チェチェン総合情報

29 Apr 2013
チェチェンニュース#402

 前号で掲載した、ザカーエフからの声明文の修正版を、下記に掲載しました。
ご協力いただいたみなさまに感謝します。

 http://d.hatena.ne.jp/chechen/20130422/1366583998


 さて今号では、研究者の富樫耕介さんの論文をご紹介します。


■チェチェン問題とアメリカ —— ボストン・テロの背景にある問題
                   富樫耕介 / コーカサス地域研究

 ・不可解なテロと先入観

 4月15日、アメリカのボストンにて、世界中が注目する国際マラソンにおいて
発生した爆破事件は、犯人とされるアメリカ在住のチェチェン兄弟の兄が死亡
し、弟が逮捕されたことで収束に向かっている。日本でもアメリカでも、チェ
チェン問題についてはあまり知られていないので、今回の事件は「チェチェン独
立派の中の急進的なイスラーム思想を信仰する勢力が、『イスラームの敵』であ
るアメリカにおいてテロを行った」と理解されている印象を各種報道から受け
る。筆者は、このような先入観をここで覆したい。

 この問題はもっと複雑である。まず、チェチェン独立派はもはや武装勢力とし
てほとんど消滅しており、北コーカサスにおいてはその政治基盤すらない。実際
に北コーカサスで闘争をつづけているのは、独立派から枝分かれした急進的イス
ラーム勢力である。しかし、この急進的イスラーム勢力は、その能力においても
目的においても対露闘争を最優先事項としており、アメリカを直接の攻撃対象と
みなしてこなかった。そして、チェチェンとアメリカの関係は、亡命したチェ
チェン独立派指導者がアメリカの政治勢力やロビーストと協力関係にあるなど、
テロ事件が発生するまで、敵対的というよりもむしろ良好なものであったのであ
る。

 ・ツァルナエフ兄弟が物語るチェチェン問題
 ・チェチェン問題とアメリカ
 ・アメリカ社会とチェチェン人
 ・解けないパズル

 つづきを読む: http://synodos.jp/international/3642/1

富樫さんは東洋書店からチェチェンについての本も出しているので、
ぜひお買い上げください。

『コーカサス—戦争と平和の狭間にある地域 (ユーラシア・ブックレット)』
著者:富樫 耕介 出版社:東洋書店( 2012-04 ) 定価:¥ 840

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