チェチェン総合情報

12 Jun 2009
チェチェンニュース No.295
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■『踊れ、グローズヌイ!』のこと、排外主義のこと

                              (大富亮)

 今日は良いニュースと悪いニュースがあるけれど、混ざりあっていて、すっ
かり複雑な味になってしまったミキサーの中のジュースのようだ。

●蕨市での排外主義的デモ

 この4月、「在日特権を許さない市民の会」という団体が、埼玉の蕨市でデ
モをした。ご存知の方も多いと思うのだが、内容は、両親がフィリピンに強制
的に帰国させられ、日本でひとり生活することになったカルデロン・ノリコさ
んの通う中学校や自宅付近を、「一家を追放せよ」などというスローガンを叫
びながら歩き回ったのだった。

 そして彼らは明日13日、今度は京都で外国人の参政権に反対するデモをする
のだという。確かにカルデロンさん一家が日本に入国したいきさつには法的に
問題があったようではある。しかし不法入国のケースであっても、一家が求め
たような特別在留許可が出たことは過去にもある。

 そういう事情はおいても、このデモはひどすぎる内容だった。「国民大行
進」という不気味な名のもとに、中学生の子どもを大人たちが恫喝し、「帰
れ」と叫んだのだ。彼女が生まれたのは、この日本だというのに。

 「在特会」はこういう活動を「人道のために」しているのだという。つま
り、彼らのような不法入国者に正式なビザを与えると、同じような人々があと
につづいて日本にやってくる。そうすると、ノリコさんのような可哀想な子ど
もが何千人も生まれてしまうというのだ。

 おもしろいことを言う人たちだと思う。世界全体の経済が、第三世界から
「先進国」に人々を追い込んでいるのを無視して、入ってきた人々は恫喝して
追い出そうとする。その理由が、当の追い出される人々のための「人道」だと
いうのだから。

 「私は排外主義者です」と言う人はまずいない。むしろ「人道主義の見地か
ら」こんなひどいことをするのが人間なんだということを、学ばせてもらった
ような気さえする。

 明日は京都で「在特会」などがデモをする。しかし、その場に立ち会い、排
外主義に反対し、意思表示をしようとする人たちもいる。本当に勇気のある、
心の熱い人たちだと思う。できることならその場に行きたい!

    6/13 京都:外国人排斥を許さない6・13緊急行動
    http://613action.blog85.fc2.com/blog-entry-6.html


●「踊れ、グローズヌイ!」のこと

 話は少し変わるが、チェチェンの少年少女舞踊団の活動を描いた『踊れ、グ
ローズヌイ!』という映画がある。何度かチェチェンニュースでも紹介し、ア
ムネスティ・インターナショナルも日本で盛んに上映をしたので、一度は見た
人もいるかもしれない。遠くて実感のわかない、チェチェンの人々の実際の姿
を感じられる、傑作ドキュメンタリーだ。

 この作品が、とうとうDVD化された。しかも、劇中で歌われていたチェチェ
ン語の歌の字幕が新たに追加され、完成度も高まっている。この文章も、その
歌を聞きながら書いている。チェチェンという祖国が、どれだけ私を一人前の
者にしてくれたか、それを感謝しようという渋い歌と、愛する女への思いがど
れだけ深いか、旅立つ自分を忘れないでくれと、せつせつと訴える恋の歌だ。

 アコーディオンを抱えた男が朗朗と歌う。そして、暗いトンネルのような舞
台の袖から、白い装束の少女たちが、一人また一人、象牙の舞台へと進み出て
いく。緊張感の高まるその場面に、恋の歌がクライマックスを迎えるーー

 この場面を見ていると、どうしてか、何度聞いても涙が湧いてくる。ぜひ多
くの人に、この映画を見てほしい。できれば学校や図書館で1本買って、子ど
もたちに見てもらいたいと思う。

   予告編  http://tokyocinema.net/grozny/uta-02YH.wmv

 歌はメロディーだけでなく、歌詞がわかれば何倍も美しい。

 このDVDのために、歌を日本語に訳してくれたのが、*というチェチェンの青
年だ。彼もまた、第三世界から日本へと押し出されてきた一人だ。望んで日本
に来たわけではないのに、それだけの日本語を身につけ、「日本人が好きだ」
と言ってくれる。なぜかというと、公平で、約束を守る人たちだから、と。

 私は恥ずかしくなる。そうではないことを知っているからだ。

 彼の生活は苦しい。外国人労働者として、難民として、日本に来る人々には
生きる権利がない。場合によっては刑務所よりひどい設備の法務省の収容所に
入れられ、茶色く染まった飲み水をあてがわれる。私たちは多くのものを彼ら
から受け取りながら、邪魔になりしだい、追い出すのだ。

 「彼ら」と「私たち」には、どんな違いがあるのだろう。どうして苦しい紛
争のなかに置き去りにされる人々がいたり、そこから来た人々が、日本でまた
苦しまなければならないのだろうか。ここには、彼岸と此岸を隔てる河がな
い。グラデーションのように、やがて私たちの足元を染めていく。

