今日は、記念碑的な一日になりました。各種報道によると、ノーベル平和賞には、ベラルーシの人権活動家アレシ・ベリャツキー氏、ウクライナの人権団体「市民自由連合」、そして、ロシアの人権団体「メモリアル」に授与されました。授賞理由は、「戦争犯罪や人権侵害、権力の乱用を記録し続けた」ことだそうです。
「メモリアル」の活動は、第一次チェチェン戦争からずっと継続しており、グローズヌイにも事務所を置いて、人権侵害に苦しむチェチェンの人々を記録し、法的側面からサポートしてきていました。また、2009年には、所属していた人権活動家ナターリア・エステミーロワが暗殺されるなど、大きな犠牲を払ってきました。
ウクライナへの侵略が続く今、メモリアルの活動が評価されたことは、素晴らしいと思います。なお、昨年の平和賞は、ロシアの新聞社「ノーヴァヤ・ガゼータ」のドミトリー・ムラートフ編集長に与えられています。
そして、今日は、ウラジーミル・プーチン大統領の70歳の誕生日でもあります。このために、サンクトペテルブルクで、独立国家共同体(CIS)の非公式首脳会議が急きょ開かれることになったそうです。ウクライナ侵攻をきっかけに国際社会で孤立を深める中、旧ソ連圏の友人らに対面で祝ってもらうつもりのようです。
寒々しい限りです。忘れてはならないことは、2006年の今日、チェチェン戦争を長年取材してきた、「ノーヴァヤ・ガゼータ」の記者アンナ・ポリトコフスカヤが、自宅のアパートで殺害されたことです。真犯人はいまだにわかっていませんが、政権を厳しく批判して、世界中に伝えていた彼女の死は、プーチンのためのプレゼントだったのでしょうか。
ノーベル賞受賞のニュースをすなおに喜んでいいのか、わからなくなるような情勢でもあります。いま、ロシア軍はウクライナの原発を制圧し、南東部4州を併合し、核の使用さえちらつかせています。明日にも核戦争が起きるのではないかと、深刻な気持ちになります。
一方で、この平和賞のニュースが世界に伝わり、その意図が人々に伝われば、国際世論はより強く結束して、ロシアのウクライナ侵略への抗議を強めるでしょう。今、消極的にロシアの側についている国々でも、疑問は深まるはずです。それが戦争を止める力になってほしいです。
とまれ、このニュースでも幾度となく引用してきた貴重な情報源である「メモリアル」の受賞は大きなグッドニュースです。また、チェチェン人や、チェチェン人がつくる運動体にも、いつか世界から光があてられ、平和が近づく日が来ることを祈ります。
次号以降で、チェチェンで動き出した人権活動についての記事を流す予定です。(大富亮)
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