チェチェン総合情報

26 Oct 2011
チェチェンニュース #371

 ・エステミローワ殺害事件に関する民間報告、英文で発表
 ・ダゲスタンにおける「チェチェン式掃討作戦」の現在
 ・ロシア反体制活動家、「ドライ・ハンスト」で3日早く釈放
 ・チェチェン人殺害によって傷つくトルコのイメージ



■エステミローワ殺害事件に関する民間報告、英文で発表

 国際人権連盟(FIDH)、人権センター「メモリアル」、「ノーバヤ・ガゼー
タ」紙は、人権活動家のナターリヤ・エステミーロワさんが2009年に殺害された
事件について、「エステミローワ殺害から2年:間違いを続ける捜査」と題する
報告書を英文で発表した。

 2009年7月15日に彼女が殺害されて以来、事件は最高検察庁によって捜査され
てきた。この捜査(事件番号#09500038)は、4つの可能性を検討してきた。

 1.        彼女の職業的活動に関連するもの
 2.        チェチェン行政当局の信頼低下を目的としたもの
 3.        個人的な復讐を目的としたもの
 4.        チェチェン治安当局が殺害した可能性。彼女の人権活動に対して

 初期の段階から、捜査は重要な証拠を確保していた。それは、爪の間に残って
いた生化学的遺留品で、誘拐者、殺人者と考えられるDNAが、少なくとも3人分検
出されていた。そのうち一人は女性だった。

 6ヶ月近くたった2010年1月、捜査当局は、犯行主体が反政府武装勢力のアルフ
ズール・バシャーエフらによるものであるという「証拠」があると発表した。

(と、いうようなロシア政府側の捜査に不信感を持った人権団体、新聞が、独立
した報告書をまとめているという話だと思う。訳注)

 民間報告書では、この事件に関する、入手しうる証拠を分析している。英語版
もある。

報告書をダウンロードする:
http://www.memo.ru/2011/10/19/nesten.pdf



■ダゲスタンにおける「チェチェン式掃討作戦」の現在

 9月23日から30日にかけて、チェチェンの西隣りのダゲスタン共和国、ツンチ
ンスキー地区・フツラフ村(人口340人)では、チェチェンでの掃討作戦を思わせ
るような事件が起こった。ロシアの人権団体メモリアルが報告する。

 フツラフ村への掃討作戦において、ロシア政府当局は、組織的に、かつ大規模
に法を破って、住民たちに残虐な行為をおこなって尊厳を奪った。メモリアル
は、この事件を捜査し、関係者を法によって処罰することを要求する。このため
に、下記のような証拠を、ロシア捜査委員会(Russian Investgations
Committee)に送付した。

 同村での掃討作戦は、明らかに最近の武装勢力の行動に関連している。われわ
れは、これまでの北コーカサスでの悲惨な紛争を調査してきた経験から、このよ
うな懲罰行為が、暴力をさらに増大し、ダゲスタンの状況を不安定化させるだけ
だと確信している。

***

 ツンチンスキー地区は、ダゲスタンとグルジアの国境付近の高地に位置する。
ダゲスタンの首都マハチカラからは自動車の道が悪いので10時間ほどかかる。
(以下、地理は略:訳注)

***

 ツンチンスキー地区の治安悪化は、今に始まった話ではない。ここの深い森林
は武装勢力が隠れるのに適しており、警察への襲撃や、道路を通る軍部隊への待
ち伏せ攻撃も起こっている。

 ここに記すのは、ここ半年間に起こった武力衝突の例である。

 4月11日、内務省軍が非合法武装勢力と交戦し、5人の兵士が死亡、7人が負傷
する事件があった。

 翌日、治安部隊の兵士が、自動車でツンチンスキー地区での作戦から戻る際に
攻撃を受けた。兵士2人が死亡し、3人が負傷した。

(などなど。詳しくは原文参照:訳注)

***

 10月初めに、いくつかの人権団体が、フツラフ村で起こった掃討作戦の情報を
受け取り、メモリアルと、「ダゲスタンの母親たち」のメンバーが現地調査を行
い、当局者や、村人たちの話を聞いた。土地の様子を写した写真はこちら:

http://www.memo.ru/2011/10/14/1410111.html

 9月23日、ウラル型、ウァズ型の自動車に乗った治安部隊が村にやってきた。
詳しい所属はわからないが、村人たちは、内務省軍とFSS(連邦セキュリティ
サービス)国境警備部隊だと考えている。

 かなりの量の補給品が、村の外に配置された。治安部隊は村を封鎖し、村につ
ながる道に拠点を設営した。

 30台ほどのウァズ型自動車が村に入ってきて、100人以上の、迷彩服を着て、
マスクをした兵士達が運ばれてきた。彼らは家々に立ち入って捜索を始めた。彼
らが話す言葉は、ロシア語とアヴァール語だった。

 兵士たちは、傍若無人に家々の中を捜索しては、次の家に移った。家に人がい
てもいなくても押し入った。村人らは自分から身分証明書を見せたが、この作戦
の目的な何も教えられなかった。兵士たちはきわめて横暴に振る舞い、村人から
金を取り、それだけでなく、医薬品や、電球、薪などなど、野営で使えそうな物
は何でも取って行った。(かなりの高地なので、補給状況が悪いのである)

