ミニ学習会「神戸の仮設住宅について」の報告

深川博志


 10月3日のミニ学習会は、神戸の仮設住宅についてやりました。 これをテーマに選んだのは、 9月はじめに、関西学生医療研究会(MIKS)の有志5人で、神戸市西区の西神 第7仮設住宅に行ってきたのがきっかけです。 「学生を含めた人々の関心の薄れが、何よりの問題」と受入先の団体の 責任者は言っていました。既に高齢社会に入った日本にとって、 ここでの経験をぜひとも活かしていきたいと、その人は言っていましたし、 私自身もそう思います。

 私自身分らないことが多いので、参加者にいろいろと教えてもらおうという 魂胆だったのですが、詳しい人は誰も参加しませんでした。 そのためもあってか、今一つ盛り上がらない学習会となってしまいました。 ただ、関心が薄れているのは確かだという点で一致しました。もっとも、 そもそもそれほど関心があったわけではないという意見もありました。 震災直後の「絵になる」場面がテレビを賑わしていた間はともかく、 その後具体的に動いた人は、数としては圧倒的に少ないのではないか ということでした。

 どうも、僕がやると固くなってしまうみたい。誰か「学習会の学習会」 やりませんか。

  1. 地震発生からふれあいセンター設置まで
    1995.1.17 am5:46
    兵庫県南部地震発生
    1.31
    長田地区を主な対象に、新聞記者、地元診療所所長、看護婦の3人が、 阪神高齢者・障害者支援ネットワーク(以下ネットと略す)を結成
    地震直後の避難生活に関連した犠牲から高齢者、障害者を救おう!
    4月
    仮設住宅への入居が本格化。その主な問題点は…
    1. 孤独死(40〜50才代の独り暮らしで職を失った男性が最も危険)
    2. 生活に不便
    3. コミュニティから切り離された
    4. 仮設住宅自体が、特に高齢者・障害者にとって使いにくい
      玄関と地面との間の段差が大きすぎる。仮設内の道路が舗装されず、 砂利敷(96/1に舗装)。ユニットバスの、浴槽と洗い場の段差も大きい。エアコンを はじめ、電気製品の使い方が分らない。などなど
    6.15
    ネットが「ふれあいテント」を第7仮設に設営
    9月
    兵庫県が、大規模仮設に「ふれあいセンター」を設置。ふれあいテントは撤去
    ふれあいセンターは、自治会が管理している。ボランティア団体の一つである ネットは、そこの一部を借りている。
    1996.1
    砂利をコンクリート舗装
     
  2. 西神第7仮設の現状

    1060戸のうち、現在使われているのはおよそ半分で、600人くらいが生活している。 8割が60才以上、5割が65才以上、痴呆らしき人が30人いる。

  3. 阪神高齢者・障害者支援ネットワークのやっていること
    1. ケア・生活支援関係
      1. 訪問看護、医療相談(医師、看護婦など専門資格をもつ者がやる)
      2. ふれあい訪問
        西神第7仮設を6ブロックにわけ、独居の高齢者(といっても 前述の通り、40〜50才代の独り暮らしで職を失った男性も含む)を中心に週1回ボ ランティアが訪問する。 ボランティアを固定することで、住民との信頼関係ができ、記録を残して、継 続した訪問ができるようにしている。ボランティアには、特に資格を求めてはいない。 近所の主婦が多いが、看護学生や、会社員、教師なども来ている。
      3. 自力で行なうのが困難な人のためのホームヘルプサービス (買いもの、掃除、洗濯、炊事)
      4. 生活相談 --- 再就職、住宅の再建や公営住宅への申込など
      5. 搬送サービス(カーボランティア)---通院、住宅申込の手続き、買いものなど
      6. 引越しボランティアの紹介
    2. コミュニティ・ワーク
      1. ふれあい喫茶の運営
        ふれあい喫茶は、ふれあいセンターの一角で、ネットが行なっている。 気軽に仮設内のいろいろな人と話し合える場を提供するのが目的。
      2. イベントの主催・コーディネート
        無名の歌手や落語家が来るときのコーディネートをやったり、 正月や七夕、彼岸などにイベントをやったりする。ただ、無名とはいえ、 芸能人が来るのは、大規模仮設に限られている。小規模仮設のほうは さらにさらに深刻だと、ネットの責任者は言っていた。
      3. バス旅行
  4. 今後の課題 〜公営住宅への転居にともなって
    1. 仮設のコミュニティから切り離され、また新たにコミュニティを つくらなくてはならない
    2. 環境変化に適応するまで時間がかかる
      以上2点への対応策として、たとえば神戸市内に、公営のコレクティブ・ハウス の建設が予定されている。これは、仲のいい人が6人程度一緒になって、 一つ屋根の下で暮らそうというもの。ただし、居住スペースはそれぞれ区切られて いる。食事を共同スペースでとる、などということが想定されている。 ただこうした形の住宅は、日本ではまだあまり例が無い。
    3. 10月に大規模な募集(神戸市内で12000戸)があるが、仮設 がすべて不要になりはしないだろう
      今回が最後の募集という噂がある。 しかし、県外で暮らしている人の正確な数は分らない。また、 かつて自分が住んでいた地域の公営住宅に転居したいという人が多いが、 なかなか希望どおりにはいかないため。
    4. 空き家が増え、犯罪に使われたり、放火される危険がある
    5. 仮設の近隣がいなくなり、孤立してしまう
      「空き家」「孤立化」対策として、仮設の縮小、仮設から仮設への転居を 行政が行なう

 

 

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