新歓読書会報告

角田 望


 6月中旬から5回にわたって行ってきた新歓読書会の報告をします.取り上げた本は2冊で,まずはじめに南北問題の全体像について知りたいということで西川潤著『貧困』(岩波ブックレット)を, 次に具体的な解決策を知りたいということで松井やより著『市民と援助』(岩波新書)を皆で読みました.

1)『貧困』 (6/11,16,25)

 貧困というものを単にお金がない,食べ物がないなどという現象面でとらえるのでなく人間の生活に関する権利を脅かす経済的社会的メカニズムとしてとらえていこうという本でした.

 (記念すべき)第1回目は読書会というものの進め方がよくわからず今後どのようにして進めていくのかがまず話題になりました.本の内容に沿って議論するという方法と,本はあくまでも話題提供のみで後は好き勝手に話す方法という2通りが考えられましたが,どちらかはっきり決まらないうちに今年の新歓読書会は後者の方向に突入してしまったようです.

 そして2回目.発展途上国の貧困の実態を綴った箇所で,先進国の全ての人々にそのような貧しい人々のことについて関心を持つように強制してもいいのかという話に発展しました.それは押しつけだという意見と,より多くの人が関心を持つことによって解決が容易になるのでできるだけたくさんの人に実態を訴え関心を持たせるべきだという意見がありました.

 読書会にも少しずつ慣れてきた3回目は『貧困』の最終回だったのですが,著者がこの本全体を通していいたかったことをはっきりとはつかみきれなかったということもあり,またまた話は本を限りなく逸脱していきます.先進国が途上国にいうことをきかせるための手段として援助を用いてもよいか?という話からインド・パキスタンの核実験に対する先進国の援助差し止めは妥当かという議論になり,そして・・

2)『市民と援助』(7/2,9)

 表題の通り市民の手でなされている援助活動について書かれた本で,NGOの具体的な活動の様子がよくわかり大変読みやすかったです.

 前半ではやせ細った子供のポスターを掲げ,哀れみを起こさせることで募金を集めるという手法の是非について考えることから話を始めていきました.賛否両論でしたがどちらにしても哀れみを感じるだけでなくなぜ子供が飢えるのか,その現状を知ることが必要ということでは意見が一致しそのための開発教育の広め方について話し合いました.開発教育を政府主導で進めていくのか民間レベルでまず広めていくのかという話だったように記憶しています.

 後半では「開発と女性」の章で男女の役割分担のあり方についてひとしきり話しあい,その後「先進国の経済的支配への挑戦」の章で開発を進める際の多国籍企業の企業倫理の問題について話し合いました. 利益を追究するのが本質の企業というものに倫理なるものを求めるのは無理なので消費者が監視する,政府が規制する(具体的方法は不明)などの方法をとるべきだという意見と,消費者運動は時間がかかるので企業の方に働きかけをする法が効率がいいという意見がありました.最後にまとめの章でNGOはODAからの資金を受けるべきかどうかというところに議論が及びました.結局結論は出ませんでしたが,いろいろな話題について話し合えた最終回でした.

感想

 私にとって「読書会」なるものは初めての体験だったので 何が始まるのかと不安に思っていましたが,1冊の本をこんなにもおもしろく読むことができるのだとわかり,読書会というものもなかなかなものだと思いました.(ただ今回の読書会を一般的なそれと一緒にしてしまってもいいのか,という点は疑問ですが.) それにしても最初から最後まで圧倒され続けたのは議論のテンポの速さと飛躍の大きさです.1日の講義をまどろみつつ聞いた後の眠りかけの頭を必死でたたき起こしてフル稼働させなければならず大変でした.しかしそれにも関わらず次も来てしまうのは読書会を終えて帰る出町柳までの道で疲れとともに妙な満足感を感じてしまうからなのでしょうか・・

 

 

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