるからです。しかし、上流の国がそれでも事業を進めると紛争になるわけです。


 紛争の原因は水の分配の不平等さにもあります。昔から比較的多くの水を利用してきて既得権を守ろうとする国と、比較的少量の水しか利用してこなかった国で、これから発展を目指して国土の開発を始めようとする国の間では対立が起こりやすくなります。また、国際河川の水の利用に関する多国間の国際条約で強制力を持つものが少ないことも問題です。


 したがって、人口が増加し水資源が減少するこの先、紛争が起きる可能性は十分あるわけです。紛争を起こさないためには、平時から水の利用に関する取り決めをしておくとともに、国どうしの協力が欠かせません。自国の権利ばかり主張するのではなく、両方の国の損失を最小限に抑える解決法を模索するべきです。




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