角田 望(すみだのぞみ)
はじめは自分の家で,自分たちの地域で,つくって食べていた「たべもの」がどんどん自分たちの手を離れていき,だんだんと大きな仕組みの中をまわるようになっていく.それだけだと単に「変化」としてとらえても良いだろう.しかしここで起こっているのは単なる「変化」ではない.大きな仕組みは巨大な圧力,巨大な波となって押し寄せてくる.私たちの欲求まで操作しようとするアグリビジネスという存在.「南」と「北」を結んでそこに新たな問題を作り出す.しかし「利潤追求」という命題のもとその責任の所在が曖昧になっていく・・.
私たちが今口にしているたべもののうちの多くはそういった「大きな仕組み」のなかで作られ,やってきたものだ.私たちのたべものは,せかいのたべものは,こんなんでいいんだろうか? 新歓学習会の「アグリビジネス」というテーマはそんな疑問から生まれました.
クイズ どこの製品でしょう?
I はじめに〜いま,なぜアグリビジネスなのか〜
II アグリビジネスって?
1) アグリビジネスの定義
2)多国籍ということ
III アグリビジネスのいま
1) 現代アグリビジネスの特徴
2)なにを・どれくらい・どうやって?
IV アグリビジネス・その影響
1) アグリビジネスは世界の救世主?
2) 先進国に対する影響
3) 途上国に対する影響
V こんなんでいいん?私たちのたべもの,せかいのたべもの
まずはじめにデルモンテ,ネッスル,ハインツなど大手アグリビジネス企業の商品を6つほど並べて(もちろん企業名が分かるような部分は全て隠してあります. )
どの商品がどの企業のものかを当ててもらったところ,ほとんど全て正解でした.これら大企業の商品がいかに私たちのあいだに浸透しているかを実感できたのではないかと思います.
少し雰囲気がくだけたところでメインの学習会に入りました.そもそもアグリビジネスって何なんだ?という「アグリビジネスの定義」から始まって,いまアグリビジネスがどのような分野でどんなふうに活躍しているのかをざっと説明しました.
本題のいちばん力を入れた(つもりの)部分はアグリビジネスが与えるいろいろな影響についてです.先進国,途上国と大きく二つに分けて考えてみました.まず先進国ではその国の食糧自給率の低下,食生活の変容といった問題をもたらします.そして途上国.この場合は事態はさらに深刻さを増します.特に生産段階で具体的にどういったことが起こってくるのかを具体的な事例をもとに説明しました.契約農業方式の事例としてドール社のバナナ・アルコ社の冷凍野菜,プランテーション生産の事例としてはデルモンテ社の缶詰を取り上げました.
まとめとして「こんなんでいいん?わたしたちのたべもの・せかいのたべもの」 という項目を設けましたが, ここはほとんどわたし自身の感想になってしまいました.
内容については冒頭のこのテーマを選んだ理由≠参照してください.
今回の反省はやはり月並みですが「準備不足」ということに終始するでしょう.この4文字は,そう言ってしまえば全ての言い訳にできてしまうというずるい一面を持ったコトバなのですが,残念ながら私は今のところこのコトバを使う以外に表現する術を持ちません.
新歓学習会を担当することに決めたのが2月.それからの準備期間のほとんどが,実はテーマを設定することに費やされました.「たべもの」に関すること,ということは決まっていたのですがそこからがなかなかしぼれず2転3転.少し調べてみては引き返し・・の繰り返し.結局アグリビジネスというテーマに絞れたのは新歓期が始まる直前でした.このような大きなテーマを扱うにはやはり少なすぎる準備期間だったと思います.参加した人からの反応を聞くところによると,いまいち私の伝えたかった部分が伝わっていなかったようでしたが,それも私の中でしっかりとした見解ができていなかったからでしょう.いろいろなことを自分自身の中で曖昧なまま出してしまったような気がします.今回の新歓学習会の決定的な反省点はやはり自分の中での熟成期間が足りなかったということにあり,どうやら調べ方が不十分ということ以前の問題のようです.
読み返してみるとなかなか致命的な反省だという気がしますが,私にとっては当たり前のことをあらためて気づかされる良い機会になりました.最後になりましたが,準備にあたってアドバイスをくださった方々,学習会に参加してくださって皆さま,どうもありがとうございました.