京大ユニセフクラブ2000年度11月祭研究発表
「私たちのお金がこわす途上国の暮らし」
ODAって環境を破壊してるの?
ODAは本来、最貧民層の人達を救援する目的で払われるもののはずだ。しかし、その人達が怒りの声をあげているという話を聞いた。ODAのせいで環境を破壊された、生活はますます苦しくなった、こんな援助はもうたくさんだ、いらないという。ますます生活が苦しくなったなどとはさすがに信じ難かったのだが……
どうやら真実らしい
パプア・ニューギニアには、日本の大手商社、
日商岩井の資本でできたステティンベイ・ラン
バー社がある。ステティンベイ・ランバー社は、
1979年以来、繰り返しODAによる道路や
橋の建設を受注してきた。その過程で大量の熱
帯雨林が伐採された。さらに、河川や泉に土砂
や油、化学物質が流れ込んだ。その結果…娘 「道路ができて以来、食用や薬に使う木の実がとれなくなったわ」
男 「野生の動物がいなくなった。野豚も何もとれん。
もう、自給自足じゃ生きていけん。」
老人 「河川も荒れ放題で、今じゃちょっと雨が降ると洪水、
降らないと渇水じゃ」
男2 「水がすっかり汚れちまって、川の生き物もみんな死んじまった。
もう漁業じゃ食っていけねえ。」
女 「近くの水源地はもう使えない。遠くの水をひいてこなきゃ。」
女2 「あんたはまだいいわよ。うちはもう雨水頼みしかないのよ。
これもすべて日本のODAのせいよ!」つまり、ODAによって、本来その対象のはずの人達が苦しんでいるのだ。どうして、こんなことになったのだろう。
パプア・ニューギニアの森林
1990年 約3761万ha
1995年 約3694万ha
パプア・ニューギニアの野性動物
(96年現在)絶滅危惧種数 240
絶滅種数 5法制度に問題発見!
一般に発展途上国では、先進国と比べて、環境に関する規制が緩い。特に有害物質に関する規制には大きな差異がある。
これはパプア・ニューギニアにもあてはまる。目に見えて被害が出ているのになぜなのか。どうやら次のような事情と思惑があるようだ。◆発展途上国においては公害防止のためのデータの集積やメンテナンスに問題があり、防止策が講じにくい。
◆ 経済発展のために、工業化優先の政策方針をとっている。
とにかく、これでステティンベイ・ランバー社は合法ということに…、おや?それでも一部だが、伐採してはいけない木が伐採されてるぞ?ということは、これだけでは説明できないことになる。なぜパプア・ニューギニア政府は違法行為を放置しているのか? そして日本はODA提供国として国外とはいえ、自国の企業が違法行為を行っているのを見過ごすつもりなのか?
日本政府にさらなる問題があった!
実は、日本政府には日本の大企業から大きな圧力がかかっている。
だから、その企業に不利になるようなことはまずしない。パプア・ニューギニア政府
やステティンベイ・ランバー社に規制強化を迫らないのはそのためか。また、違法行為の放置もここに原因がある。日本の企業を罰しようとすると、日本
政府がODAを停止すると言い出すのだ。なるほど、これなら多少の違法は見て見ぬふ
りだわな…。災難なのは、土砂流出などその被害を受ける人達だ。政府や企業の思惑のせいで、ODAによって逆に苦しんでいる人達がいるという現実を、私達は認識しなくてはならない。
(京大工1 西田 治朗)