 冬のためにとっておかれた備蓄品も奪った。コンポートの入った瓶など、家の
住人の目の前で飲み干された。(兵士たちは明らかに飢えている。彼らは軍か
ら十分な食料を与えられず、掃討作戦で現地調達するように命じられているのだ
ろう 訳注)(いくつか略奪の描写が続いて)

 この日、治安部隊は村人を逮捕し始めた。男性も女性も。そして村の外に連れ
出した。最初に逮捕されたのは、家族が武装勢力に参加していたり、関係を持っ
ていると疑われた村人だった。

 被逮捕者たちは、最初に検査場に連れていかれ、何人かはそこで尋問や虐待が
行われた。通過できた者たちは、フプリンスクにある内務省庁舎に連行された。
ここでも尋問があり、何も言わない者は、ビニール袋を頭からかぶせられた。

続きは原文をご参照ください:
http://www.memo.ru/eng/news/2011/10/19/1910111.html



■ロシア反体制活動家、「ドライ・ハンスト」で3日早く釈放


 ロシアの反体制活動家、セルゲイ・ウダルツォフは、野党運動「左翼戦線」の
コーディネーターで、モスクワで行われた10月12日の「Wrathの日」の抗議行
動の組織者の一人。当日逮捕され、翌 13日に10日間の行政勾留命令が出ていた
が、拘置所でのハンストで健康状態が悪化、 20 日に釈放された。

 このデモのスローガンは、「指導者をすげかえる時だ! 不正選挙はやめ
ろ!」など。
 
 ウダルツォフは、逮捕を不服として「ドライ・ハンガーストライキ」を始めて
いた。食べないだけでなく、飲み物も摂らないというやりかただ。

 案の定、健康への影響は大きく、モスクワの病院に担ぎ込まれた。

 ラジオ・リバティーの取材に対して、ウダルツォフは「法廷はひどいところ
だったね。僕が最終弁論をする機会もなかったんだ。逮捕されたときのビデオ映
像を上映してくれって言ったんだけど、判事は拒否するし。裁判所の勾留許可
は、ぜんぶ警察の証言どおりに出たんだ。警察は僕が警戒線を攻撃しようとして
いたって言うんだけど、僕は単に逃げようとしていただけさ」と答えた。

 健康状態については、「調子は安定してきた」という。また、ハンストによっ
て勾留期限より3日早く釈放を勝ち取れたことに驚きを隠さなかった。

 彼が逮捕されたのは、Wrathの日の抗議行動の際、大統領官邸までデモ行進を
して、要求書を渡そうとしたため。モスクワ市当局は集会の許可は出していた
が、行進は許可していないとして、数人の活動家を逮捕していた。

http://www.rferl.org/content/russia_opposition_activist_freed_after_hunger_strike/24365693.html

http://www.rferl.org/content/russia_activist_announces_hunger_strike_jailing/24359736.html


■チェチェン人殺害によって傷つくトルコのイメージ

 前号で扱った、トルコでのチェチェン難民について、米国の保守派シンクタ
ンクに掲載された論考。要するにトルコはチェチェン難民をちゃんと暗殺攻撃か
ら守れよということを言わんとしているみたいです。

***

 トルコのメディアは、9月16日にイスタンブールで殺害されたチェチェン人の
ベルグ・ハジ・ムサーエフは、チェチェン・コーカサスの反政府武装勢力指導者
ドック・ウマーロフの側近だと報じた。これによるとムサーエフは、チェチェン
で負傷し、医療を受けるためにトルコに来ていた。

 イスタンブールでチェチェン人が殺害されるのはこれが初めてではない。ここ
4年間、少なくとも6人のチェチェン人がこの都市で殺害されている。これらの
殺人には共通する特徴がある。まず、どの被害者も、チェチェン抵抗勢力の参加
者だった。そして、犯行にはいずれもロシア製のグローザ3型拳銃が使用されて
いること。これはロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の制式武器である。

つづきを読む: http://d.hatena.ne.jp/chechen/20111022/1319249025



 近日中のイベント情報をお届けします。ぜひご参加ください。


● 10/29 「”核”のない世界へ 広島・セミパラチンスクから踏み出す一歩」 
      富桜祭チャリティイベント(三島,日本大学国際関係学部) 
   http://service.city.mishima.shizuoka.jp/mportal/blog/blog.asp?id=99&fg=0
  

● 10/22-11/6 「3.11メルトダウン 大津波と核汚染の現場から」
      日本ビジュアルジャーナリスト協会写真展
               (明大前,キッド・アイラック・ホール) 
   http://www.jvja.net/htm/311meltdown.htm


● 11/3 「フリーランス文化祭2011」(新宿,芸能花伝舎) 
   http://d.hatena.ne.jp/freelance_bunkasai/20110921


● 11/11 「たそがれの経産省 キャンドル包囲「人間の鎖」アクション」
                          (霞ヶ関, 経産省前) 
   http://2011shinsai.info/node/947


● 11/11 「もっと知りたい台湾-現地在住作家の語る台湾事情」
                          (市ヶ谷, 法政大学 ) 
   http://www.hoseichiri.com/2011/2011reikai.pdf


● 11/19 「3.11 今こそMinamata Now!」(池上,池上實相寺) 
    http://www.cocopb.com/MinamataNow/


● 12/9 「李政美コンサートin大田Vol.4 -ありがとういのち-」
                        (下丸子,大田区民プラザ) 
    http://leejeongmi.com/2011leejeongmi_c.jpg





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