チェチェン総合情報

23 Jan 2009 13:11:08 +0900
チェチェンニュース No.273

報道が少ないので、ご存知ない方も多いと思うのですが、
モスクワでまた暗殺事件がありました。これについての情報と、
チェチェン関係者の意見をまとめた声明文を発行しますので、
ぜひ賛同をお願いします。宛先はロシア政府で、大使館あてに届けます。

なおこの事件は、日経新聞では次のようにとりあげられていました。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090120AT2M2000E20012009.html

このあとのメールで、関連の情報をまとめた資料編を発行します。
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 スタニスラフ・マルケーロフ弁護士と、
 アナスタシア・バブローワ記者殺害についての緊急声明

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 1月19日の午後2時、チェチェン戦争の被害者救済にあたってきたスタニスラ
フ・マルケーロフ弁護士と、若いジャーナリストのアナスタシア・バブローワ
記者が、モスクワの路上で殺害されました。

 日本でチェチェンの平和と人権の確立を求めてきた私たちは、二人の犠牲者
に心からの哀悼の意を表するとともに、このニュースの持つ意味を、一人でも
多くの方に知っていただきたいと考えます。

 そもそも今回の暗殺劇の発端となった事件は、第二次チェチェン戦争が激戦
だった2000年3月26日、チェチェンの小さな村、タンギ・チュから始まりまし
た。この近くに駐留していたロシア陸軍の第160戦車部隊のブダーノフ連隊長
(大佐)が、飲酒の上、夜遅く部下とともに装甲車で村に入り、以前から目を
つけていたエリザ・クンガーエワさんという18歳の女性を誘拐し、自分の宿舎
で強姦、絞殺しました。

 この事件により、ブダーノフは2001年に逮捕され、紆余曲折のすえ、ようや
く2003年に10年の刑を宣告されました。しかし、刑には逮捕から判決までの拘
置期間も含められたので、刑期は2011年までとなりました。

 同様の人権侵害を繰り返してきたロシア軍は、ブダーノフを徹底的にかばい
ましたが、それに対してエリザさんの遺族が粘り強く法廷闘争を続けたために
有罪判決が下り、同様の人権侵害が裁かれる可能性が切り開かれました。そし
てこの法廷で、遺族の代理人を務めていたのが、マルケーロフ弁護士だったの
です。(同氏は、2006年に暗殺されたジャーナリストのアンナ・ポリトコフス
カヤさんの代理人でもありました)

 しかし、エリザさんの遺族は、繰り返し脅迫を受けたため、海外への亡命を
余儀なくされました(ブダーノフ本人からも脅迫されたといいます)。さら
に、2008年12月24日にブダーノフの恩赦が発表され、実際に今年の1月15日に
釈放されてしまいました。

 マルケーロフ弁護士はこれに強い憤りを覚え、モスクワ市内で抗議の記者会
見を開いたのですが、そのわずか数分後に、路上に出たところを何者かに銃殺
されました。彼をかばったために同時に撃たれたバブローワさんは、モスクワ
大学を卒業したばかりの若者で、ポリトコフスカヤさんと同じノーヴァヤ・ガ
ゼータ紙で契約記者として働いていました。

 いま、この事件を知った人々が、モスクワでも、チェチェンでも、それぞれ
に抗議の集会やデモを行っています。

 歯に衣を着せずにプーチン政権を批判したジャーナリストのアンナ・ポリト
コフスカヤさん、ロシア政府の内部告発を続けた元連邦保安局職員のアレクサ
ンドル・リトビネンコさん、そして今回のマルケーロフ弁護士と、次々に暗殺
され、言論を封じられていく人々の共通点は、みなチェチェン問題に関わり、
プーチン・メドベージェフ政権に対して批判的な人であることです。

 そしてこれらの事件は、つねに十分な捜査がされず、うやむやにされたり、
あるいはチェチェン人の容疑者が逮捕され、一時的に脚光を浴びては、結局釈
放されるといった、不可解な経緯をたどっています。

 今回の事件には、世界の他の地域が抱える多くの問題に通じ、根本的に批判
しなければならないものが隠れていると私たちは考えます。それは、国の政策
に反対する人々を殺害し、あるいは暴力で威嚇することで、言論の自由を否定
し、真実の追求をも諦めさせようとする悪質な意図が存在することです。

 暴力に溢れたこの世界のあり方を変えたいと願う私たち市民には、事実を知
る権利と、それを社会へ伝える責任があります。そしてそうした活動を通じて
こそ、戦争や暴力を終わらせることができるのだと、私たちは信じています。

 今回のような暗殺は、直接に事件に関わった人々を殺すだけでなく、真実を
求め、正義と平和を願う私たちみんなの心を打ち砕こうとするものであり、絶
対に許すことはできません。

 私たちは次の事柄をロシア政府に対して要求します。

1、ロシア政府は、マルケーロフ弁護士およびバブローワ記者の殺害犯と、そ
れを指示した人間を必ず逮捕し、公開された公正な裁判を通して真相を明らか
にすること。アンナ・ポリトコフスカヤおよびアレクサンドル・リトビネンコ
の暗殺事件についても、同様に、公正な手続きを行うこと

1、ロシア政府は、ブダーノフ大佐の釈放を取り消し、判決どおりの刑期を、
他の囚人と同じ環境で終えさせること

1、ロシア政府は、これらの事件の根にある対チェチェン政策を根本的に見直
し、チェチェンの人々の政治的権利を含む基本的人権を保証し、チェチェン領
内での国際機関、報道機関、NGOの自由な活動を保証すること。

●緊急声明への賛同のお願い

 このような時に、もし私たちが沈黙を続ければ、事件を起こした人々の意図
は達成されたことになります。また、メディアが萎縮して報道をためらうな
ら、戦争と口封じが交互になされるようになり、私たちは今以上にそのような
体制にコントロールされるでしょう。

 そんな世界は、犠牲になった人々がもっとも望まないものだと思います。そ
のような未来にしないためにも、どうかこの事件に注目してくださるよう、皆
さまにお願いいたします。ぜひこの声明に賛同者として名前を連ねて下さい。
下記のフォームに記入し、メールでご返送ください。

2009年1月23日 
呼びかけ  チェチェン連絡会議

賛同人

 青山 正  (市民平和基金)
 伊藤 憲一 (日本国際フォーラム)
 大富 亮  (チェチェンニュース)
 岡田 一男 (チェチェンの子ども日本委員会)
 村山 敦子


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返送先メールアドレス: clc@chechennews.org  または ootomi@mist.ocn.ne.jp

このリリースについての連絡先: チェチェン連絡会議
clc@chechennews.org  または ootomi@mist.ocn.ne.jp
電話の方は、電話番号を上記アドレスにメールでお送りください。
こちらから折り返しおかけします。

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