 今回紹介する集まりはどれも、そんな境目のない世界を見つめ、よりよいも
のに変えるために必要なものだという気がする。ぜひお近くのイベントにご参
加ください。

  『踊れ、グローズヌイ』の購入について:
   http://tokyocinema.net/grozny_dvd.htm


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■イベント情報

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  6/13 渋谷:第10回 表現者はリレーする いま、語り描き写し歌い舞うとき〜
         とどけメッセージ キッチンの窓から ガレキの戦場から〜

    たとえ職業としての表現手段を持たなくても、
    子育ても毎日の食事作りや家事も「私は私らしく生きたい」
    という思いを伝えて日々を生きている。平和を願う人々が声をあげる会。
    難民サポーター・周香織も発言。

    http://shukaori.exblog.jp/10353973/


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  6/13 京都:外国人排斥を許さない6・13緊急行動

    4月に埼玉県蕨で、不法滞在を理由に両親が強制送還された
    中学生のカルデロン・ノリコさんの自宅・学校に押しかけるという、
    卑劣なデモがあった。
    その「在特会」などが、京都で外国人参政権反対のデモをしようとしている。
    排外主義に対抗するための緊急行動に、京都周辺の方はぜひご参加を。

    http://613action.blog85.fc2.com/blog-entry-6.html

    賛同署名も上記で受付中。


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  6/13 蒲田:『冬の兵士』上映会

    かつてヴェトナム戦争時に、
    帰還兵たちが戦場の現実をアメリカ国民に訴えた伝説の集会「冬の兵士」が、
    イラクとアフガンの帰還兵たちによって復活した。
    極端な人種差別や交戦ルールの無視など、
    いままさに起きている戦場と軍隊の現実をあからさまに証言した、
    50時間の記録を80分のドキュメンタリー映画に。

    http://d.hatena.ne.jp/chechen/20090521


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  6/17-22 鎌倉:『夢を織り込む ティナラク織II』鎌倉展示会

    ミンダナオ島に暮らすティボリ民族の女性たちが伝えてきた芭蕉布。
    昔ながらの方法で織り上げる、世界でも珍しい織物の数々。
    織手たちの生活と伝統を守る活動を、フェアトレードという形で広げたい。

    http://d.hatena.ne.jp/chechen/20090612/1244773446


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  7/4 御茶ノ水:「終焉に向かう原子力」(第8回)
      反原発・反再処理工場 7.4講演と映画の集い

    ビデオ「なぜ警告を続けるのか」と、映画「六ヶ所村ラプソディー」上映。
    京大原子炉実験所の小出裕章さんの講演「六ヶ所が映す不公正な世界」も。
    地球温暖化によって、ふたたび原発政策が勢いづこうとしている。

    http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20090427


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  7/5 四ツ谷:2009年世界難民の日 東京集会

    2008年、1,599人の難民申請者が日本に庇護を求めたが、
    難民認定された人はわずか57名。「難民鎖国」は続いている。
   「存在しない人」としてこの日本でひっそりと暮らす彼らは、
    この不況の中、苦しい生活を強いられている。
    そんな彼らの声を少しでも広め、一緒に考えていきたい。

    http://www.labornetjp.org/labornet/EventItem/1244593925882staff01


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  未定:ブルース・ギャグノン講演会を成功させよう

    元米空軍パイロット、核と宇宙戦争に徹底して反対する
    活動家の来日のためにカンパを! 
    郵便振替00190-0-608393 ピース・チェーン・リアクション まで。

    http://www.anatakara.com/petition/index2.html


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■映画・写真展・連続講座

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  5/28-6/30 サハリン:新高麗新聞創刊60周年記念 片山通夫写真展

    在留韓国人・朝鮮人を追って60年ーー
    サハリン州唯一のハングル紙の日本語電子版を手がける
    片山通夫氏の写真展。日本での写真展も今後予定。

    http://www.609studio.com/2009sakhalinphotoEx.htm


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  『沈黙を破る』

    考えるのをやめたとき、僕は怪物になったーー
    2002年、イスラエル軍がヨルダン川西岸に侵攻。
    その頃、「祖国への裏切り」と非難されながらも、
    みずからの加害行為を告白する、若いイスラエル兵士たちがいた。
    土井敏邦氏が13年間にわたって撮りつづけたシリーズ第四作。

    http://www.cine.co.jp/chinmoku/


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  MediR講座
 『制作者との対話〜TVドキュメンタリーを通して社会を考える』
  5/10-8/9 高田馬場

    優れたドキュメンター番組を見、
    制作者との討論を通してメディアリテラシーの養成をめざす。
    6月21日には、スベトラーナ・アレクシエービッチに関する作品、
   「ロシア 小さき人々の記録」(2000年)についての講座あり。
    単独受講可能。

    http://d.hatena.ne.jp/chechen/20090417


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  『チェチェンへ アレクサンドラの旅』

    孫へのまなざし 平和への祈り ロシアの見たチェチェン

    http://www.chechen.jp/


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 『ビリン・闘いの村』

    パレスチナ暫定自治区、ヨルダン川西岸のビリン村。
    若者たちは非暴力の闘いに立ち上がった。

    http://www.hamsafilms.com/bilin/

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  発行部数:1444部 発行人:大富亮

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